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 円相場は16日、一時1ドル=105円台半ばと、1年3カ月ぶりの高値を付けました。米国の物価上昇や財政収支悪化懸念で米長期金利は2.9%台に上昇する一方、日本の長期金利は0.0%台で小動きであることから、日米金利差が一段と拡大しているにもかかわらず、『円高』が加速しています。日米の株式市場が足元で反発していることも円安材料のはずですが、市場は反応していません。何故『円高』が加速したのでしょうか?

 

【ポイント1】市場は財政収支悪化に注目

「悪い金利上昇」を意識

 市場では最近、米長期金利上昇でもドル安が進行する理由として、米財政収支の悪化を指摘する向きがみられます。米上下両院は2月9日、公共事業費などを積み増すために、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限について、合計3,000億ドル引き上げる予算関連法案を可決しました。上限いっぱいの大幅な歳出増となれば、米財政収支が悪化するため、米長期金利の「悪い金利上昇」が意識され、ドルには下落圧力が生じている模様です。

 

【ポイント2】リスクオンの中でのドル安

リスクオンでも円売りが起こらない

 

 1月下旬から2月初旬にかけて、世界的に株価が調整しましたが、足元では株価が持ち直し、投資家心理を悪化させた「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数も落ち着きを取り戻しています。新興国の通貨、原油などの資源価格も持ち直し始めるなど、市場ではリスクオン(選好)の動きが出ています。リスクオンであれば、安全資産とされる円は本来買われにくいはずですが、円売りの動きがみられません。リスクオンの状況下、米国の財政収支悪化や保護主義を嫌気して、ドル安が進んでいることが『円高』の背景と考えられます。

 

【今後の展開】中期的にはファンダメンタルズを背景に円相場は反転へ

 円相場が、チャート上の節目となっていた2017年の高値(107.32円)を上抜け、投機的な円買いに勢いがついたことも、『円高』加速の要因とみられます。シカゴ国際金融取引所(IMM)のデータによれば、足元で投機筋の円売りポジションが積み上がっており、短期的には一段の『円高』進行の可能性があります。

 ただし、中期的には、日米金利差拡大や堅調な米国経済などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を背景に、円相場は反転すると思われます。日本政府が提示した日銀総裁人事案(黒田総裁の続投とリフレ派副総裁の起用)も、超金融緩和路線の継続で『円高』圧力を和らげると期待されます。