17年本決算は3%増益、不良債権指標が全般に改善

現地コード 銘柄名
01398

中国工商銀行股フン有限公司

(インダストリアル・アンド・コマーシャル・バンク)

株価 情報種類
 6.81HKD
(3/26現在)
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 中国工商銀行の2017年12月本決算は、純利益が前年比2.8%増の2,860億元と、BOCIの予想通りの水準だった。同業銘柄と比べて低成長にとどまったのは、信用コストが相対的に大きく膨らんだため。BOCIは利益見通しを小幅に上方修正した上で、目標株価を据え置き、株価の先行きに対する従来の中立見通しを強気に引き上げている。

 17年10~12月期には純金利スプレッド(NIS)と純金利マージン(NIM)がそれぞれ2.10%、2.22%に達し、前年同期比それぞれ8bp(ベーシスポイント、0.08%に相当)、6bp改善した。要求払預金の比重拡大(前年同期を1ポイント上回る51.4%)を受けた預金コストの軽減が背景。貸出収益率がわずか同2bpの低下に踏みとどまる中、預金コスト率が11bp低減したことが寄与した。BOCIは10~12月期のNIMが前期比5bp 高の2.19%に達したと推定し、18年1~3月期にはさらに上向くとみている。

 一方、17年10~12月期の不良債権比率は前期を1bp下回る1.55%に改善し、不良債権発生率(NPL formation ratio)は0.62%と、低水準で横ばいに推移した。17年通期に新たに発生した不良債権は2,019億元と、前年比で420億元縮小した。また、17年期末の延滞債権比率は2.01%と、上期末から22bp低下。要注意先債権比率も3.95%と、同5bp低減している。BOCIは不良債権全体に占める3カ月超の延滞債権の割合が期末に80.9%と、上期末を9.5ポイント下回ったことに注目。小企業・零細企業向け融資の比重拡大を受け、不良債権分類に関してより保守的なスタンスを取ったことが伺えるとしている。また、10~12月の不良債権引当率は前期を6ポイント上回る154%だった。

 10~12月期の資産、負債、貸出、預金はそれぞれ前期比で1.3%増、1.2%増、1.0%増、0.5%減。経営陣は18年の新規貸し付けについて、前年比7.0~7.7%増の1兆~1兆1,000億元を見込んでおり(17年実績は前年比9.0%増)、この数字はほぼBOCIの予想と同水準となる。

 17年通期の資産管理商品(WMP)の受託資産残高は前年比11.4%増の3兆元に達し、業界平均を大きく上回る拡大ペースを示した。その一方で、役務取引等利益は同3.7%減。主に資産管理、投資銀行業務の手数料収入の低迷が響いた。BOCIは主に、商品価格の引き下げやVAT(増値税)改革が影響したとみている。

 同行H株の現在株価は18年予想PBR(株価純資産倍率)で0.86倍。BOCIは年初来値上がり率が8.3%と、4大国有商業銀行の中で最低だったことに言及し、目標株価を据え置きながらも、株価の先行きに対する見方を強気に引き上げた。レーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因としては、中国経済の急減速の可能性を挙げている。