年内あと2回の緩やかな米利上げを予想、香港相場は底入れか

 米連邦公開市場委員会(FOMC)は大方の予想通り、3月の定例会合でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25%引き上げ、1.5~1.75%に決定した。FOMCの声明では、労働市場は引き続き力強さを増しており、経済活動は緩やかな拡大傾向にある。一方、家計支出や企業の設備投資は、特に力強かった2017年10~12月期からやや減速。物価上昇率は引き続き前年同月比2%を下回った。市場が織り込むインフレ率は上向いているとはいえ、依然低水準にあるとしている。FOMCはまた、GDP成長率や失業率、物価上昇率といった一部指標の予測値を改善方向に修正。うちGDP成長率については18年、19年の見通しを2.7%(修正前2.5%)、2.4%(同2.1%)に上方修正した。

 FOMCが示した18年末のFF金利予想の中央値は2.1%と、前回12月から変わらなかったが、国内経済に対する強気見通しを背景に、19年、20年の同予想値はそれぞれ2.9%(修正前2.7%)、3.4%(同3.1%)に引き上げられた。18年末のFF金利予想を見る限り、年内あと2回の利上げが実施される見通し。FOMCの声明とパウエルFRB議長のスピーチを受け、米短期金利先物市場が織り込む6月の利上げ確率は約80%まで上昇した。年内にさらに3回の利上げが行われる可能性もくすぶるが、BOCIは2回が妥当との見方。米国経済が前回2度の利上げサイクル当時ほど強くはなく、急ピッチの利上げに耐えられないとして、パウエル議長が現行の政策スタンスを維持するとみる。

 一方、BOCIは香港株式市場にとって、米利上げは必ずしも相場圧迫要因とは言えないと指摘している。利上げがあくまで緩やかなペースとなる見通しや、米国経済の力強さ、それに伴う世界市場への好影響をその理由に挙げた。過去の事例を見ても、米利上げの背景には自国経済に対する強気見通しがあり、米国経済の好調は中国経済や企業業績にも波及する。米国の過去2回の利上げサイクル当時を振り返ると、香港の主要株価指標ハンセン指数はそれぞれ32%(04年6月30日~06年6月30日)、12%(1999年6月30日~2000年5月16日)の幅で上昇。04~06年にはH株指数も58.9%値上がりした。ただ、過去2回のケースでは、米利上げは資産バブルの崩壊や景気減速を招く結果となり、利上げサイクルの収束が逆に、香港市場の下落を招いた経緯があった。

 香港株式市場は投資家のリスクオン姿勢を背景に18年1月に急速に値上がりしたが、2月に入ってからは米株急落を受けて強い売り圧力に直面した。ただ、BOCIは香港市場のバリュエーションが今もヒストリカル平均を下回ることや、空売り比率が過去10年の最高水準まで上昇していることを指摘し、香港市場がすでにほぼ底入れした、あるいはまもなく底入れするとの見方(ハンセン指数の直近安値は2月12日に付けた29,460ポイント)。中期的には中国経済の成長や企業業績の拡大、さらに本土からの旺盛な対香港株投資が続くと予想。こうした要因が香港相場の追い風になるとみている。