ビットコイン価格の下落に影響を受けず、ハッシュレートが上昇

 2018年に入り、仮想通貨市場は冷え込み、ビットコインを始めとする大多数の仮想通貨の価格が下落しました。しかし一方で、ビットコインのネットワークを維持するために重要な「マイニング」という作業における計算力は、大きく上昇するという現象が起きていました。

 マイニングの計算力を示す「ハッシュレート」という数値は、ビットコインの場合2018年1月~3月までの第1四半期に、前期比+47%もの成長を遂げています。(Coin Deskのレポートより)2018年5月現在も、ビットコインのハッシュレートは3,000万TH/s(テラハッシュ/秒、1テラハッシュは1秒間に1兆回のハッシュ演算を行うこと)超を維持しており、世界で最も強力な計算システムの1つといえます。

 

ハッシュレートとは

 ここで、まずハッシュレートとはなにかを説明しましょう。ハッシュレート(Hash Rate)とは仮想通貨のマイニングにおける計算力のパワー・計算速度のことで、ビットコインの取引や新規発行の際に必要な作業であるハッシュ計算を一秒間に何回繰り返すことができるかという指標です。

 ちなみに、単位はKH/s(キロハッシュ、千/1秒のハッシュ演算)、MH/s(メガハッシュ、百万/秒のハッシュ演算)、GH/s(ギガハッシュ、十億/秒のハッシュ演算)、TH/s(テラハッシュ、一兆/秒のハッシュ演算)、PH/s(ペタハッシュ、千兆/秒のハッシュ演算)で表されます。ハッシュレートの推移は仮想通貨の盛り上がりの判断材料のひとつとして見ることもできます。

中国の大手マイニングプールが牽引するハッシュレート

 ビットコインのハッシュレートのシェアの大部分を占めているのが中国の大手マイニング企業です。BTC.comが28.9%、Antpoolが15.2%など、世界的に有名な中国の大手マイニングプールが80%を占めている状態です。ビットコインキャッシュも同様で、BTC.top、Viabtc、Antpoolといった中国企業がシェアの60%を占めています 。

 ハッシュレートは競争から生まれます。ビットコインで言えば、マイニングで得られる報酬は新規のビットコイン(12.5BTC)と作成したブロックの送金手数料となります(2018年5月時点)。その価格はほぼ一定のため、設備投資が重要になります。そのためマイニングの設備費用を安価で行える環境の中国の台頭は当然のように思えますが、のちほど触れるように規制面において注意点もあります。

 

新しい技術がもたらしたハッシュレートの上昇

 仮想通貨市場の価格相場だけで見ると大きなマイナスだった2018年第1四半期ですが、ハッシュレートは右肩上がりの状況を維持しており、仮想通貨のネットワークを維持するマイニング活動はむしろ安定した成長を続けているということになります。

 現在のハッシュレートの活況には、新しい半導体の開発も大きく影響していると思われます。各国のメーカーがマイニング用の半導体開発に力を入れ、それによりもたらされるマイニング技術の革新が進んでいます。中国のシェアが高い状況のマイニングですが、中国政府は2017年以降継続して仮想通貨取引に厳しい姿勢を示しています。当局はまだマイニングに対して規制の動きを見せてはいませんが、今後の動向には注意が必要です。ただしスイスやアイスランドなどの小村に企業が進出したり、日本でも大手IT企業がマイニングに乗り出すなどの新しい動きも出ています。今後、マイニング事業に参加する企業動向も注目を集めることになるでしょう。

 これまで、仮想通貨価格が下がることによってマイニングの収益性も下がり、ひいてはマイニングのハッシュレートも減少するのではと懸念されてきました。しかし、2018年の第1四半期では、こうした単純な相関関係は存在しないという一つの証明となりました。

 トーンダウンした仮想通貨価格のみを見るのではなく、日々生まれる最新技術やハッシュレートの推移などを追うことで、仮想通貨の未来が予見できるかもしれません。そこが仮想通貨の面白みなのではないでしょうか。