ボーナスで投資デビューを考える人にあえて「注意」!と言ってみよう
この季節になると「ボーナス投資術」のようなコラムが雑誌やネットで踊ります。トウシルも例外ではありません。しかし、あえて「ボーナスで投資デビューは要注意」ということを本連載では書いてみたいと思います。というのも、「ボーナスでまとまったお金が手に入ったので、投資をしてみようか」という甘い考えは、市場のカモにされる心配が大きいからです。
「なんとなく投資」をするマインドを卒業してもらいたいという本連載のねらいとしても、いくつか注意喚起をしてみたいと思います。
ボーナスで投資デビューがなぜ危ういか
ボーナスで投資デビューすることの危うさはおおむね3つあるように思います。
1.ボーナス入金のタイミングは投資を行う好機であるとする理由は何もない
第1の理由は、そもそもボーナス時期が投資を行う好機であるとは限らない、ということです。7~8月ないし、12~1月にボーナスの入金をもって投資デビューをするとして、その時期のマーケットがあなたの投資期待に応えられる保証は何もありません。
短期的な下落を乗り越えて中長期的に上昇を待てるなら別ですが、投資デビューした人は25%のマイナスが短期的に生じたとき、おそらく回復を待てないと思います。
正直なところ、デビューのタイミングはいつでもいいのですが「ボーナスの時こそ投資デビュー」というのはタイミングが優れているという意味ではないわけです。
2.そもそもまとまった高額入金を投資デビューの理由とする必要がない
ボーナス投資デビューのもう一つの注意点は「いきなり高額投資」になってしまうことです。毎月、つみたてNISAで給与の一部を振り向けた投資デビューの場合、月額数万円程度に収まります。iDeCoで投資デビューの場合も限度額の関係で月何万円も積み上げられません。しかしボーナス投資デビューの場合、「10万円からスタート」とか「30万円入れてみよう」のようにケタが大きくなります。そもそも投資デビューに金額要件はありません。投資信託であれば100円で国際分散投資も可能ですし、100円なら素人の判断ミスで大失敗してもまったく問題ない損失額になります。
しかし30万円を単一銘柄に振り向けて、大幅下落の対象となった場合、1カ月で9万円(30%下落の場合)の含み損になります。初心者ほど、自分の銘柄選定基準を高く評価しますが、実際にはそんなことはありません。裏目に出たときはより厳しい結果になってしまいます。
3.ボーナス入金とあなたの投資知識・経験にも関係はない
「ボーナスで投資デビュー」に価値があるとしたら、あなたの投資意欲を刺激する、という一点にあります。しかし、あなたの投資知識や投資経験が十分であるかにはまったく関係がありません。あなたがすでに何年か投資関連書籍を読みあさって、いつでも投資デビューできる段階であればこれは「まずは経験」とGOサインを押してもいいのですが、あなたがただボーナス支給時期であるから投資デビューというならやはりオススメできません。知識が追いついていないのにあわてて投資デビューしたがる人は、たいてい目の前の相場に踊らされています。これは要注意です。
投資については実経験によって得られる学びや気づきも多いので、デビューはより早く設定したいのですが、知識不足である人のデビューが歓迎されるわけではありません。
それでもあえて「ボーナス投資」を提案するならこうしてみてはいかが
といっても、ボーナス投資が悪いばかりではありません。当人がやる気を出して証券口座にお金を振り込むということは、デビューにおいて重要なステップであるからです。ハードルを乗り越えるきっかけにボーナスが力となるのであれば、下記のようなポイントを注意のうえ、「ボーナス投資デビュー」としてみてはいかがでしょうか。
条件1:10万円以下で勝負をスタートする
金額を高額にしすぎるのが危ういのであれば、金額を一定程度に抑えることが投資デビューに向いていることになります。あまり高額での投資デビューではなく少額でのデビューを心がけます。いっそ数千円から数万円でもかまいません。
条件2:個別株1社か2社を選び、残額は投資信託かETFとする
投資デビューとしては個別株に目が向きますが、10万円の範囲で買える1~2社にしておき、残額で国内外に分散投資される投資信託やETF(上場投資信託)も同時に買ってみてください。値動きの違いを理解することになり、投資経験に厚みが出てきます。
条件3:できれば1回で買わず、もう一度か二度買う予算を残しておく
一度だけ注文をしてただ漫然と株価の上下動を眺めているだけ、というのはあまり面白くないものです。特に値下がり局面では面白さどころかがっかりしてしまいます。2回、あるいは3回に分けて注文をしてみるのも経験上は有意義です。できれば下がっているときに2回目の注文をしてみてください。
この条件、いってみれば、ボーナス投資デビューが好適とは限らない理由を逆手にとって「ボーナスであえてデビューするならこういうスタイルが考えられる」と切り返しているアイデアになります。
そろそろボーナス額がはっきりしてきて、入金を待つタイミングが近づいてきました。楽しみな人も多いと思います。投資デビューの典型としては「50万円で一勝負」のようなパターンかもしれませんが、あえて違った形で投資デビューしてみてください。
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