世界新エネ車市場で中国勢が存在感、向こう数年で勢力図変化か

 世界の新エネルギー車販売台数は2017年に初めて100万台の大台を突破し、前年比58%増の120万台に達した。中でも新エネ車大国・中国では同110%増の57万8,000台を記録し、世界全体の実に45%強を占めた。現時点ではまだ、世界の自動車販売に占める新エネ車の割合は1%程度に過ぎないが(中国では2.3%)、BOCIは中国政府の普及促進策や大手メーカーの開発加速などから、25年にはこの割合が25%に上向くと予想。今後も新エネ車開発が自動車市場の焦点であり続けるとみている。こうした状況下で、BOCIは新エネ車に関するリポートの発行を決定。まずは第1回目として、車両タイプ別、メーカー別に世界市場の現状と見通しを報告した。

 世界的に見ると、技術的な共通点の多さから、自動車メーカーの多くが電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド(PHEV)を同時に手掛けるが、例外は米テスラと北京新能源汽車で、両社ともにEVに特化している。トヨタ自動車は長く、ハイブリッド分野を専門としてきたが、EVに照準を合わせる形で新エネルギー車戦略を見直した。BOCIはエネルギー密度やコスト面から見たバッテリー技術の先進性を理由に、今後もEVが新エネ車市場を席巻し続けるとみている(17年の新エネ車販売台数の約70%)。ただ、中国市場では短期的に、PHEVのシェア(17年に20%以下)が拡大すると予想。理由として、国内の関連政策とグローバルメーカーによるニューモデル投入見通しを挙げた。

 世界の新エネ車販売台数ランキングをメーカー別に見ると、上位3社はルノー・日産、BYD(01211)、北汽集団で、中国企業はトップ10に4社ランクイン。一方、ブランド別のトップスリーはBYD、北汽集団、米テスラで、トップ20までの38%を中国勢が占めた。中国メーカーにとっては、海外勢が市場開拓で出遅れている巨大な母国市場の存在が追い風。BOCIは中国が今後も世界最大の新エネ車市場であり続けるとみている。ただ、海外メーカーが中国向けの独自モデルの投入を加速する見通しに言及し、国内市場においても海外勢との競争が厳しさを増すと予想。向こう数年で、世界市場の勢力図が変わる可能性を指摘している。まずは完成車メーカーより前倒しに、電池をはじめとする部品分野で業界図が変わるとみている。

 BOCIは中国市場について、低価格の国産ブランド市場が厳しい状況に直面するとみている。航続距離の短い車種に対する補助金削減が理由であり、北京新能源汽車など小型車を主力とするメーカーに打撃となる可能性が高い。一方、BYD、吉利汽車(00175)、上海汽車集団(600104)などは、ハイエンドEV/PHEVをはじめとする高価格帯市場を志向しており、この先の競争局面においてより有利に戦える可能性が高い。また、バッテリー部門では、三元系正極材を用いたリチウム電池を楽観。高質電池に対する旺盛な需要を見込み、寧徳時代新能源科技(CATL)などを有望視している。