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イタリアでは、3月の総選挙以降、ポピュリズム政党・五つ星運動と極右政党・同盟による連立交渉に時間を要し、6月上旬にようやく政権が発足しました。新政権は、反移民や反欧州連合(EU)に加えて、拡張的な財政政策を掲げており、全ての政策が実行される場合には、ユーロ圏の財政ルールの範囲を超えた財政赤字となると考えられます。今後、予算成立に向けたEUとの交渉は難航すると予想され、その行方が注目されます。
【ポイント1】『イタリア新政権』の財政政策は拡張的
GDPの6%程度に相当する1,000億ユーロ以上の財政負担が予想される
イタリアでは、2017年の財政収支は対GDP比▲2.3%と見込まれています。ユーロ圏では財政赤字を同▲3%以下とすることが義務付けられており、イタリアは現状この範囲内に収まっています。しかし新政権は、拡張的な財政政策を掲げており、全ての政策を実行すると1,000億ユーロ以上の財政負担がかかると試算されます。これはGDPの6%程度に相当し、今後イタリアの財政は大幅に悪化することが懸念されます。
【ポイント2】予算成立には、EUとの交渉が必要
新政権は、反移民や反EUなどを掲げている
『イタリア新政権』は、先日も移民の入国を拒否したように、移民受け入れに対して強硬な姿勢を見せているほか、反EU的な姿勢を示しています。
こうした中、ユーロ圏のルールを超えた財政悪化が必至である2019年度の予算を成立させるためには、イタリアはEUとの交渉を行う必要があり、今年夏から秋にかけてこの交渉が本格化すると見込まれます。
【今後の展開】EUとの間のみならず、政権内でも交渉が難航すると懸念される
イタリアとEUとの議論を経て、相互が歩み寄る場合には、『イタリア新政権』の財政政策は、より財政負担を軽くする方向へと修正され、EU側は移民対応や財政ルールの柔軟化などを示すことも考えられます。
一方、EUとの議論を経てイタリアが財政政策を修正するに当たり、政権内で意見が対立したり、政権が分裂する可能性もあります。この場合、ようやく成立した新政権が崩壊し、再選挙となることも考えられます。さらに、新政権がEUに対して強硬な姿勢を続けて、EUとの非協力的な関係が強まる場合には、金融市場での不安が高まり、イタリアなど南欧諸国の債券利回りが上昇することや、通貨ユーロが一段と下落する懸念があります。
新政権樹立に至ったものの、移民政策や財政政策などにおいて、五つ星運動と同盟間では主張に隔たりがあるのが実情です。このため、予算の交渉過程において、イタリアとEU間のみならず、政権内でも交渉が難航することが予想され、その行方には今後とも注目が集まりそうです。
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