今回は社会人留学を目指す方からの相談です。

相談内容

 現在入社3年目で、実家暮らしをしています。キャリアップを目指し、30歳までに米国のスタンフォード経営大学院(Graduate School of Business:略称GBS)でMBA(Master of Business Administration:経営学修士)取得のため、留学を実現させたいと考えています。

 2年間の留学費用を賄うため、貯蓄と資産運用をしているほか、奨学金の申請も検討しています。他にMBA留学の資金調達法があれば教えてください。(Tさん・金融機関勤務・26歳男性)

 

MBA留学にはいくらかかる?

 MBA取得のために、目指して留学に備えるTさん、素晴らしいですね。

 米国の私立大学の授業料は、日本よりかなり高額で、年間500万円程度が一般的です。Tさんが目指すスタンフォードGBSの場合は特に高く、授業料で約760万円、生活費などを含めると、年間約1,260万円(1ドル=110円の場合)にもなります。

 MBA2年コースを修了するためには、約2,500万円の費用がかかる計算です。Tさんは今後も年間で200万円の貯蓄をしていく予定で、20代の貯蓄額としてはとても優秀です。
ただ、残り3年間では留学費用をカバーできる金額には達しないため、資金調達の必要があります。

Tさんの月間収支 

 

 

MBA留学を実現するための資金調達方法

 では、MBA留学の資金を準備するには、どのような方法があるか確認してみましょう。

(1)留学先の奨学金やローン

 MBA留学先の学費援助制度をまず検討しましょう。

 米国の学費援助制度はFinancial Aid(ファイナンシャル・エイド)と言い、学生ローンや返済不要の奨学金をはじめ、学内で働くことで支援を受けられる制度など、多様な援助制度があります。返済不要の奨学金(スカラーシップ)は、競争率は高いのですが、資金調達を考えるとぜひ狙いたいものです。

スタンフォード大学院Financial Aid

(2)民間団体の奨学金制度

 難関ではありますが、返済不要型の民間の奨学金制度にチャレンジするという方法もあります。下記に一例をご紹介します。

フルブライト奨学生

伊藤国際教育交流財団日本人奨学金

中島記念国際交流財団日本人海外留学奨学生

メリット:返済義務のない奨学金を受けられる

デメリット:採用基準が厳しく、競争率が高い。また奨学金だけでは必要資金全額を賄えない

(3)会社派遣

 大手金融機関や大手メーカー、コンサルタント系企業などの一部には、社員を社費でMBA留学生として派遣する制度があります。数十倍から100倍以上の倍率になるようですが、選抜されれば学費を出してくれるだけではなく、生活費や留学中の給与まで支給される会社もあります。

 会社派遣で留学できれば、経済的な心配をせずに勉強に打ち込むことができることが魅力です。最近の日本人MBA留学生は、会社派遣が多いと言われています。

メリット:選ばれれば、学費のほか給与も支給される

デメリット:自費で留学する人に比べてモチベーションが緩くなることも。「帰国後一定期間会社を退職しない」という誓約書を書かされることが多く、帰国後に社内で活躍できる場所があるかについても、検討する必要がある

 

日本の市場価値を高めるプロ経営人材のニーズは高い

 MBA留学は学力、英語力、費用・留学の時間という、人生の上での相当な投資が必要です。費用を含め必要な資源をそろえて留学を実現すること自体が、未来の起業家として最初のハードルに当たるのかもしれません。

 デフレ経済を背景に、日本人のMBA留学者は年々減少しているという残念な状態です。
バブル崩壊以降、日本経済がなかなか元気になれない理由に、どんな企業をも成長させることができる「プロ経営者」の人材不足が一因と言われています。

 そして、これからさらに深刻になっていく中小企業の事業承継問題は、日本に「プロ経営者」が増えれば、解決に至るケースを増やすことができるのではないでしょうか。また、時代に合った起業をして軌道に乗せられる人が、社会には求められています。

 日本人のMBA留学者が増えることになれば、グローバル経営人材も豊富になるでしょう。ぜひTさんのように志を持って難易度の高い道を進む人がたくさん出てきてほしいものです。

 Tさんが留学の夢を実現し、将来、日本と世界を元気にする事業を展開して活躍されることを、心より応援いたします。

 

【参考情報】MBA留学の意義

 MBAはMaster of Business Administrationの略称で、経営学修士号のことです。グローバル企業の経営幹部やスタートアップを志す人にとって、MBA留学の魅力は主に次の3点です。

(1)経営に役立つ知識と数百に及ぶ実際の企業事例を学び、経営者としての知見を短期間に得られること

(2)米国留学の場合、授業はもちろんすべて英語のため、ビジネスで使える語学力があるとみなされること

(3)世界中から集まってくる教員や学生とグローバルな人脈を形成できるため、卒業後のビジネス活躍の幅がケタ違いに広がること

 特にスタンフォード経営大学院(Graduate School of Business 略称GBS)は、世界に名だたるIT企業の本社がひしめくスタートアップの聖地、シリコンバレーに位置しています。起業の熱を体験できるため人気が高く、ハーバード・ビジネススクールと並んで、MBA留学先最難関のひとつです。2005年のスタンフォード大学の卒業式で、アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏が、創業を志す世界中の若者の心を揺さぶる伝説的なスピーチをしたことでも有名です。