世界史から見る「ティータイム銘柄」

 みなさんは甘いお菓子とコーヒーは好きでしょうか。

 甘いお菓子を口にしたときの「甘くておいしい」という感覚はプラス思考の素に、コーヒーを飲んだときに感じる「目が覚める」感覚は、ここからもう一頑張りというときに集中力を与えてくれます。

 さらに誰かと共有する時間にすれば、コミュニケーションの場となります。

 甘いお菓子とコーヒーは、ストレスがかかりやすい現代社会に生きるわたしたちにとってなくてはならない存在だと言えます。

 個人的には、甘いお菓子とコーヒーは嗜好(しこう)品ではなく必需品だと感じています。

 砂糖はお菓子に幅広く用いられ、カカオとともにチョコレートの原材料にもなります。
コーヒーはそのまま、あるいは砂糖を入れて飲むため、本レポートではこれらの3つ品を「ティータイム銘柄」と命名します。

 このティータイム銘柄を考える上で欠かせないのが、世界史から俯かんすること。世界史を踏まえて考えることで、ティータイム銘柄への理解がさらに深まり、面白くなってきます。

 コーヒーの原産地はアフリカ東部のエチオピア周辺、砂糖の原産地はインド、カカオの原産地は中南米と言われています。しかし、現在の主要な生産地は、コーヒーと砂糖が中南米、カカオはアフリカ西部です。

 このように原産地と現在の主要な生産地が、海を隔てるほど離れているのはなぜなのでしょうか。

 この疑問を解決する手がかりを「ティータイム銘柄を取り巻く世界史」に見ることができます。

 

大航海時代以降のヨーロッパ列強がティータイム銘柄の主要生産国を決定

「コロンブス交換」(Columbian Exchange)という言葉があります。

 これは、欧州、およびアフリカ大陸とアメリカ大陸(北中南米)、大西洋を隔てた二つの大陸間でモノが行き来したことを表す言葉です。新大陸を発見してそのきっかけを作ったコロンブスの名を冠した言葉で、動物や植物、文化、宗教、奴隷、そして病原体に至るまで、実にさまざまな多くのモノが行き来したのです。

 コロンブスの新大陸発見の年が1492年、この年がコロンブス交換の元年と言えます。
羅針盤、天文学、航海技術、そして未知の大陸への探求心の高まりが、コロンブスを新大陸に、その後もスペイン、ポルトガル、英国、オランダなどの海外進出を後押ししました。
こうした欧州列強の海外進出によって、コロンブス交換がどんどん加速していきました。

 次の表は「コロンブス交換」によって大西洋を渡った品目の一部をまとめたものです。

図:コロンブス交換によって大西洋を渡った主な品目

注:旧大陸は欧州およびアフリカ、アメリカ大陸は北中南米を指す
出所:各種資料をもとに筆者作成

 

 原産国がアフリカだったコーヒー、原産国がインドだった砂糖は、新大陸に渡りました。逆に原産国が中南米だったカカオは逆に旧大陸(アフリカ西部)に渡りました。

 海外進出を進めたヨーロッパ列強による「コロンブス交換」が、現在のティータイム銘柄の主要生産国を決めたと言えます。

 例えば、原産地を明示してコーヒー豆の挽き売りをしているお店に行くと、ブラジル、コロンビア、グァテマラ、ホンジュラス、コスタリカ、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラなど、たくさんの中南米諸国の名前を目にします。

 これはまさに「コロンブス交換」の名残と言えます。

 

ティータイム銘柄は、「三角貿易」の主役

 欧州列強が大西洋を行き交う頻度が高くなってくるにつれて、自国の発展、そして周辺国との競争に勝つために、海外に植民地を作る動きが強まりました。

「自国の発展」の一面として目立つ、急速に進む自国民の食文化の変化(具体的には「お菓子とコーヒー」を所望する人々が急増したこと)への対応として、欧州列強は「植民地で調達し、それを自国へ運ぶ」という方策を取るようになりました。

こうして「アフリカで奴隷を調達→中南米で自らが持ち込んだコーヒー、砂糖、もともと現地にあったカカオを栽培するために働かせる→そしてそのコーヒー、砂糖、カカオをヨーロッパに運び消費する」という流れが確立しました。

 この流れは、欧州、アフリカ、中南米という三つの地域を行き来することから「三角貿易」と呼ばれました。

図:三角貿易のイメージ図

出所:筆者作成

 カカオについては、原産国である中南米で、コーヒー、砂糖と同様に現地の人やアフリカからの奴隷を使って盛んに生産されましたが、やがて、現地の状況や自国の財政事情の変化、生産効率などを理由に主要な生産地がアフリカに移りました。

 主要生産国が西アフリカ(今のコートジボワールやガーナ)に移ってからは、生産されたカカオは直接ヨーロッパに運ばれるようになりました。

 

中世以降のヨーロッパ人と現代人の共通点は「甘いお菓子とコーヒー」への執着心

 今になって考えれば、「コロンブス交換」は、生態系の変化を全く無視した行為だと言えます。

 鉄やキリスト教が新大陸に渡ったことは、現代のアメリカ引いては現代の世界にとって総じて言えばプラスだったと考えられます。

 しかし、プラス面があった一方、マイナス面もありました。生態系が、コロンブス交換が起きる前と後で大きく様変わりしたことは容易に想像できます。コロンブス交換が起きたことで絶滅した種もあったと考えられます。

 また、病気が行き来したこともマイナス面と考えることができます。インフルエンザや天然痘が新大陸に渡り、梅毒が旧大陸に渡りました。

 コロンブス交換が治療薬開発のきっかけとなったと考えれば、貢献とも言えますが、当時の現場ではこれらの病気により多数の犠牲者が出て人口が急減した地域があったと言われています。

 なぜそこまでして、欧州列強は「コロンブス交換」「三角貿易」を推し進めたのでしょうか。

 その要因に、欧州列強の貴族や国民の、甘いお菓子やコーヒーへの執着心があったのではないか(一因ではなく主因)と筆者は想像しています。

 

世界の人口は減少?現代人はティータイムをやめられるか?

 冒頭のとおり、甘いお菓子とコーヒーは現在社会の必需品だと筆者は考えています。

 生態系を壊す行為によって生産地が決まり、奴隷制度によって拡大したという負の歴史を知っていても知らなくても、わたしたちは今後もティータイム銘柄を消費し続ける(お菓子を食べなくなったり、コーヒーを飲まなくなったりすることはない)と思います。

 他方、世界の人口は、超長期的な視点で見れば「幾何級数的に」増加しており、今後も増加傾向は続くとみられています。

図:世界の人口の推移 

単位:億人
出所:国連のデータより筆者作成

 国連が公表したデータによれば、世界の人口は2015年時点でおよそ73億8,300万9,000人ですが、2030年までに86億人、2050年までに98億人、2100年までに112億人に達するとしています。

 人は歴史的に「甘いお菓子とコーヒーを好む」という点と、「世界の人口が長期増加傾向にある」という点を掛け合わせて考えれば、目先数十年は、ティータイム銘柄の世界的な消費量は増加し続けると考えられます。

 

「海外ETN」ならコーヒー、カカオ、砂糖などへの長期投資が可能

 人の心と数(甘いお菓子とコーヒーへの執着心と人口増加)は、コーヒー、カカオ、砂糖の「長期的な」価格の下支えの要因になると考えられます。

 もちろん相場なので投機筋の流出入による短期的な、あるいは大豊作などによる数年単位の価格の下落はあると思います。

 ただ、そのような時間軸の下落はあったにせよ、人の心と数に裏打ちされて長期的には消費の増加は継続し、価格はその流れに乗って強含みを演じるのではないかと考えています。
現在、日本国内でティータイム銘柄に「比較的少額」で、かつ「長期投資ができる」機会は多くはないと思います。

 楽天証券では「海外ETN取引」において、以下の銘柄を取り揃えております。長期的な視点で価格の推移をご注目ください(コロンブス交換で新大陸にもたらされ生産が盛んになった綿花、複数の農産品銘柄を指数化した銘柄も含む)。

図:楽天証券で取り扱っている海外ETN銘柄の一例

対象  銘柄名 取引所 経費率
コーヒー iPath シリーズB ブルームバーグ・コーヒー・サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

対象指数であるBloomberg Coffee Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、コーヒー先物価格を対象としており、ETNを通してコーヒーへの投資を可能としている

対象  銘柄名 取引所 経費率
カカオ iPathブルームバーグ・カカオ・サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.7%

対象指数であるBloomberg Sugar Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、砂糖先物価格を対象としており、ETNを通して砂糖への投資を可能としている

対象 銘柄名 取引所 経費率
砂糖 iPath シリーズB ブルームバーグ砂糖サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

対象指数であるBloomberg Sugar Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、砂糖先物価格を対象としており、ETNを通して砂糖への投資を可能としている

対象 銘柄名 取引所 経費率
綿花 iPath シリーズB ブルームバーグ・コットン・サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

対象指数であるBloomberg Cotton Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、コットン先物価格を対象としており、ETNを通してコットンへの投資を可能としている

対象 銘柄名 取引所 経費率
農産物指数 iPath シリーズB ブルームバーグ農産物サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

対象指数であるBloomberg Agriculture Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、コモディティの中のコーン、大豆、砂糖、小麦、大豆油、大豆粕、コーヒー、綿の先物価格で構成されており、ETNを通して農作物への投資をすることができる。構成は、コーン24%、大豆23%、小麦13%、砂糖12%、大豆油10%、コーヒー9%、コットン5%となっている