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『企業統治指針』(コーポレートガバナンス・コード)とは企業に持続的な価値向上を促すための行動指針です。投資家向けの行動指針である「責任ある機関投資家の諸原則」(スチュワードシップ・コード)との両輪で、日本企業の競争力を強化するために金融庁と東京証券取引所が2015年6月に導入しました。今回東京証券取引所は初めてとなる『企業統治指針』の改定版を公表しており、企業への影響などが注目されます。

 

【ポイント1】東証は『企業統治指針』の改定版を公表

持ち合い株の削減や取締役会の多様化などを促す

 東京証券取引所は6月1日、上場企業に適用する『企業統治指針』の改定版を公表しました。今回の改定では、資本コスト(企業が調達した資本全体にかかるコスト)への意識を企業が強く持つことや、お互いの株式を持ち合う政策保有株の削減を促したことが注目されます。また経営トップの選任や解任の手続きに透明性を求めたり、取締役会の多様化に向けて女性や外国人の活用などについて明記しました。

 

【ポイント2】政策保有株比率の引き下げは資本効率の改善に寄与

役員の多様化により企業を活性化

 企業の政策保有株比率は低下してきていますが、改定で「縮減に関する方針・考え方」などを開示するように求め、一段の削減を促しました。

 政策保有株が問題になるのは、健全なガバナンスを妨げたり、資本効率の悪化につながるためです。実際、政策株保有比率が高い企業は低い企業に比べて、ROE(株主資本利益率)が低く、株価も相対的に上昇率が下回る傾向があります。

 取締役の構成については多種多様な人材の起用は企業の活性化につながるとの観点から、改定で外国人や女性の起用を企業に促しました。役員に占める女性の割合が、20~30%程度の欧米企業に比べ、国内企業は現状は1ケタ%にとどまっています。

 

【今後の展開】『企業統治指針』への取り組みによる資本効率の改善に期待

 欧米に比べて遅れていた国内企業の資本効率は、2018年3月期に上場企業のROEが初めて10%を上回り、企業のこれまでの取り組みが一定の成果として現れ始めています。資本効率の改善に踏み込んだ今回の『企業統治指針』への取り組みにより、企業の資本効率の改善や活性化が一段と進むことが期待されます。