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 ここ数年、『人工知能(AI)』は、自ら学習するディープラーニングにより、認識精度が高まるとともに用途が拡大し飛躍的な成長を遂げています。米国は家庭にも普及し人気を博す『AI』スピーカーを生み出すなどの代表的な『AI』企業があり、中国は巨大な『AI』市場創出に向けた「次世代AI発展計画」を発表する中、欧州委員会からも具体的な投資金額など『AI』の開発支援に向けた推進指針が公表されました。

 

【ポイント1】『AI』開発の最先端に立つために求められる欧州の協調行動

『AI』の競争力を高めるため、同分野への投資を加速させる指針を公表

 先月、欧州連合(EU)の欧州委員会は域内での『AI』の競争力を高めるため、同分野への投資を加速させる指針を公表しました。その中で、欧州には『AI』分野における世界クラスの研究者や研究所、新興企業があり、ロボット工学に強みを持つとともに、競争力を維持するために『AI』を採用するべきである世界的な輸送や医療、製造業分野もある、とされています。こうした特徴を活かすためにも、激しい国際競争において『AI』開発の最先端に立つためには欧州の協調行動が求められるとの見方を示しました。

 

【ポイント2】2020年末までに200億ユーロの投資を拡大

既存の官民パートナーシップからの追加投資にも期待

 具体的には、『AI』分野の調査・技術革新に対して、2020年末までに公的及び私的部門において少なくとも200億ユーロの投資を増やすべきだとされています。また、その実現に向けて、欧州委員会は2018年から2020年にかけて15億ユーロの投資拡大をすると示されています。

 この投資により、例えばビッグデータやロボット工学など、既存の官民パートナーシップから25億ユーロの追加投資が期待されています。また、新興企業を含む企業に『AI』投資への追加支援を提供するために、2020年までに総額5億ユーロ以上が「欧州戦略投資基金」から提供される見込みです。

 

【今後の展開】世界各地での投資の後押しを受けて、『AI』開発の進展が期待される

 現在、世界で『AI』で先行する企業を見ると、グーグルやアマゾン、IBM、マイクロソフトなど、米国の企業が目立ちます。また、バイドゥやアリババなどが活躍する中国は、2030年までに世界の『AI』産業におけるリーダー的存在となるために1,500億米ドル規模の『AI』及び関連産業の市場創出を目指す「次世代AI発展計画」を2017年に発表するなど、国家規模で『AI』戦略を推進しています。今回の欧州委員会の指針は、こうした米国や中国を中心に発展する『AI』の研究・開発を、欧州でも拡大させるためのものです。『AI』の活用はこうした世界各地での投資の後押しを受けて、一段とその拡大が進むことが期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。