iDeCo活用術の本丸は「運用テク」ではなく「節約テク」かもしれない?
最近、個人型確定拠出年金(愛称はiDeCo)についての取材や講演が増えてきました(楽天証券のセミナーでもお話しますので機会があればお会いしましょう!)。講演ではもちろん、老後資産形成の重要性とその選択肢としてiDeCoが最適であること、iDeCoの税制メリットは大きいこと、iDeCoを活用した資産運用の考え方、など説明するのですが、実は最近「それよりも重要なことがあるな」と考え始めています。
最近、iDeCo関連書籍がたくさん出始めていますが、税制面でのメリットや資産運用上のテクニックを述べているものがほとんどです。もしかすると、ほとんどの人が気がついていないアプローチかもしれません。
それは、
実はiDeCo活用術の本丸は運用テクよりも、節約テクである
ということです。
確定拠出年金といえばリスク資産運用を組み入れつつ税制優遇を活かしていくわけですから、一見するとそこに節約は無関係であるように思えます。
しかし「なんとなく投資」の発想から抜け出すためにもこのアプローチ、一考してみる余地がありそうです。
すでにある貯蓄原資や資産ではなく「新原資」をみつけださなければその積み立てには意味がない
講演でiDeCoの説明を行うと「それはとても有利な制度ですね!今やっている○○積立定期(あるいは○○年金保険)を解約してiDeCoの掛金にしたいと思います」というような反応が返ってくることがあります。しかしこれはあまり賢い選択肢とは言えません。
確かに、税制上のメリットがより高いものに資金をシフトすることは間違いではありません。しかし今行っている積み立てをただiDeCoにスライドしても、あなたの老後の資産が大きく増えていくわけではありません。
個人年金保険を解約すれば、もしかすると今まで積み立てた金額は全額戻らない可能性もあります。保険商品の条件にもよりますが、それはそれで継続しつつ、iDeCoへの掛金を別途確保したほうがより老後は充実するはずです。
今、行っている積み立ての目的がもし別に何かあったとしたら、iDeCoへ掛金をスライドしたことで、その目的そのものが減額されることになってしまいます。たとえば月4万円の積み立てを行っている人が「それでは月2.8万円の積み立ては継続しつつ、1.2万円はiDeCoに回そう」と考えたとします。しかし実はその4万円は子ども2人の将来の学費のためにがんばっている積み立てだったとしたらどうでしょうか。
自分の老後の財産形成は毎月1.2万円ずつ増える一方で、子どもの学費準備は毎月1.2万円ずつ遠ざかっていくことになってしまいます。最悪の場合、iDeCoの残高は貯まっても、子どもの学費は準備不足で終わってしまうかもしれません。
実は、iDeCoを本当に活かして自分の老後を豊かにしたいのであれば、「今はない原資」をみつけて、それをiDeCoの毎月の掛金にあてなければ意味がないのです。
月12,000円を積み立てたいなら、毎日400円の節約が必要になる
もし、月12,000円月1.2万円(公務員、企業年金のある会社員)もしくは、月2.3万円(企業年金のない会社員、専業主婦)の積み立てを行いたいとして、その原資を節約によって確保したいと考えたら、これは相当の努力が必要です。
何せ毎日400円の節約をしてようやく月12,000円ですし、月23,000円の節約となればこれは毎日770円にもなる節約が必要となってきます。
読者の多くは証券投資の経験者だろうと思いますが、まさか日々の買い物に気をつかいながら毎日数百円の節約することがiDeCo活用の重要性だと指摘されるとは思わなかったかもしれません。
しかし、iDeCoは投資をする、といっても頻繁な売買で利殖を積み重ねる性格のものではありません。掛金は月に一度しか入金できません。自営業者の月6.8万円を除けば、月1.2万円(公務員、企業年金のある会社員)か、月2.3万円(企業年金のない会社員、専業主婦)しか積み立てることもできません(企業型確定拠出年金の加入者はここでは除く)。初期元本として100万円を入金することも認められません。
投資信託ベースでの資産運用ですから売買タイミングをねらうことも銘柄選定で収益率を上げることもほとんど不可能です。むしろリスクを抑制しつつインデックスに近い利回りを堅実に確保していく(かつ相場低迷時にも定額購入することで購入単価を引き下げていく)ことが主な投資戦略になってきます。
元本の積み重ねこそがiDeCoの基本的な投資戦術であり、そのためにもやはり節約を真剣に考えてみる必要があるというわけです。
年末に向けて準備をスタートしてみよう、そう家計管理からスタート!
ここまでの話を納得できたなら、あなたのなすべきことははっきりしています。節約です。
銀行の預金通帳と、クレジットカードの明細書を最初から最後までチェックし、ムダな引き落としがないかチェックします。定額課金されているものをストップしたりより安くできるなら、これは確実な節約になるからです。
すでに利用していないサービスは停止し、使っているサービスは見直しによるコストカットを考えます。例えば電力自由化による業者変更で月2,000円下げ、それをiDeCoに回す、という感じです。
また、毎日の買い物についても家計ダイエットを敢行します。今日からしばらくの間は、すべての買い物について「本当に必要な買い物か」「もっと安い買い方はないか」と自問自答を繰り返してみてください。しっかり考えてみると、ムダな買い物や割高な買い物はたくさんあるもので、そうした買い物をひとつひとつ削っていくことによりiDeCoの積み立て原資を確保していくわけです。
節約についてはお金に関する定番の話題です。ネットで検索するといろんなヒントがみつかると思います。個人投資家が節約について追求してみる、というのはなかなか新鮮な取り組みだと思います。
今から年末まで、まだ2カ月半くらいの時間があります。ぜひiDeCoのための掛金を確保できるまで、節約にチャレンジしてみてください。
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