一昔前はそれほど注目を集めていなかったROE。でも今は、ROEが高いかどうかで、株価の上昇のスピードも大きく違ってきています。なぜROEが高いほうが株価は上昇しやすいのか、その理由を考えてみましょう。

 

相変わらずの二極化相場が続く日本株

 日本株は、今年2月に入り大きく下落。日経平均株価は高値から3,000円ほど下がり、現在も高値からの下落幅の3分の1ほどしか戻せていません。
 個別銘柄の多くも同様で、まだ株価の本格的な反発には至っていないものが多数を占めています。

 でも、その一方で株価が上昇を続けている銘柄も少なくありません。すでに2月の急落前につけた株価を軽々超えて、高値更新している銘柄がいくつも存在するのです。
 そうした銘柄の多くは、アベノミクス相場がスタートした2012年末から現在まで、月足チャートで見るときれいな右肩上がりの上昇を続けています。

 このように、強い銘柄の株価はどんどん上昇する一方、弱い銘柄の株価はPER(株価収益率)など各種株価指標が割安であってもほとんど上昇しない、という二極化相場が何年も継続しているのが日本株の現状です。

 

高値更新をしている銘柄に共通したある「特徴」とは?

 筆者は日々400銘柄ほどの個別銘柄の株価チャートをウォッチし、その中から実際に投資する銘柄を選んでいます。
 今年2月の急落後も、この400銘柄ほどの中のうち上昇トレンドにいち早く転換した銘柄から順々に買い直しをしていきました。

 その結果、2月の急落後に買った銘柄の多くが順調に上昇し、高値更新をしたものも次々と出現しました。

 実は、日経平均がまだ以前の高値まで戻せていないにも関わらず、すでに高値更新している個別銘柄には特徴があります。それは、「ROEが高い」ということです。

 

ROEが高いほど株価が上昇しやすくなる

「ROE」は、Return On Equityの頭文字を取ったもので、「アールオーイー」とか「ロエ」と呼ばれます。日本語では「自己資本利益率」という名前です。

 ROEは「当期純利益÷純資産」の計算式により求められ、この数値が高いほど、会社が効率的に利益を得ることができる体質であると判断されます。

 たとえば、純資産が同じ10,000のA社とB社があり、A社は今年2,000の当期純利益を、B社は毎年1,000の当期純利益を上げることができたとしましょう。

 ROEでいえば、A社は2,000÷10,000=20%、B社は1,000÷10,000=10%です。

 A社・B社ともにここから10年間同じ水準のROEを上げ続けるとすると、A社とB社の10年間の利益合計は次のようになります。(当期純利益は配当等に回さず、全すべて純資産の増加となるものとします)
・A社:5万1,918
・B社:1万5,939
 ROEが高いA社のほうがB社に比べてはるかに大きな利益を上げることができるのです。A社とB社のROEの差は2倍ですが、利益合計は3倍超の差になっています。

 また、10年目になると当期純利益はA社10,320に対しB社2,358と4倍以上の差がついています。このように、ROEが高いほうが利益の増えるスピードが速いことがわかります。

 これらの事実から、ROEが高いほど将来期待できる利益の額が大きくなりますし、1年あたりの利益の水準も高くなっていきます。そのため、投資信託のファンドマネージャーなどのプロ投資家から、高ROE銘柄へ高い注目が集まっているのです。
これが、株価が長期的に右肩上がりの上昇を続けている大きな理由です。

 

ROE、PER、PBRの関係からも高ROE銘柄が魅力的な理由がわかる

 ところで、PBR(株価純資産倍率)、PER、ROEの3つの指標には、次のような計算式の関係が成り立ちます。
 PBR=PER×ROE

 なぜこのような計算式が成立するかは拙著「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)112ページ~に詳しく書いてありますのでご覧ください。

 そして、この式を変形すると、次の計算式が成り立ちます。
ROE=PBR÷PER

 たとえば現状、ROEが10%、PBR2倍、PER20倍で上記の計算式が成立している銘柄があるとします。この銘柄のROEが20%に上昇すると、PBRに変化ないとすれば、PERは10倍にまで低下します。

 もし、会社の状況に何も変化がなければ、PERが20倍から10倍にまで低下すれば、株価は割安になるので上昇するはずです。これが、ROEが高いほうが株価は上昇しやすくなるという根拠です。

 最近は、ROEが20%を超える銘柄も珍しくなくなってきました。今まで銘柄選びにROEを使ってこなかった方も、この機会にぜひROEの数値にも注目してみてください。

 ただし、ROEを投資判断に用いるにはいくつか注意すべき点もあります。それについては来週のコラムにてお話ししたいと思います。