iDeCoにはiDeCoに向いた投資方法がある
iDeCoの投資術について今回もお話をしてみたいと思います。というのも、iDeCoを利用する人の何割かは投資経験が浅い初心者であろうと考えられるからです。そしてiDeCoは通常の投資術とはちょっと異なる戦略を要します。
iDeCoは、投資経験者にとってはいくつかの制限があります。たとえば
- 入金時期を選べない
→月に一度、銀行口座引き落としの場合で毎月26日に限定 - 入金金額を自由に選べない
→数万円程度の拠出限度額の範囲内に限られる - 投資信託しか売買できない
→基準価額は一日一度しか変わらないため - タイミングをねらった売買ができない
→銘柄選択はできない
というルールがあります。これは投資経験者ほどもどかしいかもしれません。
しかし、投資経験や資産形成の経験がゼロだったりこれから学ぼう、という人にとっては、iDeCoのように自動積み立てを続けるしくみのほうが確実であったりします。たとえば、
- 自動引き落としで毎月定額を積み立てる
→市場の騰落にかかわらず継続できる - 限度額が数万円程度である
→無理のない金額で続けられる枠である - 自動的に指定日に新規購入される
→売買日やタイミングを自分で決定しなくてもいい - 60歳まで中途解約はできない
→解約の誘惑から免れる
という特徴を考えてみると、iDeCoの投資ルールは初心者が投資を継続し、資産形成を続けていくための器として機能していることが分かります。
売ったり買ったりしなくても、年8%稼げている省エネ運用術?
iDeCoをスタートするにあたって、「よーし、株価をチェックしたりニュースをみながら売買を行おう!」と意気込んでいる人がいたとしたら、それはむしろ不要です。
売ったり買ったりする、ということは投資に人生のリソースを割く、ということです。仕事以外の勉強をすることになりますし、家族や友人、子どもとの時間を削らなければなりません。また負担が重いと続けることができなくなります。
それよりも、できるだけほったらかしにして、かつほったらかしにしても上々の成績になるよう「仕掛け」を作って、投資にかかる時間を削ったほうが効果的です。
しかも、年8%くらいなら十分実現できるとしたらどうでしょうか。
筆者は8年間ほどiDeCoに積み立てを行っています。といっても当時はiDeCoという名前もありませんでしたし、楽天証券も確定拠出年金に参入していませんでした。
当時から私がやっているのはこれ以上省エネできないような投資方法です。すなわち、
- 「毎月の掛金は100%投資に回す」
- 「1つの商品で分散投資されているものを1本だけ購入する」
- 「マーケットを読んで売買はしない」
という方法です。
一度だけ売買したことがありますが、これも市場を見たわけではなく、信託報酬の低い新商品が追加選定されたので全額を乗り換えた、という単純な運用指図でした。
しかし、今年の正月時点での私の運用成績は年8.8%です。繰り返しますが「何も売買しない」「株価などノーチェック」でこの成績なのです。
これなら誰でもできると思いませんか?
下がっているときこそ「売らない」「買い続ける」~ただし何もせずに自動的に
私もずっと8%の利回りだったというわけではありません。相当の元本割れをしていた時期も実はありました。
積み立てをスタートしてからやってきたのはリーマンショックで、その後数年は元本割れの期間が長く続きました。プラスになった実感を得たのはアベノミクスが本格的に伸び始めたことです。
しかし2つのルールを課して下げ相場の時期を過ごしていました。つまり、
- 「元本割れしているときに売らない」
- 「下げ相場でも気にせず新規買い付けは継続する」
というルールです。いずれもiDeCoで最終的な運用成果を高めるためには必須のテクニックです。
まず元本割れした時点での損切りはiDeCoにはまったく向きません。損失を確定させたら、その分以上の収益をあげる再投資のチャンスをうかがわなければなりませんが、これこそ投資の負担を高めますし、初心者には難しいハードルになります。それよりも「5年待って市場が回復し、元本割れが消えるまで待つ」というスタンスで臨むほうが楽になります。
下げ相場であるからと、新規の掛け金で行う投資を抑えてしまうのもiDeCoではオススメしません。下げ相場が続いているとき投資を控えキャッシュ(定期預金)の保有額を増やし、大底に達したときに一気に買い付けすればもっとリターンは高まりますが、そのためにはマーケットを読み、実行する負担が生じます。ちょっと忙しくてタイミングを逃せば、安く買い付けするチャンスを棒に振ることになってしまいます。普通の人には困難です。
むしろ毎月の掛け金で下げ相場でも気にせず購入を続けることは、購入単価を下げることになるので、いったん市場回復に転じると、高利回りの実現に結びつくのです。
この2つのルール、賢く合理的な行動のようにみえますが、何も難しいことはありません。「ほったらかし」をするだけで実行できてしまうのです。楽どころか手抜きのような投資方法で上々の選択肢になるというわけです。
次のリーマンショックこそ利回りをあげるチャンスと考えてみたい
ほったらかしにしつつ、高い利回りを目指すためには1つの条件が必要です。
- 下落相場がしばらくやってきて、その後回復に転じること
しかし、長い目で見て市場の回復、つまり経済成長があると考えられるなら、「下落相場の期間中、毎月の積み立て投資は継続し、一時的な元本割れも売却しない」ことで簡単にリターンを高められます。
リーマンショック3ないしアベノミクス4くらいまでほったらかして投資をしてみるとiDeCoは大きく成績をあげてくるはずです(そのころは○○ショック、○○ノミクスの名前は別の人になるでしょうが)。
ほったらかす、というのは悪いことのようですが、「市場の回復を待つ」という戦略をしっかり採用している、ということでもあります。
iDeCoで投資デビューを果たす人は、書店の「株式」「投資」コーナーにある書籍を読んでも、あまり参考にならないと思います(iDeCo本はOK)。無理をせず続けられる「ほったらかしで年8%」方法を目指してみてはどうでしょうか。
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