特集◆老後破綻しないためのじぶん年金のつくり方・STEP8

「資産運用はじめの一歩なら、投資信託でしょ」のワケ

資産運用はじめの一歩はどうすればいいの?

「資産運用の必要性は認識しているけれど、どうしたらいいのかわからない。投資はリスクもあってハードルが高そうだし、貯蓄も金利が低くて運用する意味を見いだせないし…」
そんなとき、資産運用のはじめの一歩としてオススメしたいのが「投資信託」という投資商品です。

 投資信託は今、個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)制度や少額投資非課税制度(一般NISA、つみたてNISA)など国がバックアップする制度もあり、資産運用のスタートをしやすい環境が整っています。

 まずはお試しで始めてみてはいかがでしょうか。多くのネット証券では、100円から買える投資信託があるので、資産運用の練習にもぴったりです。慣れてきたら少しずつ投資金額を増やして、資産形成を進めていきましょう。

 

投資信託ってどんなもの?

 では、投資信託とはどういう商品なのでしょうか。

 投資信託は略して「投信」、または「ファンド」とも呼ばれていて、資産運用の専門家であるファンドマネージャーが、私たちのような個人投資家をはじめ、多くの投資家からお金を集めて、国内や海外の企業の株式、国債や海外の債券など、利益が出そうなさまざまな商品に分散投資して、その運用の成果(利益)を私たち投資家に還元する仕組みです。

投信を買うメリットは主に4つ

 投信のメリットを大きくまとめると、次の4つです。

(1)少額から始められる

(2)運用のプロに任せられる

(3)分散投資でリスクを軽減できる

(4)個人では投資しにくい国や地域、資産に投資できる

「(1)少額から始められる」は先ほど100円という少額でも投資できることをお伝えしたので、次は「(2)運用のプロに任せられる」メリットを説明するため、株式投資と比較してみます。

 株式投資では個人投資家自身がさまざまな情報を集めて銘柄(株式)を選び、タイミングを見計らって買い、買った後は株価をチェックして……というように手間も時間もかかりますが、投信は手間と時間の部分をファンドマネージャーにお任せしてしまうのです。

 そして「(3)分散投資でリスクを軽減できる」メリットについて。投資家から集めた投信のお金は、運用方針に従って、国内外の株価指数に連動させたり、国内株式、海外株式や国債、海外債券や不動産など、複数の投資先に分けて投資されます。

 この方法が「分散投資」で、このことにより、一つの投資対象が値下がりしても他の投資対象が補うので、値下がりリスクを分散、軽減することができます。

 最後に「(4)個人では投資しにくい国や地域、資産に投資できる」について。投資商品には個人では買いにくいものもたくさんあります。

 例えば先進国・新興国にある企業の株式や海外の債券、不動産などは、情報収集が難しかったり、売買コストが高かったり、税金の処理が面倒だったりしますが、これらも投信を通じて買うことができます。

投信のデメリットは2つ

 一方で、投信のデメリットは大きく分けて二つあります。

 一つは「買うとき」「保有期間中」「売るとき」にコストがかかることがあること。二つ目は元本保証ではないことです。

 コストには、「販売買付手数料」「ファンドの管理費用(含む信託報酬)」「信託財産留保額」があります。ただし、コストは購入する投信によって異なり、例えばノーロードと呼ばれる販売買付手数料がかからない種類の投信もあります。

 また元本保証ではないため、運用成績が芳しくなく、購入時よりも値下がりした場合、売却時に手にするお金が購入時に払ったお金よりも少なくなる可能性があります。
これらのことはしっかり認識しておきましょう。

「インデックス型」と「アクティブ型」の違いは?

 投信の運用手法は大きく分けて「インデックス型」と「アクティブ型」があります。

 国内株なら日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、米国株ならNYダウ平均といった株価指数、国債のような債券に関する指数、コモディティ(商品先物取引)に関する指数などの「指数」をインデックスと呼びますが、これに連動するよう運用成果を目指す投信がインデックス型投信です。

 指数に連動することを目的としているため、日経平均株価に連動するインデックス型投信を買うと、日経平均株価が1%上がれば同じように1%上がり、下がれば同じように下がります。そのため市場平均以上の運用成果をあげることはできません。

 ただし運用コストが抑えられるため、投資家が負担するコストが低いという特徴があります。

 一方のアクティブ型投信は投資テーマや投資プランに合わせた銘柄に投資することで、日経平均株価などの市場平均を上回る成果を目指します。

 例えば日本株のアクティブ型の場合、日経平均株価が横ばい状態のような低迷時でも、ファンドマネージャーの運用次第で運用成果を上げられる可能性があります。

 ただし、銘柄選定のための調査やリバランス(資産配分の再調整)などに手間がかかるので、私たち投資家が負担するコスト、つまりファンドの管理費用などは高くなります。

 投資初心者の方が最初の投信を選ぶときは、「バランス型」という選択肢もあります。
一つの投信の中で株、債券、不動産REIT(リート)などの複数の投資商品、地域に分散投資するものです。

 少し難しい話になりますが、「バランス型」には資産配分をあらかじめ決めて固定する「固定配分型」と、市場環境などに応じて資産配分を機動的に調整する「可変配分型」があり、世界が複雑に絡み合っている現在では可変型が主流になりつつあります。

 

積み立ての仕組みを使って資産形成

 ところで、「投信の概要はわかったけれど、どうやって買うの?」という方に、買い方を紹介します。

 とても簡単で、証券会社や銀行などに口座を開き、買いたい投信を選ぶだけ。投信の取り扱い数は証券会社のほうが多いので、目的に合った投信が選びやすいはずです。

 また、いくら分散投資をと言っても、投信をたくさん買う必要はありません。数が多いと管理が大変になるので3本、または5~6本で十分です。

 初めて買う人や慎重な人は、投資可能額のうち、バランス型を70%程度買って、残り30%を国内株式のアクティブ型に、というポートフォリオを組んでみましょう。もちろんバランス型一つでもいいでしょう。

 将来に備えた資産形成は、税制メリットのある口座から先に使うことが鉄則です。iDeCoや一般NISA、つみたてNISAを始めるなら、それぞれ専用口座を開くことが必要です。毎月一定額で投信を買って積み立てるiDeCo口座を開き、次につみたてNISA口座を開くという順番で、活用しましょう。お試しで買ったり、まとまったお金で買うなら一般NISA、次に特定口座がいいでしょう。

 

難しく考えず、ほったらかしでも投信なら

 投信を買った後はほとんどやることがありません。

 運用はファンドマネージャー任せで、投信の時価である基準価額も見る必要もありません。なぜなら株と違って基準価額は需給(買う人と売る人の数の差)では動かないからです。また基準価額を見て割高、割安という判断もできません。どうしても投信が気になるという人は、含み益がどれだけ出ているかがわかる「トータルリターン」というところだけ、チェックしてください。

 また、投信を買うタイミングは「いつでも」OK。

 売るタイミングは、NISAや特定口座を使い、まとまったお金で投信を買ったときは、20%の利益が得られたあたりを目安にすべて解約しても、利益の分だけ解約してもいいでしょう。

 ところで、つみたてNISAの口座は別なので、iDeCoは60歳まで(原則中途解約はできない)、つみたてNISAはできるだけ長く続けましょう。

 初めて投資をするときは、なかなか最初の一歩が踏み出せないものですが、そんなときは、ライフイベントに合わせて投信を買ってみるのも手かもしれません。
転職、結婚、子どもが生まれる、家を買う…などのタイミングなら、自分や家族の将来のために、始められるかもしれませんね。

特集のSTEP1へ戻る●老後資金はどうするつもり?を読む≫≫

この記事の特集まとめ●老後破綻しないためのじぶん年金のつくり方を読む≫≫