香港の繁栄

 香港は中国の特別行政区です。かつて英国が統治していましたが1997年に中国に返還され、それ以降、中国中央指導部の下で限定的な自治を行っています。そのユニークな歴史から、長く中国本土へのゲートウェイとして繁栄してきました。2017年のGDP(国内総生産)成長率は+3.7%と近年では最高を記録、2018年も+2.8%成長できるとIMF(国際通貨基金)は予想しています。

政策金利

 しかし、その香港にも懸念が無いわけではありません。まず香港ドルは米ドルに連動している関係で政策金利は自ずと米国のフェデラルファンズ・レートに左右されます。

 

 いま米国は景気がすこぶる良いので、今後も順次利上げされていくと思われます。その場合、香港も歩調を合わせて利上げせざるを得ません。

変動金利で住宅ローンを借りる人が増えた

その場合、気をつけないといけないことは過去5年間余りの間に香港の住宅ローンに占める変動金利比率が3%から93%へと激増した点です。借り手が変動金利を好んだ理由は(リーマンショックでとうぶん米国は利上げしないだろう)と考えたからです。

住宅価格の高騰

 香港では2016年3月から2017年6月にかけて住宅価格が+24%も上がりました。

 

 この結果、住宅価格は所得の17倍になっています。香港では住宅価格を冷やすため数々の政策が実施されています。このため目先は調整局面に入る可能性もあります。

不動産価格と経済

 香港は金融と不動産の街です。したがって不動産価格の下落は経済に影響を与えやすいです。下のチャートは家計部門の信用残高を示しています。

 

 銀行の事業会社への貸付は増えています。

 

 これらのことから不動産価格の下落では銀行を経由して信用の供給が鈍るリスクがあると思います。

 香港の株式市場は保険、銀行、不動産などのセクターが占める割合が大きいです。

不動産価格下落に対する備え

ただ香港の場合、不動産価格の下落に対する備えはある程度出来ていると考えることができ変動金利で住宅ローンを借りる人が増えたるでしょう。

その第一の理由は、そもそもマイホームを持っている人たちの間で60%が住宅ローンを完済しているからです。

 次に香港の純対外資産はGDPの368%もあります。さらに外貨準備は3,860億ドルでGDPの120%に上っています。

 さらに香港特別行政区は事実上の「無借金経営」であり、予算準備金はGDPの38%にのぼります。

まとめ

 香港は中国のゲートウェイとして栄えてきました。直近の経済のパフォーマンスは良いです。ただ政策金利が米国と連動している関係で、米国の利上げは香港にも影響を及ぼします。近年、香港では変動金利ローンが大流行したことは不安要因です。香港経済は不動産価格や銀行セクターへの依存度が高いです。ただ香港はとても豊かなので経済暗転の際のバッファーは十分にあります。