5月28日~6月1日原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は軟調。減産見直しの有無についての思惑が錯綜しており、決め手を欠く状態が続いた。一時持ち直す場面もあったが、週末に米国のリグ稼働数の増加を受け売り優勢に。WTI期近7月限は一時65.51ドルまで下落し、期近ベースとしては1ヶ月半ぶりの安値を付けた。引き続き石油輸出国機構(OPEC)加盟国や非加盟国ロシアの要人発言には注意が必要な状況。節目の65ドル割れでは投げに拍車が掛かる可能性があるため、念頭に入れておきたい。

 メモリアルデーに伴う3連休明けのNY市場は続落して始まった。米国の経済制裁によりイランおよびベネズエラからの原油輸出が滞るとの懸念を基に、OPEC盟主サウジアラビアと非OPEC盟主ロシアは前々週、協調減産の緩和について協議した。これを受け、6月22、23日の総会において、供給が不足するだろう日量80-100万バレルほどの段階的な減産緩和を決めるのではとの思惑が広がった。OPECらは日量約180万バレルの減産を履行しており、この緩和は減産幅を縮小するにとどまるが、市場では減産効果が薄れて需給緩和が進むと弱気ムードが強まった。減産縮小というよりは増産に動くくらいの感覚で捉えられた。連休明けは5営業日続落となり、一時65.80ドルまで値を冷やす場面もあった。

 週央以降はまちまちの動き。減産見直しに対して否定的な見解が伝わったため、一旦値を戻す場面があった。関係者筋によると、相場安定に向けて年末までは協調減産を継続、さらに必要な場合は減産期限延長もあり得るとロイター通信が伝えた。価格下落が続くようだと見直しの可能性は低くなるうえ、イランやベネズエラからの供給減少も即座に大幅減少となる訳ではないため、仮に減産見直しが行われるにしても、それは段階的に緩やかになるとみられる。減産見直しを手掛かりに急反落した反動もあり、値ごろ感からも押し目買いや買戻しが入ったことで、一時68ドル台へと値を戻した。ただし、見直しがないとも断定出来ず、上値を買い進む動きは限られており、市場のセンチメントは依然として弱気寄りにあることが窺える。

 米国の原油需給についても、先行きの緩和懸念が戻りを抑制する要因となった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は事前予想以上の減少となった。これを受けて発表後は買いが先行したが、統計内容は概ね弱気であり、今後の需給の緩みを示唆するものであるとの見方から、買い一巡後は弱気へと転じた。原油生産量は引き続き過去最高を更新しており、足元のリグ稼働数の増加を勘案すると、今後も増え続ける公算が大きい。在庫減少の理由は、輸入減、輸出増、リファイナリーの稼働上昇にある。輸出入に関してはブレが大きいため、この傾向が続くとは判断し難い。また、リファイナリーの稼働上昇は原油需要の増加となるが、高稼働の元でガソリン在庫が予想に反して増えており、ガソリン需給の緩和が警戒されるため、マイナス要因として捉えられた。現状の価格水準からは生産増加傾向が途切れる可能性は低く、原油在庫の取り崩しはさほど進まないとの見方が強い。

 

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 63.50-67.50ドル
  • BRENT    やや弱め 74.50-78.50ドル

 

国内石油化学関連ニュース

トピックス

  • 日本ポリエチレン、ポリエチレン値上げ
  • 日本ポリプロ、ポリプロピレン値上げ
  • 昭和電工、酢酸ノルマルプロピル値上げ
  • 産総研、低温・低圧でアンモニアを合成する触媒を開発
  • 昭和電工、インドネシアの持分法適用会社の株式を譲渡
  • クレハ子会社2社、合併および拠点を集約
  • 三井化学、プライムポリマー、オランダにPPコンパウンドの自社拠点を設立
  • JXTGエネルギー、三洋化成工業、米国のENB製造装置の生産能力を増強
  • 昭和電工、ホテルの燃料電池向けに使用済プラスチック由来低炭素水素の供給を開始
  • 東洋エンジニアリング、インドネシアでCAPの石油化学プラントを受注
  • クラレ、韓国のPVBフィルム工場が完工
  • 三井化学、新規開発品のポリイミド用液状材料が超薄型有機太陽電池の基盤に採用

 

海外石油関連ニュース

EIA、原油在庫は予想以上の減少

 米エネルギー情報局(EIA)が5月31日に発表した5月25日までの週の週間石油統計の概要は次の通り。

 原油在庫は前週比362.0万バレル減の4億3451.2万バレルとなった。前年同期比は14.8%減と前週の同15.1%減からマイナス幅が縮小した。ロイター事前予想の50万バレル減を上回る減少となった。生産量は日量1076.9万バレル(前週比4.4万バレル増)と増加し過去最高を更新。輸入量は同763.1万バレル(同52.8万バレル減)と減少した。リファイナリーへの投入量は同1743.6万バレル(同38.7万バレル増)と増加し、稼働率は93.91%と2.08pt上昇した。輸出量は同217.9万バレル(同43.1万バレル増)と増加した。なお、WTIの受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は3554.4万バレル(同55.6万バレル減)と2週連続で減少した。戦略石油備蓄(SPR)は6億6077.7万バレル(同55.9万バレル減)。

 ガソリン在庫は前週比53.4万バレル増の2億3443.1万バレルとなった。前年同期比は1.1%減と前週の同2.5%減からマイナス幅が縮小した。ロイター事前予想の140万バレル減に反して増加している。生産量は日量1001.5万バレル(前週比5.0万バレル減)と減少した。輸入量は同95.9万バレル(同10.4万バレル減)と減少した。輸出量は同65.6万バレル(同30.0万バレル増)と増加した。需要は同968.9万バレル(同変わらず)。4週平均の需要は同967.1万バレルと前年同期の同959.7万バレルを0.8%上回る水準。全米平均ガソリン小売価格(レギュラー)は前週比3.9セント高の296.2セントと3週連続の値上がり。なお、ナショナル・ハリケーン・センター(NHC)によると、現在大西洋上に熱帯低気圧は発生しておらず、発生する予報も出ていない。

 ディスティレート在庫は前週比63.4万バレル増の1億1462.9万バレルとなった。前年同期比は21.9%減と前週の同22.1%減からマイナス幅が小幅に縮小した。ロイター事前予想の130万バレル減に反して増加した。このうちヒーティングオイル在庫は同80.8万バレル減の860.1万バレル、前年同期比8.3%減と前週の同2.0%増から再びマイナスに転じた。生産量は日量529.6万バレル(前週比35.8万バレル増)と増加した。輸入量は同23.7万バレル(同21.3万バレル増)と増加した。輸出量は同112.3万バレル(同33.8万バレル減)と減少した。需要は同431.9万バレル(同68.2万バレル増)と大幅な増加となった。4週平均の需要は同412.1万バレルと前年同期の同418.5万バレルを1.5%下回る水準。全米平均ディーゼル小売価格は前週比1.1セント高の328.8セントと10週連続の値上がり。

 なお、プロパン/プロピレン在庫は前週比204.3万バレル増の4313.5万バレルとなった。生産量は日量194.9バレル(前週比0.7万バレル増)と増加した。輸入量は同11.0万バレル(同1.5万バレル増)と増加した。輸出量は同79.9万バレル(同24.8万バレル減)と減少した。需要は同96.8万バレル(同8.3万バレル増)と増加した。4週平均の需要は同95.8万バレルと前年同期の同77.4万バレルを23.9%上回る水準。

 石油製品全体の4週平均の需要は、日量2065.4万バレルと前年同期の同2039.5万バレルを1.3%上回る水準。SPRを除く石油全体の在庫は、前週比180万バレル増の11億9400万バレル。前年同期を10.3%下回る水準。

 

ロイター、原油価格見通し

 ロイターがまとめた金融大手など31社の5月31日時点での原油価格見通しによると、2018年のWTI価格見通しは66.47ドルと前回見通しの63.23ドルから上方修正された。2019年は64.81ドル(前回見通し62.16ドル)、2020年は64.15ドル(同63.55ドル)、2021年は63.96ドル(同62.94ドル)とそれぞれ上方修正。2018年第2四半期は68.27ドル(同63.90ドル)、第3四半期は68.44ドル(同63.56ドル)とそれぞれ上方修正。2018年のブレント価格見通しは71.68ドルと前回見通しの67.40ドルから引き上げられた。2019年は69.59ドル(同66.39ドル)、2020年は69.20ドル(同67.97ドル)、2021年は69.07ドル(同67.56ドル)とそれぞれ上方修正。2018年第2四半期は73.86ドル(同68.25ドル)、第3四半期は73.83ドル(同67.64ドル)とそれぞれ上方修正。

 

CFTC、ファンド建玉明細

 米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した建玉明細報告によると、29日時点におけるWTIのファンド筋のポジションは60万7828枚の買い越しと、前週から買い越し幅を2万5558枚縮小させた。引き続き手仕舞い売りを先行させている。さらに新規に売り建ちした。これで6週連続の買い越し幅縮小。この間で12万0303枚もの縮小となっている。一方の生産者筋は65万2629枚の売り越しと、前週から売り越し幅を1万2873枚縮小させた。こちらは売り買いともに玉整理を進める動き。買戻しが優勢となった。