2017年の安値が最重要ポイント
先週2月19~23日のドル/円は、株の反発と米利上げ期待から反転し、107.90円まで戻しました。円高は反転し、このまま円安に戻るのでしょうか。あるいは円安はどこまで戻るのでしょうか。
ドル/円がどこまで戻るのかを考えるとき、その要因となる金利や株の動き、金融当局の政策の方向性などを考慮する必要があります。ただ、他の目安として、円高や円安の局面で、ブレイクして加速がついたポイントや値幅だけを参考に、テクニカル分析することがあります。このブレイクして加速したポイントを「ブレイクポイント」と言います。
今回のように短期間で値動きが上下するときは、このようなテクニカルポイントを重視して相場を予測する方法があります。
今回の円高局面では、昨年2017年の安値107.32円が最重要ポイントだったわけですが、このポイントを下に(円高に)抜けると加速がつき、105.55円までいきました。そして、105.55円の円高から円安に転じたときに、この107.32円を抜けるかどうかが、最初の注目ポイントになりました。
つまり、上から下に抜けたときのブレイクポイントが、下から上に抜ける逆のパターンのときにも重要なブレイクポイントになるわけです。
今回もやはり、この107.32円が意識されました。このポイントは抜け切れないと見る人たち(売りに回る人たち)と、抜ければ円安が加速すると見る人たち(買い上げようとする人たち)とがせめぎ合い、107.30円近辺でしばらくもみ合いました。しかし、上方にブレイクすると一気に108円を目指して上昇し、107.90円まで円安となりました。
次の相場の方向性を見極める
次のポイントは、5円刻みの円高の半値が目安です。今回、1月からの円高局面では、5円刻みで2つの波がありました。113円台半ばから108円台半ばの第1波の約5円。そして108円台半ばから110円台半ばに戻されたあとに始まった円高第2波です。110円台半ばから105円台半ばまでの5円幅です。そしてこの5円幅の半値2円50銭が目安となる考え方です。
今回の場合、5円幅の半値2.50円を105.55円に足すと約108円になります。つまり、107.32円を抜けると次のポイントは、108円が目安となります。
なぜ、半値なのかと言えば、「半値戻しは全値戻し」という相場格言が示すように、半値まで戻すと勢いが持続する可能性があり、全部戻してしまうという見方です。つまり、108円を完全に抜けると、第2波のスタート地点である110円台後半まで戻してしまうという考え方です。
今回、107.32円を最初に抜けた直後は勢いがあり、一気に107.90円まで上昇しましたが、108円台には届きませんでした。108円近辺ではいまだ売りたい人が多いということがわかります。しかも、売り圧力は強く、一度上方にブレイクした107.32円を下方にブレイクしてしまい、再び106円台まで売り込まれてしまいました。
その後、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル新議長の議会証言によって、ややタカ派的ととらえられ、再び107.32円を上抜け、107.68円までドル高となりましたが、結局、磁石に吸い付けられるように107.32円近辺で終わっています。これでは107.32円を完全に抜け切ったと言えません。今回も半値は強いポイントだったと言えます。
注目ポイントを5円幅で考える
今後、注目しておくポイントとしては、このまま107.32円を抜け切らず、上値の重たい展開が続くか、再び108円を目指すかどうかです。上値が重たく円高が進行した場合は、今回の安値105.55円に再び顔を合わせるかどうかに注目です。そして、もし、下にブレイクすれば、第3波の可能性があり、5円幅で考えると103円近辺ということになりそうです。戻り高値107.90円から5円の円高水準ということになります。
逆に、再び107.32円を上方に上抜けた場合は、やはり108円近辺が再び注目ポイントとなりそうです。再び、売り圧力で押し戻されるのか、あるいは、上方にブレイクして、全値戻しの110円台半ばまで上昇するのかどうかに注目です。110円台半ばの前に、第1波の円高の着地点となった108円台半ばも注目されそうです。
FRBの利上げは正当化されており(現在の経済状況で利上げすることが政策的に正しいという意)、段階的に利上げすると27日、パウエル新議長も議会で証言しました。そして、今回の株式市場の乱高下が、政策には影響しないことも示しました。
それでもマーケットは懐疑的に動くものです。利上げペースが早まるのか、物価動向をにらみながら慎重になるのかが今後も金融・為替・株式市場の最重要注目事項になるのは間違いありません。そのペースによって、株の反発度合いの強弱や為替市場ではドルの強弱が起こりますが、そのときでも、一本調子に円高や円安が起こるということはありません。
だからこそ、売買が活発になることによって、値動きが加速したり、抑制されたりするテクニカルポイントを常に頭の中に入れておき、相場を予測することが大切です。
企業の想定為替レートにも注目
さらにドル/円の場合、テクニカルポイントとなる為替水準だけでなく、もう1つ留意しておく為替水準があります。それは、企業の想定為替レートです。
たとえば、2017年12月に公表された日銀短観の2017年度下期想定為替レートは109.66円となっています。現在のドル/円レートと比べると3円近く円高であるため、このまま同じ水準が続けば、輸出企業の決算が下方修正される可能性があります。したがって、3月末に向けて決算を意識した実需の売りが強まることが予想されます。その目安として109.66円を頭に入れておく必要があるのです。
つまり、109.66円近辺ではドル売りが強まることも予想され、もし、企業がその水準に戻らないと見切った場合は、109.66円以下でも実需の売りが出てくることが予想されます。
このように、107.32円を挟んで、円安方向では107.90円、108円台半ば、109.66円、110円台半ばのポイントを注目し、円高方向では、105.55円、103円近辺、100円を注目ポイントとして相場シナリオを考えておく必要があります。
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