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『為替報告書』は、米国の財務省が4月と10月の年2回、連邦議会に提出する「米国の主要貿易相手国のマクロ経済および外国為替政策に関する報告書」のことをいいます。為替介入等によって為替相場を意図的に操作して自国通貨安への誘導を行い、輸出競争力を高めようとする国を牽制することが狙いです。4月13日に公表された最新の報告書によれば、為替操作国に認定された国・地域は前回に続き皆無でした。

 

【ポイント1】為替操作国と認定された国・地域は皆無

貿易収支、経常収支、為替介入が認定の基準

 米財務省の『為替報告書』は、為替操作国と認定するための基準として、(1)貿易収支の規模・・・年間の対米黒字額が200億ドル以上(貿易収支は財収支のみで、サービス収支は含まれない)、(2)経常収支の規模・・・年間黒字額が対GDP比で+3%以上、(3)為替介入の有無・・・継続的な為替介入による一方的な外貨の買い入れが過去12カ月間でGDPの+2%以上等の3点を挙げています。

 これら3項目すべての基準に抵触すると為替操作国に認定されますが、4月13日に公表された最新の報告書によれば、該当する国はありませんでした。

 

【ポイント2】中国、日本、ドイツ等6カ国を監視対象国に指定

日本は貿易収支、経常収支基準の2項目に抵触

 

 ただし、2項目の基準に抵触した日本、韓国、ドイツ、スイス、インドの5カ国に加え、該当する基準は1項目のみだったものの、対米貿易黒字額が顕著に大きかった中国が監視対象リストに載りました。

 日本は、対米貿易黒字額が中国の3,750億ドル、メキシコの710億ドルに次ぐ690億ドルを記録したほか、経常収支の黒字幅が対GDP比+4.0%と、基準の+3%を上回りました。

 日本、ドイツ、韓国は、『為替報告書』が現在の様式となった16年4月以降、連続して監視対象リストに入っています。

 

【今後の展開】前回報告とほぼ同じ内容であり、円高材料にはならない見込み

 報告書は日本について、堅調な経済成長が続く現在こそ、持続的かつ速いペースでの国内需要の拡大や、長期成長のための道筋の構築、公的債務および貿易黒字の削減を可能とするような構造改革を推進するべき時だと説いています。

 今回の『為替報告書』は、17年10月に公表された前回の報告書と概ね同様の内容であり、特に変わった点は見当たりません。この点を踏まえると、円安材料ではないにせよ、円高材料にもなりにくく、為替市場で強く材料視されてはいないようです。