今回の格言

「もうはまだなり
まだはもうなり」

 

どんな格言?

慎重すぎ?期待しすぎ? 
「思い込み」と相場の行き違い

相場格言には、「投資家の売買タイミング」と「相場」の行き違いを表現するものが多く語り継がれている。

たとえば、下落相場では、「もうボトム(底値)だ」と思うときは「まだ下がる」かもしれず、「まだ下がるのでは」と思えるときは「もうボトム(底値)」かもしれない――。確かに、慎重さは必要だが、上昇に備える気持ちも必要だ。とはいえ、相場は森羅万象で動く。一個人の気持ちなどおかまいなしであり、そこに行き違いが生まれる。

同様に、上昇相場で「もうピーク(高値)だ」と思えるときは「まだ上値がある」かもしれず、反対に「まだ上がるのではないか」と思えるときは「ピーク(高値)」かもしれないのだ。

「もうはまだなり」と「まだはもうなり」はまさに表裏一体。相場という生き物に対峙するにあたっては、単一のモノサシ(指標)による判断や独善的な思い込みが当るとは限らないし、一度当たっても、次回も同様の判断で当る保証はない。

投資をする上では、冷静かつ謙虚な姿勢が大切、ということを示す格言とも言えるだろう。

 

どう投資に生かす?

(参考例)2016年前半の日本株相場と
2016年11月以降の米国株相場

たとえば、2016年前半の日本株は軟調だった。中国危機、原油相場下落、円高などで日経平均は6月24日の14,952円まで一時約21%下落。この場面で「もうボトム」と確信し、底値を買えた投資家は少なかったと言われている。

逆に、11月8日の米大統領選挙以降のいわゆる「トランプ相場」では、米ダウ平均が30回以上も最高値を更新。この過程で「もうピークだ」と判断して売りに出て機会を逸した投資家も多くいる。

「トランプ相場はすでに賞味期限」と判断するのは簡単。だからと言ってショート(空売り)を仕掛けるのにもリスクがある。「もうはまだなり」で相場上昇が続く(空売りでは損失が出る)可能性もあるからだ。

「投資の神様」と呼ばれているウォーレン・バフェット氏は今年の2月27日、CNBCとのインタビューで「米国株はバブルではない。金利水準と比較すれば株式はまだ割安」との見解を示した。

仮に株価がいったん調整しても、再び上昇トレンドを取り戻せば、「もうはまだだった」と思える可能性もある。つまり、相場局面をどこで切り取るかによって、「もう」にもなるし、「まだ」にもなるということ。相場に絶対はない。この点、肝に銘じよう。

 

今回のお作法

相場はつづくよ、どこまでも。

そこに「もう」も「まだ」もないし「絶対」などありえない。