〔優待名人・桐谷広人さんスペシャルインタビュー:特集ページ

値上がり益を狙わない。目印は「年初来安値更新」

 株主優待名人・桐谷広人さんは、株式投資初心者に対しては「値上がりを狙わないで優待をいただく投資」をすすめています。でも株価は毎日動くので、多くの投資初心者は株を買うタイミングがわからず迷っているはず。桐谷さんは、どのタイミングで買っているのでしょう。

「私はスーパーでお弁当を買うとき、半額シールが貼られるまで待つタイプなので、株も高値では買わず、安値で買うようにしています。だからといって買いたい銘柄の値動きを常に見ているわけではなく、安値と思われる値段で買い指値を入れておく(買いたい値段を指定して買い注文を出す)のです。私が起きるのは昼ごろですが、2016年のアメリカ大統領選挙でトランプさんが選ばれた日はほとんどの銘柄が大きく下がってしまい、20銘柄も約定(取引が成立)していて驚きました。新規に株主優待を始めた銘柄は、その後値上がりすることが多いので、早めに買っておくといいですね」

 お弁当には半額シールという目安がありますが株価には目安がなく、今が高値なのか安値なのか判断がつかなくて……。

「私の目安は年初来安値(その年につけた最も安い値段)です。現在の株価が年初来安値を更新していれば安値と判断しています。そこで株価チャートを見る時は分足や日足の目先の値動きにとらわれず、週足や月足を見て(2~3年単位の)大きな値動きをチェックして、過去の安値・高値はいくらだったとか、今の株価がどのあたりの水準にあるのかを調べると、割高・割安のイメージがつかめると思います」

配当+優待の利回りが4%以上になったら、GO

 ただし、年初来安値銘柄は候補に入っただけで、すぐに買うわけではありません。ここで桐谷さんがマル秘ノートを見せてくれました。細かい几帳面な文字で、購入候補の銘柄が何ページにもわたって書いてありました。

「この中の銘柄の株価が下がって『配当優待利回り』が4%以上になったときに買い指値をするのです。配当金額や優待品の換算金額が大きく変わることはあまりありませんから、株価の値下がりを待っているのです」

 優待銘柄を買うと通常は年1回か年2回、配当と株主優待品がもらえます。配当がなく株主優待のみという企業もありますが、桐谷さんはどちらも重視しているので、両方がもらえる銘柄をまず探します。

配当利回りの計算式は、

配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価額×100

 100株保有している人は100株当たりの計算になるのでしょうか?

「いいえ、違うんですよ。配当は企業から1株当たり○円と発表されるので、100株保有していても1000株保有していても、配当利回り自体は変りません」

 優待利回りの計算はちょっと複雑になるそうです。

「株主優待は1株ではもらえないことが多く、普通は単元株(売買する時の単位で1単元=100株が多い)を買わなければなりません。それから優待品を金額に換算する必要もありますね。クオカードのように金額がはっきりしているものや割引券であれば換算しやすいのですが、お米や自社製品詰め合わせなどは、お店で販売価格を調べて、自分で値段を決めなければなりません」

 でも、清涼飲料水を自動販売機で買うと140円で、スーパーで買うと99円だったりします。どちらの金額を選べばいいのですか?

「優待利回りは目安なので、どちらでも大丈夫ですよ。」

優待利回りの計算式は、

優待利回り(%)=優待品の換算金額(年間合計)÷優待をもらうのに必要な投資金額×100

 そして配当利回りと優待利回りを足して、配当優待利回りを計算します。

配当優待利回り(%)=配当利回り(%)+優待利回り(%)

 桐谷さんが買い注文を出す目安となる配当優待利回り(%)は4%ですが、株価が上昇してくると、4%を下回ってしまいます。そのときは売って利益を得るのでしょうか。

「そこが難しいところです。アベノミクスの前は株価が上がったり下がったりしていたので、上がったら利食って(売って利益を得て)、次に下がったときに買い戻していました。私だったら上がり続けている間は、配当と優待をいただきながら持ち続けます。長期保有をすると優待内容がアップする長期保有優遇制度がある銘柄も増えていますから、慌てて売る必要はないと思います」

 逆に買ったものの値上がりせず、下がり続けたらどうするのですか。

「バブル崩壊後に保有銘柄が大きく値下がりし、あわてて手じまった(売った)ら、そこが大底だったという苦い教訓から、『損切りはしない』と決めました。その代わり、株式投資は信用取引を使わず、必ず余裕資金を使い、安値を見極めて買っています。以前の私は(預貯金ではほとんど利息が付かないため)現金のほとんどを株に替えて持っていましたが、今は割安株を買えるように、ある程度の現金を持つようにしています。先ほど損切りはしないとお話しましたが、例外があります。もし株式投資初心者の方が株価急上昇している銘柄を買ってしまった場合、天井をつけると、今度は株価がどーんと暴落する可能性が高くなります。どーんと下がり始めたら、早めに損切りをしたほうがいいですね。どこまで下がるかわかりませんから」

 最後に株式投資初心者が20万円の資金で優待株投資を始めるとしたら、どんなふうに買えばいいかと聞きました。

「5万円ずつ4銘柄買いましょう。4種類の優待品が楽しめて、分散投資もできるでしょう?」

 桐谷名人、即答でした。

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