米ナスダックの相対パフォーマンスを検証する

 長期的な視野に立った投資を考えるにあたり、短期的な価格変動リスクを乗り越えながら、高い成長(リターン)を期待できそうなマーケットはどこにあるのでしょう。

 こうした問いの答えの一つが「米国のナスダック100指数やITセクター」と考えています。

 ナスダック100指数は、ナスダック総合指数(米国の店頭株で構成される時価総額加重平均指数) を構成する約2,500銘柄の中で、株式時価総額が大きい100社(金融を除く)で構成されています。

 その特徴は「ハイリスク・ハイリターン」(高ベータ[β])とされており、指数が上昇、あるいは下落する局面で、市場平均(S&P500指数)より変動が大きかった経緯が知られています。

 ただ、長期市場実績(例:過去10年程度)で振り返ると、ナスダック100指数のリターンには、日本株式、米国株式、世界株式、新興国株式を大きく上回ってきた事実があります(図表1)。

 ナスダック100指数は、米国の経済成長の源泉である「世界をリードする技術革新、国際競争力、新陳代謝の結実」を反映する株価指数とも言えるでしょう。ただ、市場の成長期待が比較的高い分、一時的にせよ成長期待が後退する場面では株価が下振れたことも多々あり、今年も3月12日に史上最高値を更新した後は、ハイテク大手銘柄に関わる悪材料に反応し、ナスダック関連株は調整局面に至りました。

図表1:ナスダック関連指数は中長期で優勢を維持

注:上記グラフは、各種株価指数の2007年末値を100とした相対パフォーマンスを比較したもの
出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(月次、2018年3月末時点)

 実際、米国株高のけん引役を担ってきたのがナスダック関連株やIT(情報技術)関連株の優勢です。特に、S&P500指数の株式時価総額において、ITセクター(S&P500・IT株価指数)の時価総額ウエイトは、今年初めに約25%(4分の1)を占めるまでに成長しました。

 こうしたナスダックやITセクターについて、予見可能な将来にわたる業績見通し(市場平均予想)を示した一覧が図表2です。

 S&P500指数、ナッスダック100指数、10大業種株価指数別に「2017年から2020年までのトップライングロース見通し(1株当たり売上高の伸び予想[市場平均])」を比較してみると、市況産業の色彩が濃い「エネルギー」を除けば、ナスダック100指数やIT関連業種の増収率期待が高いことがわかります。

「第4次産業革命」と呼ばれる主要IT分野(例:ビッグデータ、クラウド、AI、IOT、ロボティクス)の需要が拡大し続ける中で、それらのプラットホームやデファクトスタンダードを握る米ナスダック関連株やIT関連株の売上成長ペースは市場平均を上回っていくと考えられます。

 4月下旬以降に本格化する第1四半期Q(1~3月期)決算発表が進む中、業績の堅調が総じて確認されるのであれば、ナスダック関連やIT関連の「押し目は投資の好機」となりそうです。

図表2:ナスダック100やITセクターのトップライン成長見通し

注:予想増収率はBloomberg集計による予想SPS(一株当り売上高/市場予想平均)に基づく 出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2018年4月23日)

 

「第4次産業革命」の成長期待に注目するETF

 こうしたナスダック関連株やIT関連株への投資を実践するにあたっては、自ら銘柄を選んで投資をする、あるいは複数の銘柄を組み合わせて分散投資をするより、ETF(上場投資信託)や追加型投資信託を活用するほうがリスク抑制の面で効率的であると考えます。

 参考までに、ナスダックやITセクターに分散投資するETFを下記に一覧しました(図表3)。

 例えば、ナスダック100指数に連動する投資成果を目指すETFは日米双方の取引所に上場されています。東証上場の円建てETF(東証コード:1545)や、米国(NYSE)上場のドル建て海外ETF(ティッカー:QQQ)がそれです。また、米国上場の海外ETFの中には、米国のITセクターに分散投資するETF(ティッカー:VGT、IXN、XLK)を売買することが可能です。

 ちなみに、ユニークな海外ETFとしては、中国のニューエコノミー関連株式(IT関連を中心とする中国の非国営企業)に分散投資するETF(ティッカー:CXSE)もあります。

 これらのソリューション(投資商品)を活用することで、世界経済の成長ダイナミズムを支えるイノベーション(技術革新)や関連企業群の成長期待を享受する一方、個別銘柄のリスクを抑制する分散投資効果も期待可能であることに注目したいと思います。

図表3:ナスダック及びIT関連株式型ETF(参考情報)

出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2018年4月23日)