執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 20日、安川電機が業績予想を大幅に上方修正。中国でロボット・FA(工場自動化)機器の投資が拡大している恩恵を受ける。日本の設備投資関連全体に業績好調の期待が広がる。
  • 日経平均は2万円前後で膠着。業績拡大が強材料。政治不安と円高が上値抑える。

安川電機(6506)が業績見通しを大幅に上方修正

先週20日(木)、安川電機が、第1四半期(2017年4-6月期)の決算を発表しました。以下の通り、絶好調と言える内容でした。

安川電機の2017年4-6月期の連結売上高と営業利益

(単位:億円)
  4-6月実績 前年同期比
売上高 1,075 +19%
営業利益 132 +142%

出所:同社決算短信

4-6月期決算の発表と同時に、通期(2018年2月期)【注1】の業績(会社予想)を、以下の通り、大幅に上方修正しました。

【注1】安川電機は、従来3月期(20日締め)決算でしたが、今期から、2月期決算に変更します。したがって、2018年2月期については、1年間よりも20日分少ない変則決算となります。

安川電機の2018年2月期業績予想修正と、同社2019年2月期目標

(単位:億円)
  2017年
3月期
2018年
2月期
2018年
2月期
2019年
2月期
  実績 会社予想
前回
会社予想
今回
会社目標
売上高 3,948 4,140 4,290 4,500
営業利益 304 370 455 450

出所:同社決算短信および中期経営計画

第1四半期が終了したばかりで、通期の業績予想を大幅に修正するのは異例のことです。同社の業況が急激に改善していることが伺えます。今回、今期の営業利益見通しを、455億円まで引き上げましたが、これは、中期経営計画で、来期の目標としている450億円を上回る水準です。中期経営計画の目標も、いずれ引き上げることになると思います。
なお、今回、安川電機が見直したのは、上半期(2017年4-9月期)業績予想だけです。下半期(2017年10月-2018年2月期)の予想は、今回、見直していません。業績好調が続き、下半期の業績見通しが引き上げられれば、通期(2018年2月期)の予想を、再度、引き上げることになると、予想されます。
安川電機は、設備投資関連、かつ、中国関連【注2】であり、きわめて注目度の高い銘柄です。

【注2】

◆安川電機の事業セグメント別売上高構成比(2017年4-6月期):モーションコントロール(ACサーボモーター・コントローラ・インバータなど)50%・ロボット33%・システムエンジニアリング12%、他4%
◆安川電機の仕向先別売上高構成比(2017年4-6月期):国内31%・中国25%・中国を除くアジア13%・米州19%・欧州12%

中国では、人件費の上昇を受けて省力化投資が盛り上がっています。特に、産業用ロボットやFA(工場自動化)機器への投資が増加しています。中国による「ロボット爆買い」が始まったとも言われています。安川電機はその恩恵を受け、中国でACサーボモーターやロボットの売上が増えています。

設備投資関連株の上昇目立つ

好調な決算発表を受け、安川電機の株価は、21日(金)に10%上昇しました。同社決算を受け、産業用ロボット・設備投資関連株に業績好調の期待が広がり、21日は、以下の通り、設備投資・ロボット関連株の値上がり率が高くなりました。

21日の株価上昇率が高かったロボット・設備投資関連銘柄

(株価単位:円)
コード 銘柄名 業種 主な製品 21日株価 前日比
6516 山洋電気 電機 サーボシステム 1,244 +7.8%
6481 THK 電機 工作機械用のリニア軸受 3,495 +4.8%
6101 ツガミ 機械 スマホや自動車向け自動旋盤 877 +4.8%
6503 三菱電機 電機 FA(工場自動化)機器が収益柱 1,720 +4.6%
6104 東芝機械 機械 大型工作機械、成形機など 540 +4.4%
6407 CKD 機械 省力・自動機械 2,047 +4.2%
6143 ソディック 機械 放電加工機で世界トップクラス 1,409 +3.6%
6480 日本トムソン 電機 半導体製造装置用リニア軸受 639 +2.9%
6103 オークマ 機械 工作機械(NC旋盤など) 1,087 +2.7%
6134 富士機械製造 機械 電子部品装着ロボット世界首位 1,834 +2.5%
6954 ファナック 電機 産業用ロボット・NC装置首位 22,665 +2.1%

注:楽天証券経済研究所が作成

 

決算で、足元の業績を確認しないと、投資判断はできませんが、安川電機同様に、業績好調で、株価が上昇する候補銘柄がこの表の中に含まれていると思います。

日経平均は膠着

強材料と弱材料が拮抗して、日経平均は2万円前後で、やや膠着しています。景気・企業業績が好調であることが強材料となっていますが、トランプ大統領、安倍政権ともに支持率が急低下し、日米で政治不安が広がっていることが不安材料となっています。
また、米国の長期金利が上がらないことを受けて、じりじりと円高が進んでいることも、日経平均の上値を抑える要因となっています。
今週のイベントとして、25・26日のFOMC(米金融政策決定会合)が注目されます。政策変更は予想されていませんが、FOMC議事録で政策の方向性をどう示すか、それによって米長期金利、ドル円為替レートがどう動くかが注目されています。