にわかに高まった「地政学的リスク」

 4月14日午前、アメリカはイギリス、フランスと共同でシリアの化学兵器施設を空爆しました。巡航ミサイル計105発を撃ち込んだとのことです。この攻撃はトランプ米大統領が事前に予告していたもので、「シリア・アサド政権の化学兵器使用」に抗議・対抗するものです。もちろん、アサド政権の後ろ盾とされるロシアは強くアメリカを非難しています。

 株式市場では「地政学的リスク」の高まりが意識されることになります。地政学的リスクとは、政治的・軍事的な緊張の高まりが、地理的な位置関係によって、関連地域の経済や、ひいては世界経済全体の先行きを不透明にし、マーケットに向かう投資資金の動きを緩慢にしたり、いわゆるリスクオフの動き(金価格上昇・ドル安円高など)につながることを指します。明確な定義はないものの、おおむね誰もが理解することだと思います。

 今回、日本からは地理的に遠い地域での出来事であり、直接的な戦闘に巻き込まれることは想定しにくいものの、当事国であるアメリカや欧州マーケットの変調の影響を受ける可能性はあります。その意味では決して他山の石ではないでしょう。2014年のウクライナ内戦にロシアが介入し、最終的にクリミア半島を併合した際、東京市場もリスクオフの動きとなりました。

 今回、日経平均株価こそ安値揉み合いにとどまっているものの、それまで買われていた銘柄が突如急落、新興市場の小型株に大きな下落を見せるものが増え、逆に、ディフェンシブ(防衛的)セクターとされる医薬品、食品の一角に買われるものが散見されたことから判断すると、やはりリスクオフの動きはあると思われます。少しでも利益が出ているものを売り、できるだけ影響を受けにくいところに一部の資金を移動させるという典型的なリスクオフ時の動きではないでしょうか。

 

今後2週間は、ロシアの動きに注目

 今後、注目点は、「ロシアの出方」ということになります。ロシアが具体的な動きを見せた時にマーケットがいかなる反応をするかです(必ずネガティブ反応をするとは限りません)。もし、ロシアが動きを見せないままだと、2週間もすればマーケットでは「過去の事」になる公算が大きいです。また、必ず同地域で動きが出るとは限らないことも付け加えておきます。シリアとは関係のない地域、関係のない事案で対抗策をとってくる可能性もあり、それは軍事的行動ではないこともあり得ます。

「地政学的リスク」が顕在化している間は、相場の動きが急変することも念頭に置いておくべきでしょう。ここでは、ロシアが目立った動きを取らず静観したまま、時間が経過していくことが東京市場にとって最も望ましいものではないかと考えます。

 とはいえ、いまのようなリスクオフが続く可能性に備えるならば、外的な要因に業績や株価が影響を受けにくい、内需系企業、ディフェンシブ株に注目しておきたいところ。
 今月の「10万円株」は以下の5銘柄です。

有事に強い!内需ディフェンシブの10万円株

 株価データは2018年4月17日終値ベース。

 

オエノンホールディングス(2533・東証1部)

 旧上場社名は合同酒精。焼酎と日本酒を主力に取り扱う純粋持株会社。好採算の乙類焼酎など飲食店を中心に開拓。大型容器で販売される甲類焼酎でも高シェア。イオンなど流通大手向けにPB製造を受託し、売上高に占める比率が上昇中。

・オエノンホールディングスの株価チャート

 

空港施設(8864・東証1部)

 羽田、伊丹中心に全国の主要な12空港での施設運営・賃貸が主力。主要株主はJALとANAの国内航空2強。2020年の東京五輪を控え空港施設の整備・拡充が同社の追い風になるとの見方が強い。

・空港施設の株価チャート

林兼産業(2286・東証1部)

 西日本を中心に展開するハム・ソーセージ、食肉の中堅企業。マルハニチロ向けが売上高約20%を占め、食肉卸首位のスターゼンと業務提携を結ぶ。ハム・ソーセージや黒豚は「霧島」ブランドで展開。養魚用飼料でも高シェア。

・林兼産業の株価チャート

 

ナック(9788・東証1部)

 関東中心にダスキン代理店で最大手。2002年に戸建て住宅の建築請負に進出、「レオハウス」「ジェイウッド」ブランドで展開する住宅事業が売上の半分を占める。このほか水宅配事業「クリクラ」や化粧品通販事業「JIMOS」も展開。

・ナックの株価チャート

リソー教育(4714・東証1部) 

 首都圏を中心に個別指導受験塾「TOMAS」を運営。幼児教育、家庭教師派遣、英会話などへの事業展開もしています。2013年に不正会計が発覚したものの、本業への影響は軽微で、2017年2月期から個別指導塾の開校を再開。配当性向100%を掲げる。

・リソー教育の株価チャート