相場が乱れる「魔の3月」のはずが…
3月は日本の企業の年度末決算が多いため、毎年3月下旬ごろから相場は動きやすい傾向があります。しかし、この3月は平穏でした。
3月期末に向けて相場が動きやすいというのは、東京市場の特殊要因です。
たとえば、東京市場の為替売買の主要プレーヤーである銀行は、固まった決算がブレないよう、売買活動が控えめになります。一方で銀行を含め決算を控えた企業は、期末絡みの特殊玉や決算絡みの調整売買などの特殊要因が出ることがときどきあります。その結果、売買が控えられた低調なマーケットの中では、これらによって相場が踊らされる地合いとなりがちです。
3月の中でも特に31日は要注意日で、さらに午前10時前に銀行が公表する公示レート発表前後は要注意時間帯です。
以前、ある国内投資家が公示直前に大量の売買を行ったことにより、相場が異常な動きとなり、仲介した複数の銀行が決算日にもかかわらず被害を受けたということがあります。これらを経験したディーラーたちにとっては、3月下旬ごろから期末日は、相場が動かなくても警戒心をもってマーケットに臨んでいると思われます。
期初4月のドル/円の動きはどうでしょうか。新年度に入ると機関投資家の外債投資が始まり、ドル買い需要が出やすくドル高になるとの見方もありますが、過去10年間の4月のドル/円の値動きは、円高、円安の傾向は特にありません。機関投資家も4月に入って、いきなり投資を活発にすることはなさそうです。
4月は大きな人事異動があるため、陣容と投資方針が固まるのは連休明けという話も耳にします。
3月の年度末はドル買い需要が多いとよく言われる話と同じように、4月もドル買い需要が多いということは一概には言えないようです。
朝鮮半島の地政学リスク後退が円安要因?
今年3月の月末、期末に向けたドル/円は、緩やかなドル高、円安の動きとなりましたが、マーケットの地合いとしては静かでした。緩やかな円安の動きは、朝鮮半島の南北首脳会談、中朝首脳会談、5月の米朝首脳会談によって朝鮮半島の地政学リスクが後退したことが大きく影響したようです。
しかし、ドル/円は反発したとはいえ、上値の重たさを感じさせる期末越えでした。朝鮮半島の地政学リスクが後退したとはいえ、北朝鮮の過去の行動から懐疑的との見方は米政権内部に根強く残っています。強硬派に変質した米政権がどのような姿勢で臨むかによって、リスクはまた引き戻されるかもしれません。マーケットもこのあたりの事情を警戒しているのでしょうか。
朝鮮半島を取り巻く今後の政治日程は以下の通りです。米政権の強硬派(クドロー国家経済会議委員長、ポンペイオ国務長官、ボルトン大統領補佐官)の発言などにも注目し、その動向を注視していく必要があります。
今後の政治日程予定
貿易摩擦拡大は日本に飛び火するか?
もうひとつ、ドル/円の上値を重くしている要因があります。米中貿易摩擦の拡大懸念です。
中国財務省は4月2日から対米報復措置として、米国からの一部の輸入品に高関税を科す措置を実施すると発表しました(果物など120項目に15%、豚肉など8項目に25%の関税を上乗せ)。
一方、米国も4月6日までにはUSTR(通商代表部)が通商法301条に基づいて中国製品の制裁関税品目の原案を公表する予定となっています。この米中貿易摩擦拡大懸念が燻っている状況が相場の上値を重くしているようです。
貿易摩擦の拡大は日本に飛び火してくるかもしれません。すでに日本は鉄鋼とアルミニウムの関税引き上げ対象国となっています。この措置を踏まえて安倍晋三首相は今月訪米し、4月17~18日に日米首脳会談を行う予定です。それまではドル/円は上値の重たさが続く可能性があります。なぜなら、日米首脳会談でトランプ大統領が日米貿易問題について強硬姿勢を示す可能性もあるからです。
そうなれば一段の円高の可能性があります。米中間選挙を控えているトランプ大統領のなり振り構わない姿勢には警戒する必要がありそうです。
日銀短観の想定為替レートは意外な円安水準
4月2日に発表された日銀短観の2018年度想定為替レートは109.66円と、前回2017年度下期レートと同じ水準だったのは意外でした。2018年度の上期(109.63円)、下期(109.68円)もほぼ同じ水準で、現在の106円台半ばとは3円の円安水準となっています。
朝鮮半島のリスクは5月には後退し、貿易摩擦も日本には影響がなく、日米首脳会談で摩擦は解消されるとの楽観的な見方からドル/円の中心レンジ(2017年後半108~113円)は変わらないとみているのでしょうか。
中心レンジは105~110円に移った可能性もあり、場合によっては103~108円に移行する可能性もあるとの見方を、まだ排除する局面ではないように思われますが。
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