相場の歪みを利用して収益の獲得を目指す

理論的にもコスト面でもインデックス運用の効率性が実証されているにも関わらず、アクティブ運用という手法が存在するのはなぜでしょうか。それは、現実の市場が理論通りにはいかないからです。

「100年に1度の危機」と言われたリーマン・ショックや欧州債務問題など、2000年代後半以降、日本を含む世界の市場は大きな浮き沈みに翻弄されてきました。アクティブ運用は、こうした相場の歪みを利用して収益の獲得を目指すところに最大の特徴があります。例えば、欧州の債務問題が深刻化した2011年以降、東証株価指数(TOPIX)などの市場インデックスが下落した中でも、内需関連企業を中心に好調を維持した銘柄は存在しました。アクティブ型の投資信託は、時間とコストをかけて有望な銘柄を発掘し、定期的に入れ替えを行うことで収益の獲得を目指します。

アクティブとインデックスの良い部分を取り入れたファンドも

インデックス連動型の特徴として、銘柄選定を必要としない分、インデックスと運命を共にする必要があることは、前回の本コラムでも言及した通りです。こうした理由から、完全なインデックス連動型ではなく、特定のインデックスを参考指数として掲げたインデックスとアクティブの中間のようなファンドも数多く運用されています。例えば、国際投信投資顧問が運用する「グロソブ」こと「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、先進国債券の代表的なインデックスである「シティグループ世界国債インデックス」を参考に、組み入れ対象地域や通貨の割合を調整しています。

また最近は、シンプル且つ低コストのインデックスファンドを束ねて、複数資産に分散投資する「インデックス型バランスファンド」も人気です。さらに、JPX日経インデックス400のように、財務指標等の定量的な指標に基づいて組入れ対象となる企業を集めた「スマートベータ指数」も、アクティブ運用とインデックス(パッシブ)運用の中間に位置する運用法として注目されています。

※インデックス型バランスファンドについて詳しくはこちら

国内公募投資信託で採用されている主なインデックス
投資対象資産・地域 インデックス名 特徴
株式 国内 東証株価指数(TOPIX) 東証第一部に上場する全ての企業により構成。基準日である1968年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化している。
日経平均株価(日経225) 東証第一部に上場する銘柄の中でも、取引が活発で流動性の高い225銘柄により構成。原則として年1回、10月に銘柄の見直しが行われる。
JPX日経インデックス400(JPX日経400) 東証上場銘柄の中から、資本効率性を表すROEや営業利益などの定量的な指標に基づいて投資魅力のある企業を選定する。原則として年1回、8月に銘柄の見直しが行われる。
海外 MSCI KOKUSAIインデックス 日本を除く先進国22カ国により構成。国別構成比率では米国が最も高い。
MSCI エマージング・マーケット・インデックス BRICs諸国を含む新興国23カ国により構成。足元では中国、韓国、台湾のアジア地域の構成比率が高い。
債券 国内 NOMURA-BPI 総合指数 国内発行の公募利付債券流通市場全体の動向を的確に捉えるために開発された。
海外 シティグループ世界国債インデックス 日本を除く先進国22カ国により構成。自国通貨建ての国債のみを対象としている。
JPモルガンGBI-EMグローバル・ダイバーシファイド 新興国のうち資本規制を敷く国を除外した16カ国により構成。現地通貨建て国債のみを対象としている。
リート
(不動産)
国内 東証REIT指数 東京証券取引所に上場する国内リート全銘柄が対象。2003年3月31日を1,000ポイントとして算出。
海外 S&P先進国REIT指数(除く日本) 日本を除く先進15カ国により構成。時価総額に基づいて算出され、国別構成比では米国が5割前後を占める。
※各インデックス算出会社の資料を基に楽天証券経済研究所作成。2014年12月17日現在。