「iDeCo(イデコ)」の節税利回り、ホントの計算式と注意点
税務メリットを受けつつ老後の生活資金をつくることができると話題のiDeCo(イデコ)。
でも、皆さんが勘違いしている点や注意すべき点もいくつかあります。
税制面でメリットが受けられる「iDeCo(イデコ)」
先日のコラムにて、節税しながら老後の生活資金をつくる方法として「iDeCo(イデコ)」という制度があることをお話ししました。
今回は、iDeCoについて勘違いされやすい点、注意すべき点をお伝えします。
iDeCoには、税金面で3つのメリットがあります。
(1)掛け金が全額所得控除になる
(2)運用益が非課税となる
(3)受取額のうち一定額が非課税となる
このうち、もっとも効果を実感できるのが、(1)の掛け金が全額所得控除になる。
所得控除とは、所得税や住民税を計算する際のベースとなる「所得金額」から差し引くことのできるものをいいます。
所得控除の金額だけ、所得金額も少なくなりますから、税金も少なくなるということです。
どのくらいの節税メリットがあるかは、その人の所得により異なりますが、掛け金に対して年収が600万円以上ならおよそ20%、800万円以上ならおよそ30%の額が節税できます。
逆に専業主婦のように、所得がゼロだったり、税金がかからない程度の所得しかない方は、差し引く税金自体がないので、掛け金に対する節税効果は得られません。
「節税効果で利回り30%!」は本当なのか?
ここで1つ注意しておいていただきたい点があります。
例えば年収800万円の人は、掛け金が所得控除の対象となることにより、掛け金の約30%の所得税・住民税が節税となります。
このことにつき、「節税効果で利回り30%!」などとうたっているFP(ファイナンシャルプランナー)や専門家の記事をみかけます。
でもこの表現は誤っていますので十分注意してください。「利回り30%」の効果を得られるというのは誇張表現です。
現在30歳、掛け金を30年間納め続ける場合
今年の掛け金25万円に対し、所得控除による節税額が7万5,000円であれば、利回り30%になります。しかし、今年の掛け金25万円は、これから30年間運用されます。利回り30%の節税効果を得られるのは、掛け金を拠出した今年だけで、2年目以降の節税効果はゼロです。
つまり、利回り30%というのは、30年間の運用期間に対してということになります。単純に1年あたりに直すと、利回りはわずか1%しかありません。
毎年の節税額の合計を30年間トータルでの利回りに換算すると、せいぜい1%強程度です。
ただ、運用期間が短ければ、年間利回りに換算しても数%程度まで効果がアップします。
年率で換算して20%、30%といった利回りを得られるほどの劇的な効果はない、ということだけはぜひ覚えておいてください。
税制メリットを享受できるとしても、年率20%、30%で運用できる制度などあり得ないことは、冷静に考えれば分かるはずです。政府もそこまでの大盤振る舞いはしません。
注意点その1・元本割れのリスク
iDeCo(イデコ)の注意点のうち、代表的なものを挙げておきます。1つめは、元本割れとなってしまうリスクがあることです。
iDeCoを投資信託で運用した場合、運用成果がよくなければ、当然元本割れとなる恐れもあります。
FPや専門家の中には、20年、30年という長期で運用すれば、元本割れとなることはない、と断言している人も少なくありませんが、果たして本当でしょうか?
将来どうなるかは誰にも分かりません。筆者は、元本割れのリスクも頭に入れたうえで投資すべきと思っています。
インフレに備えて、投資信託で運用すべきという意見もありますが、インフレにならずにデフレになるかも知れません。そうなれば、逆にマイナス運用になってしまう恐れもあります。
もし、どうしても元本割れを避けたいというのであれば、投資信託への投資ではなく、定期預金など元本確保型商品へ投資すればよいでしょう。
インフレによる価値の目減りリスクもありますが、上でご説明したような所得控除による節税効果も加味すれば、十分選択肢の1つとなりえます。
注意点その2・60歳まで引き出せない
もう1つの注意点は、掛け金を原則60歳になるまで引き出すことができないということです。
例えばNISAであれば、売りたいときにいつでも売って現金化することができます。通常の投資信託や定期預金であっても同じです。
でも、iDeCo(イデコ)の制度を使って積み立てたお金は、60歳になるまで引き出すことはできません。イデコはあくまでも、「老後の生活資金を確保する」ための制度だからです。
一度iDeCoへ積み立てたお金は、将来お金に困った場合でも引き出すことができない、という点をしっかりと理解したうえで積み立てるようにしてください。
なお、捉え方によっては、デメリットではなくメリットにもなり得ます。例えば、ご自身で手もとにお金を置いておくと、ついつい使ってしまう・・・という浪費癖がある場合です。
こうしたタイプの方は、老後の資金をためようとしても、おそらくためることができずに使ってしまいます。そこで60歳まで引き出しができないiDeCoの制度を使うことで、半強制的に老後資金をつくっていくことができます。
注意すべき点もいくつかあるものの、老後の生活資金をつくるためにはiDeCoはかなり税制面で優遇されている制度であるのは確かです。
引退後のセカンドライフを楽しめるよう、できるだけ若いうちから老後に備えた準備をしておきましょう。
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