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 5月9日に投開票された『マレーシア総選挙』では、野党連合が過半数を獲得して勝利しました。マレーシアでは、1957年の独立以降、与党連合が政権を担ってきたため、今回の選挙結果により、独立以来初の政権交代となります。マレーシア経済は足元では堅調ですが、野党連合がマニフェストを実行に移せば財政悪化が懸念されます。歴史的な選挙結果を経て、今後はマレーシアの財政政策がどのように変化するのか注目されます。

 

【ポイント1】野党連合が過半数を獲得し、独立以来初の政権交代へ

マハティール元首相は92歳と高齢ながら、15年ぶりに首相に帰り咲き

 5月9日、マレーシア連邦議会下院の総選挙(『マレーシア総選挙』)が実施され、即日開票されました。マレーシアでは、1957年の独立以降、与党連合が政権を維持してきました。今回の総選挙では、ナジブ首相率いる与党連合と、かつて22年間にわたり首相を務めたマハティール氏を首相候補に擁立した野党連合に加え、イスラム主義の政党である全マレーシア・イスラム党(PAS)による3極の対立構図となりました。

 定数222議席を争った今回の『マレーシア総選挙』は、野党連合が113議席を獲得し、過半数を占める結果となりました。これにより、独立以来初の政権交代となり、マハティール氏が15年ぶりに首相に返り咲く可能性が高くなりました。マハティール氏は現在92歳であり、世界でも異例の高齢の首相となりそうです。

 

【ポイント2】野党連合が与党連合の支持層も獲得

ナジブ首相の汚職問題も嫌気された

 今回の『マレーシア総選挙』では、与党連合は堅調な経済成長や低所得者への福利厚生の充実といった現政権の実績をアピールしました。一方、野党連合は、ナジブ首相の汚職問題などを批判し、政権交代の必要性を訴えました。

 従来、野党連合は、変革を求める中華系住民を支持層としていました。これに加え、与党連合の支持層であるマレー系住民が現政権の汚職体質を嫌気したこともあり、野党連合は支持を拡大し、今回の政権交代へと繋がりました。

 

【今後の展開】新政権のマニフェスト実行により、財政悪化・格下げが懸念される

 野党連合は選挙戦を通じて、物品・サービス税(GST)の廃止と、燃料補助金の復活をマニフェストに掲げてきました。今回の野党連合の勝利の主因は、こうしたマニフェストの実現により、家計の負担が軽減されることが期待されているためと考えられます。ただし、新政権がマニフェスト実行に伴い財政規律を緩めれば、財政が悪化し、ひいてはマレーシア国債の格下げも懸念されます。『マレーシア総選挙』の結果を受け、通貨リンギットの対米ドル相場はオフショア市場で下落しています。今後は、新政権の財政政策の行方などが注目されます。