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『モンスーン』とは、夏季の南西風がもたらす雨季のことです。インドの『モンスーン』の期間である6月から9月の降雨量は、年間降雨量の70%以上を占めます。インドでは、農業従事者の全就業人口に占める割合が約5割と高く、農産物の生産量を左右する『モンスーン』の降雨状況は、経済活動や物価動向に大きな影響を与えます。このため、インドの金融市場では、 『モンスーン』の降雨予報や実際の降雨量が注目されます。

 

【ポイント1】『モンスーン』 の降雨量は平年並みの予報

少雨になる可能性は低い

 インド気象庁(IMD)は4月16日、2018年の『モンスーン』(6月~9月)の降雨量について、1次予報を発表しました。IMDは、今年の『モンスーン』の降雨量を「平年並み(過去50年の平均に対し97%)」と予測しています。また、降雨量が平年より10%を超えて減少する、少雨となる確率は14%と、低く見積もりました。

 

【ポイント2】予報通りなら順調な経済成長

株式市場は一次予報を好感

 IMDの予報通り、『モンスーン』が平年並みの降雨であれば、インド経済は順調な成長が期待されます。農産物の生産増により農村部の所得が上昇し、消費が上向くほか、食品のインフレ抑制効果が見込まれるためです。干ばつ被害による景気の下振れやインフレの上振れリスクは低いと言えます。

 インドの株式市場は、IMDの一次予報などを好感して、足元で上昇基調にあります。

 

【今後の展開】6月に発表される2次予報が注目される

 インド準備銀行(中央銀行、以下RBI)は4月の金融政策委員会で政策金利を据え置く一方、インフレ見通しを下方修正しました。インフレ見通しは、『モンスーン』の降雨量を平年並みとして策定されているため、IMDの1次予報は前提通りでした。ただし、19日に発表された議事録によれば、RBIのパテル総裁は「最近インフレは落ち着いてきたものの、インフレを加速するいくつかのリスクが残っている」と、インフレ警戒姿勢を解いていないことが明らかになりました。『モンスーン』の降雨量は、そのリスク要因の一つであるため、RBIの金融政策の姿勢を予想するうえでも、注目されます。

 IMDは4月と6月の2回に分けて、『モンスーン』の降雨量の予測を公表しています。1次予報では平年並みとなりましたが、天気予報は予測通りにならないことも多く、2次予報では修正される可能性もあります。また、インドでは、特に7月の降雨量が、農産物の生産量や食品のインフレ率に与える影響が大きいとされます。6月に発表される2次予報と実際の降雨量(特に7月)から目が離せません。