4月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 新年度相場の4月は、まさに日経平均株価の独り舞台。2月、3月と外国人による日本株売りで相場が崩れましたが、この間に外国人が最も売り越したのは「日経平均先物」でした。これまで作った売りポジションを買い戻す……そのきっかけには、米中貿易摩擦に対する懸念が後退したこと、朝鮮半島情勢が大幅に改善したこと、下げのきつかった米ハイテク株が決算発表の通過で軒並み上昇したこと――など、いくつかありました。いずれも日本の話ではなく、海外の話ですが……。

 ただ、海外発の売りの口実が旬を過ぎたことで、米国株、米ドルとも買戻しに転じます。これは、外国人に翻弄されるばかりの日経平均にとって朗報。日経平均先物売り主導で崩れた相場は、日経平均先物買戻し主導で修復する……まさにそんな1カ月でした。

 4月の月間騰落率は、日経平均は+4.72%(上げ幅で1,000円超!)。日経平均先物の買戻しがメインですので、TOPIXは日経平均をアンダーパフォーム。TOPIXは+3.55%でした。一方、日経平均先物の買い戻し相場で蚊帳の外に置かれる東証マザーズ指数は▲5.31%と逆行安(3カ月連続で下落)。日経ジャスダック平均も▲0.96%でした。

 新興株市場、とりわけマザーズが軟調だった理由としては、前述の(1)外国人投資家による買戻しがほぼ無いことのほか、(2)(個人投資家がメインプレーヤーのため)内閣支持率の低下を反映しやすいこと、(3)決算発表した銘柄(ロコンド、TKP、SHIFT、串カツ田中、ウォンテッドリーなど)の「決算通過=売り」となる反応があまりに目立ったこと、(4)好パフォーマンスで人気のあった小型成長株ファンドが(4月10日より)新規の申込み受付を停止したこと、(5)大相場を演じたマネックスG株へ短期資金が移動したこと――などが挙げられます。

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4月の売買代金ランキング(人気株)

 4月はマザーズ市場の売買代金が大幅に減少しました。月間の売買代金は1兆7,088億円と、3月の同2兆1414億円に比べて20%減少。1日当たりで見ても、4月平均の854億円は3月(同1,019億円)と比べて16%減です。

 その理由は?となると……前述のマネックスG株大相場の煽りを食らったという解釈が最も適当といえます。コインチェックの買収を手掛かりに、低位株だったこともあってマネックスG株に短期資金が殺到。マネックスG1銘柄の売買代金が、マザーズ市場全体の売買代金を上回る日が続くようになりました。ちなみに…マネックスGの4月の月間出来高は27億7,558万株でした。これは、コインチェック買収前の3月の月間出来高(5,707万株)の48倍!マザーズ市場の活力(流動性)が、この1銘柄に吸い上げられた側面は相当大きかったといえますよね。

 売買代金25日移動平均で50億円を超えた銘柄はゼロ。これは今年に入って初めてのことです。売買代金の上位銘柄のほとんどが下落しており、値もちの良かった銘柄は利益確定売り、値もちの悪い銘柄は損切り…そして、その資金はマネックスGへ。そんな1カ月になったこともランキングから透けてみえます。

 

コード  市  場 銘柄名 4月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間騰落率
(%)
2497 東証マザーズ UNITED 4,635 1,097 45.7 7.7
9270 東証マザーズ SOU 5,190 314 45.3 ▲13.5
6568 東証マザーズ 神戸天然 3,590 277 32.7 ▲16.7
4565 東証マザーズ そーせい 7,580 1,444 27.3 ▲14.1
6467 ジャスダック ニチダイ 1,189 108 25.4 ▲17.5
6324 ジャスダック ハーモニック 5,250 5,057 24.7 ▲14.1
6034 東証マザーズ MRT 1,860 98 19.3 ▲32.6
4824 東証マザーズ メディアシーク 1,242 121 18.2 8.8
7776 ジャスダック セルシード 1,228 140 17.8 ▲31.0
2121 東証マザーズ ミクシィ 3,610 2,824 17.4 ▲8.1
4579 ジャスダック ラクオリア 1,599 325 16.7 ▲11.6
9450 東証マザーズ ファイバーGT 2,210 105 16.3 ▲26.5
4570 ジャスダック 免疫生物 1,020 85 15.9 ▲30.1
4849 ジャスダック エンJPN 5,130 2,550 15.7 ▲16.9
3558 東証マザーズ ロコンド 1,077 117 15.4 ▲18.7
3697 東証マザーズ SHIFT 5,090 740 14.8 ▲7.3
3624 東証マザーズ アクセルマーク 1,380 63 13.9 ▲28.9
3267 東証マザーズ フィルカンパニ 6,120 340 13.8 ▲11.3
6561 東証マザーズ HANATOUR 3,630 399 13.8 ▲16.5
2160 東証マザーズ ジーエヌアイ 525 708 13.5 0.6

 

売買代金ランキング(5銘柄)

1.UNITED(2497・東証マザーズ)

 フリマアプリ最大手メルカリのIPO(新規株式公開)に向け、同社株も順調に上昇を続けてきました。メルカリの創業直後に資本業務提携を結び、メルカリ株を取得。そのメルカリは、日本では極めて少ないユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業のこと)に育ちました。

 そのメルカリの上場時期について、18日に一部メディアが「6月にも東証マザーズ市場に上場する見通しになった」「時価総額は2,000億円を超える可能性がある」と報じたことで出来高が急増。ただ、6月マザーズ上場の観測はすでに流れていたこともあって、事前に仕込んでいた投資家の利益確定売りが優勢に……。LINE上場前のアドウェイズ株もそうでしたが、相場の格言にある“知ったら仕舞い”ですね。

2.SOU(9270・東証マザーズ)

 3月IPO銘柄では、最もセカンダリーの値動きの良さが目立ちました。初値は4,100円でしたが、上場来高値7,540円(4月6日)まで11営業日で8割強も上昇。初値を付けたあとの良好な値動きには、機関投資家による買いがあったようです。

 中小型株の目利きに定評のあるレオス・キャピタルワークスが、5日に5%ルールで同社株7.48%(45万1,800株)を新規で大量取得したと報告。19日には9.01%(54万4,500株)に買い増ししたことも報告しています。

 13日には中間決算を発表していましたが、営業利益が前年同期比8.8倍でした。通期予想に対する進ちょく率は7割に達しており、業績上ブレも期待できる優良中小型株の登場を予感させます(レオスが大量保有していることもありますし)。

3.エン・ジャパン(4849・ジャスダック)

 人材関連のなかでも、中長期の成長期待で買われ続けてきた同社株でしたが……中小型株の地合いが冴えないなかで、利益確定売り対象に。昨年7月より、月間ベースで実に10カ月連続で上昇。株価は10カ月で2.2倍となっていました。

 なお、4月にはLINEと転職求人情報サービスの共同出資会社を設立すると報じられました。25日に同社は、『エン派遣』『エンバイト』のLINEクリエイターズスタンプの販売を開始しています。かわいいスタンプです(認知度向上につながるのかは不明ですが)。

4.ロコンド(3558・東証マザーズ)

 決算発表に対するネガティブサプライズが炸裂。13日に発表した2019年2月期業績予想は、売上高を未定とし、営業損益を10億円の赤字としました。赤字転落を予想していたアナリストが皆無だったこともあって、翌14日はストップ安売り気配で終了。

 同社は、デヴィ夫人を起用したテレビCMを積極果敢に流しています。この分の広告投下コストが赤字の原因で、今期だけで回収するのは困難ということです。TVCM効果で商品取扱高は大きく増加しており、売り上げは大きく伸びているのですが…短期志向の個人投資家にとって、“赤字転落”がショックだったのでしょう。決算発表後の17日に一時893円まで下落し、年初来安値を更新。その後、急激に持ち直しています。

5.アクセルマーク(3624・東証マザーズ)

 月間で3割近く下落…3月に急騰した分の反動(利益確定売りと損切り売り)だけが株価に表れた1カ月でした。3月に、仮想通貨とブロックチェーン技術を活用したオンラインエンターテインメント事業を開始すると発表。3月は月間で54%も値上がりしていました。

 ただ、3月30日に東証が信用規制(委託保証金率を50%以上、そのうち現金20%以上)の発動を発表。月が替わった4月2日からの増担保で、一気にそれまでの熱狂は冷める格好に……。3月の上昇の原動力も、値上がりだけを期待した投機の信用買いだったということです。

4月の株価値上がり率ランキング

 決算や個別の材料で上がった銘柄がほとんど。毎月のことになっていますが、市場別ではマザーズ銘柄が6、ジャスダック銘柄が14でした。大化け株はジャスダックから探せ!ですね。材料に強く反応する株は、材料を理由に買う投資家に対して、売りをぶつける投資家が少ない株です。つまり、個人投資家があまり持っていない株……結果的にジャスダックのほうがマザーズより人気薄ということが上がりやすい背景です。

 値上がり率トップのパルマはマザーズ銘柄ですが、これまで人気化した経緯がなかったからこそ、強材料に対する株価インパクトが強く出ただけです。とはいえ、4月は新興株の売買代金が減少。エネルギー不足の中にあって、急激に値上がりする銘柄は少なかったといえます。月間で4割以上の値上がりとなった銘柄は3月は19銘柄ありましたが、4月はわずか8銘柄でした。

コード 市場 銘柄名 月間騰落率(%) 4月末終値 前月末終値 時価総額(億円)
3461 東証マザーズ パルマ 78.7 6,790 3,800 93
9973 ジャスダック 小僧寿し 60.5 122 76 36
6634 ジャスダック ネクスG 49.2 576 386 87
4287 ジャスダック ジャストプラ 47.0 2,860 1,945 121
3936 東証マザーズ グロバルウェ 45.1 4,165 2,871 48
2814 ジャスダック 佐藤食 42.8 2,427 1,700 226
3557 東証マザーズ U&C 41.1 2,940 2,084 85
2795 ジャスダック プリメックス 40.1 1,206 861 67
3542 東証マザーズ VEGA 38.0 1,552 1,125 161
3236 ジャスダック プロパスト 32.8 312 235 88
7519 ジャスダック 五洋インテ 32.1 309 234 62
5903 ジャスダック SHINPO 29.7 1,752 1,351 108
3541 東証マザーズ 農総研 26.9 2,264 1,784 95
1730 ジャスダック 麻生フオーム 26.0 703 558 24
3965 ジャスダック CAP 25.2 5,360 4,280 141
8889 ジャスダック APAMAN 24.5 1,310 1,052 239
8256 ジャスダック プロルート 23.5 326 264 67
3803 ジャスダック イメージINF 23.4 1,220 989 22
3261 東証マザーズ グランディー 23.3 597 484 23
9263 ジャスダック ビジョナリー 23.0 91 74 145

 

値上がり率ランキング(5銘柄)

1.パルマ(3461・東証マザーズ)

 17日に、日本郵政傘下の投資会社「日本郵政キャピタル」を引受先とした第三者割当増資を発表。翌18日から23日まで、4日連続でストップ高になりました(17日終値3,550円→23日終値7,650円)。

 大株主に登場した「日本郵政キャピタル」にこれほど反応したのは、同じマザーズ銘柄に凄まじい前例があったため。昨年11月、フィルカンパニーが「日本郵政キャピタル」の出資を受けて急騰。発表直前から今年2月の高値まで、わずか3カ月半で株価は5倍強になりました。日本郵政と業務提携するなど、今後の発展を想像したバラ色のシナリオを描くのが株価です。同社についても、(株価推移的に)“第2のフィルカンパニー”になりそう……そんなバラ色のシナリオが描かれました。

2.小僧寿し(9973・ジャスダック

“新生小僧寿し”誕生への期待で株価は急騰しました。23日に同社は、宅配ポータルサイト「出前館」を手掛ける夢の街創造委員会などと業務提携すると発表。発表前日に一部で報じられたことで買いに火が付いたわけですが、業績改善に期待するというより、(物色銘柄が少ないなか)株価100円前後の超低位株に発生した材料に飛び付いたイナゴ投資家が多かっただけ(?)でしょうか。

3.ネクスグループ(6634・ジャスダック)

 決算サプライズで上方向に株価が跳ねた銘柄。13日に発表した第1四半期決算では、売上高は小幅減収ながら、営業損益が衝撃的な大幅黒字に。前年同期の0.78億円赤字から一転、12.85億円の黒字でした。早くも営業利益の通期予想7.43億円を超えています。

 たしかに衝撃的な好決算なのですが、安定的にこの規模の利益を稼げるかどうかには疑問が残るところ。今回の大幅黒字の理由は、仮想通貨向けのトレーディングシステムの開発をしている子会社が、ソフトの実証試験をかねてビットコインの自己勘定投資をしたところ成果が出たためと。(実証試験でのビットコイン自己勘定投資を続けるのかは不明ですが)仮に安定的に利益を稼げるのであれば、同社の開発しているソフトはかなり有能ともいえるのですが。

4.ジャストプランニング(4287・ジャスダック)

 子会社が手掛けるオーダーシステム「プットメニュー」に注目が集まっています。「プットメニュー」は、テーブルや部屋をIoT化して、注文0分会計0分を実現するという未来型システム(2017年11月には総理大臣賞を受賞)。
 2018年2月にハウステンボス内の飲食店、3月には「変なホテル」に導入されたほか、4月もケンタッキーフライドチキンの2店舗で試験導入されると発表しています。今年に入って株価は3倍以上になっていますが、「プットメニュー」を軸にした中長期的な成長に期待するムードを維持しています。

5.グローバルウェイ(3936・ジャスダック)

 材料で4月に急騰しましたが、これまで流動性が極めて低く、保有していた個人投資家が少なかったこともあって、1つの材料で上がり過ぎた側面も。
 急騰のきっかけは、13日の同社のリリースでした。「タイムチケット」という自分の空き時間をチケットにして販売するサービスを、グローバル展開を目的にスイス子会社を設立すると。13日終値2,789円の株価は、5日連続ストップ高となって20日には6,390円に(たった5日で2.3倍!)。その後はハシゴを外される格好で、4月末は4,165円で取引終了。上昇分の6割がたった5日で吹き飛びました。

 

5月に注目したい新興株の動き

 株式市場で5月といえば、「セルインメイ(5月に株を売れ)」という相場の格言が有名ですよね。日本の新興株市場の5月相場はどうなのか? とりあえず、想像するより過去検証。東証マザーズ指数の算出が始まって以降の5月相場を調べてみました。

 マザーズ指数の算出以降、過去14年の5月の勝敗は「7勝7敗」でした(う~ん、ビミョー)。2013年以降(=アベノミクス相場以降)でいえば、「最近5年間は、5年連続で5月に上昇」となっています。「セルインメイ」が連呼されるようになってから、逆に5月は上がるようになってるのでしょうか。ただ、14年間の5月の月間騰落率を平均すると▲2.8%。勝率は5割でも、パフォーマンス的には5月は軟調といえるのかもしれません。

 結局のところ、「セルインメイの5月に売ったほうがいいのか?」。5月に売るかどうかは、「5月の先がどうなのか?」が重要ですよね。同じように6月のマザーズを調べると、マザーズ指数の過去14年の6月の勝敗は「9勝5敗」、勝率で約7割でした。勝率が高いうえに、月間騰落率の平均も+2.9%。5月の▲2.8%分を綺麗にリバウンドするような形で、5月に売るより、5月は6月に向けて仕込んだほうがいいともいえます。

 では、次に「どこで仕込めばいいのか?」ですが、5月の特徴として「大幅安する頻度が高い」というものがあります。例えば、マザーズ指数が前日比3%以上の下落になった回数でいえば、2010年に5回(最大下落率は5月17日と25日の▲7.0%)、2012年は7回(5月7日の同▲7.8%)、2013年も7回(5月23日の▲10.1%)と乱発しています。月間では上昇したとはいえ、2014年に3回、2016年も2回発生しています。

 さらに、下げやすい特異日もあります。それは「5月16日」。2013年が▲6.0%、2014年が▲3.2%、2016年が▲6.8%でした。この日がどういう日か?といえば、“新興市場株の決算発表がほぼ全て通過した翌日”になります。今年についても、15日(火)にサイバーダイン(7779)ソレイジア(4597)カイオム(4583)ナノキャリア(4571)などが発表予定。決算でポジティブサプライズを生みにくいため(例えば、マザーズ銘柄の場合は自社株買いなど株主還元強化を出しにくい)、決算直後に売られるケースが多いことが影響していると言えます。

 そう考えると、6月に向けて仕込むにしても、決算通過後の5月16日以降が賢明でしょう。決算が本当にいい銘柄は、出た直後に急いで買う必要はありません。本当に好決算を出していれば、待っていればもっと上がります。ある市場参加者によると「大型株でも同じ」だといいます。初期反応は、値動きだけに飛び付く短期筋の需給でブレやすく、本当の決算評価は「決算発表の翌々日以降の動きが大事」と。機関投資家の腰の入った買いは、少し時間を置いてから入ると見られます。もちろん、決算発表の直前に、一か八かで仕込む必要もありません。

 買う際の銘柄選びでいえば、「強い株に付つく」ほうがいいと思われます。例えば、先ほどの「決算発表の翌々日以降の動きが大事」でいえば、マザーズのJIA(7172)の決算後の動き方は参考になると思います。そのほか、ベイカレント(6532)、TKP(3479)などのチャートもぜひ見てみてください。機関投資家の買いが入っているのではないか?と想像することができます。

 長々と書きましたが、新興株復活の鍵はなんといっても、マネックスG株相場がはっきりと鎮まる(出来高が明らかに減少する)かどうかにかかっていそうですが。