6月の日銀短観:日本株式会社の5つの基本的なトレンドを確認
- 6月日銀短観では利益予想、売上高予想ともに、さらなる下方修正が行われたが、これは企業経営者が極端に先回りした業績予想を出しているためであると筆者は考えている。特に、取引所に上場している大企業の経常利益の2018年度計画は前年度比-6.1%である(2017年度は+17.3%)。背景にあるのは売上高成長見通しの急激な悪化で、2018年度計画はわずか+1.9%を見込んでいる(2017年度は+5.8%)。これは、極めて控え目な予想であり、向こう数四半期に売上高成長率の上振れが明らかになれば、利益の上方修正が相次ぐことになろう。いずれにしろ、日本経済も世界経済もそれほど急激に悪化しているわけではない。売上高が会社計画を1%上回ると、利益は約8%押し上げられる点に留意したい。
- 企業の想定為替レートも警戒感を裏付けている。大手製造業は2018年度の平均レートを107.3円/ドルと想定しているが、これは3カ月前の109.7円よりも保守的である。ここでも、円相場が想定レートより1円円安になると、利益は1%近く押し上げられる点に注目したい。
- 設備投資が需要の牽引役になってきている。設備投資計画は大幅に上方修正された。設備投資(含む土地投資額)の2018年度計画(全産業)は前年度比+7.9%と、3カ月前の-0.7%から大幅に改善した。重要なのは、日本に新たに生まれた投資意欲を牽引しているのは土地ではなく生産的資本、ソフトウェア、R&D(研究開発)への投資である点だ。実際、2018年度の土地投資計画額は前年度比-30.6%(2017年度は-3.3%)となっている。これは将来の生産性向上、ならびに資本財サプライヤの売上高の伸びにとって歓迎すべき傾向である。
- 全般的に業況判断は安定しているようだが、2業種が悪化を示した点には注目したい。製造業では、自動車の総合業況判断DIは 22から15へと大幅に悪化し、米国主導の保護主義が国内自動車メーカーに与える打撃を早々に警戒していることが明らかとなった。さらに危惧されるのは、小売業のDIが11からゼロに低下したことである。対個人サービス業のDIが 27から37に急激に改善した事実は、個人消費の伸びが依然として堅調に加速していることを示しているが、この個人支出の継続的な拡大の裏で従来型の小売店舗は置き去りにされている。従って、個人消費の本当の強さを評価するのは難しいが、国内消費者サービス業界のM&Aや統合の動きが一層激しくなる可能性は高いだろう。
- 最後に、物価とインフレに関するデータは、目下、日本の需給均衡状態に何ら変化がないことを示しており、目立ったインフレ圧力はないとみられる。敢えて言えば、企業の新たな設備投資意欲と小売チャネル破壊の動きが相まって、日本人の購買力は今後も上昇を続けると思われる。
結局、向こう6カ月は企業利益の上方修正サイクルが続くという見方を当社は維持する。当社は2018年度増益率を約12%と予想している。日銀短観は非常に控え目な会社計画を明らかにしており、当社のポジティブな業績見通しを後押しする内容である。
2018年7月2日 記
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