アジア新興国株式は「資産倍増」を達成!オルタナティブも堅調
2011年3月に「資産倍増プロジェクト」が始動以降、「ネット証券専用ファンドシリーズ」として設定された6本のファンド。今回は、第二弾として2011年11月に設定された3ファンドの過去の運用実績を確認してみよう。ギリシャ債務危機の余韻が残るなかスタートした3ファンドは、その後も2013年5月のバーナンキショックや2014年1月の新興国通貨安といった苦難を乗り越え、リターンを積み上げてきたようだ。第二弾では、アジア新興国株式に投資するファンドが1本、市場の変動に左右されず絶対収益を追求するオルタナティブファンドが2本設定され、このうちアジア新興国株式に投資する1本は資産倍増を達成。オルタナティブファンドの2本もそれぞれの運用の特徴が良く表れた運用成果を残してきた。
ファンド名 | 運用会社 | 過去1年 騰落率 |
過去3年 騰落率 |
設定来 騰落率 |
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SMT アジア新興国株式インデックス・オープン | SMT | 28.91% | 82.55% | 102.80% |
ネット証券専用ファンドシリーズ AR国内バリュー株式ファンド | みずほ | 6.00% | 17.94% | 18.28% |
野村グローバル・ロング・ショート | 野村 | -2.88% | 8.61% | 9.52% |
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2015年1月末基準))
SMT アジア新興国株式インデックス・オープン
当ファンドは、アジア地域の新興国の株式に投資し、MSCI エマージング・ マーケット・アジア・インデックス(円換算ベース)に連動する投資成果を目指すインデックスファンドだ。
下の図表は、当ファンドと新興国株式市場全体に投資するインデックスファンドの運用実績を2011年11月末から比較したものだ。当該期間においては、アジア新興国が新興国全体の株式市場を大きく上回っている。
当ファンドの成績が好調だった要因は、当該期間において、新興国全体よりもアジア地域の経済環境が相対的に良好だったためと考えられる。特に直近1年間では、資源価格が下落するなかでブラジルやロシアといった資源輸出国の株価が軟調に推移する一方で、旺盛な消費などに支えられるアジア地域の株価が底堅く推移していることが伺える。また、インドや中国といった特定の国の株式市場が大きく上昇したことも大きな要因といえるだろう。
資源価格の低迷がしばらく続くと予想されるなか、資源価格への感応度が高い国が含まれる新興国全体の株式市場に投資するよりも、資源価格下落の恩恵を受けやすいアジア地域の株式市場に限定するという投資アイデアは検討に値するといえるだろう。
SMT アジア新興国株式インデックス・オープンと
新興国株式インデックスファンドのトータルリターン推移
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2011年11月末を10000として指数化))
①過去1年 リターン (年率) |
②過去3年 リターン (年率) |
③過去1年 標準偏差 (年率) |
④過去3年 標準偏差 (年率) |
過去1年 投資効率 (①÷③) |
過去3年 投資効率 (②÷④) |
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SMT アジア新興国株式インデックス | 28.91% | 22.22% | 9.97% | 16.70% | 2.90 | 1.33 |
SMT 新興国株式インデックス・オープン | 21.68% | 16.43% | 10.84% | 18.06% | 2.00 | 0.91 |
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成(2015年1月末基準))
ネット証券専用ファンドシリーズ AR国内バリュー株式ファンド
当ファンドは、日本国内の中小型割安株に投資すると同時に、株価指数先物を売り建てることで、市場全体の変動とは無関係にプラスの収益を獲得することを狙ったファンドだ。
運用の狙いは、株式市場全体(市場平均)よりも高い成長が期待される中小型株かつ割安な銘柄への投資により市場平均を上回る収益を期待すると同時に、TOPIX先物などを売り建てすることで、市場全体の変動を相殺し、銘柄選定によって生み出される超過収益のみを積み上げることで、安定的な収益の獲得を目指すことにある。なお、TOPIX先物の売り建てを考慮した実質的な株式組み入れ比率は0~20%の範囲内にコントロールすることから、株式組み入れ比率の機動的な調整も当運用チームの腕の見せ所といえるだろう。
設定来の運用実績を見るかぎり、その狙い通りの運用が行われているようだ。その軌跡を辿ってみると、設定後、2012年初までは順調に推移するものの、2012年春以降は中小型株市場が市場平均を下回る成績であったことから、当ファンドの成績もじりじりと値下がりした。しかし、安倍内閣への政権交代を契機に、中小型株市場が急反発したことから当ファンドの成績も急回復し、その後も中小型株市場が優勢だったことから、じりじりと上値を切り上げていった。この間、中小型割安株の銘柄選択が奏功したこともさることながら、株式市場の上昇・下落局面あるいは大型株優位・小型株優位の相場を見極めながら実質的な株式組み入れ比率を機動的に調整したことで、安定的な成績を残してきたようだ。なお、当ファンドの価格変動リスクの大きさ(標準偏差)は年率7%程度と、為替リスクを抑えた債券ファンド並みの水準であることにも注目したい。
当ファンドは株式を投資対象としているものの、株価指数先物を売り建てすることで、市場変動リスクを抑えていることから、爆発的なリターンが期待できるファンドではないということを良く理解しておこう。世界的な低金利環境下で債券投資による収益獲得の期待が下がるなかで、株価上昇の恩恵を受けながらも安定的な収益を積み上げていきたいと考えるのであれば、当ファンドを検討してはいかがだろうか。
ネット証券専用ファンドシリーズ AR国内バリュー株式ファンドのトータルリターンの推移
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2011年11月末を10000として指数化))
①過去1年 リターン (年率) |
②過去3年 リターン (年率) |
③過去1年 標準偏差 (年率) |
④過去3年 標準偏差 (年率) |
過去1年 投資効率 (①÷③) |
過去3年 投資効率 (②÷④) |
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ネット証券専用ファンドシリーズ AR国内バリュー株式ファンド |
6.00% | 5.65% | 7.02% | 7.02% | 0.85 | 0.80 |
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2015年1月末基準))
ネット証券専用ファンドシリーズ
AR国内バリュー株式ファンド
野村グローバル・ロング・ショート
当ファンドは、世界主要国の株価指数先物、債券先物、為替予約取引を主な投資対象とし、割安な資産を買い建て、割高な資産を売り建てを組み合わせながら、日本円の短期金利水準を上回る収益の獲得を目指すファンドだ。
運用の狙いは、「平均回帰」という考え方に基づいている。各投資対象の市場価格(時価)は日々上下に変動するが、長期的には妥当な価格に収れんしていくという考えから、妥当な価格より上振れした(割高な)資産を売り建て、妥当な価格より下振れした(割安な)資産を買い建てることで、その後の時価が長期的に妥当な価格に戻る過程で収益を獲得することを目指している。簡単にいえば、「逆張り運用」のファンドだ。
設定来の運用実績では堅調に推移しているものの、過去1年間の成績は伸び悩んでいる。これは当該期間において、世界的な金融緩和を背景に株式市場、債券市場とも一方的に上昇し、市場の価格変動リスク(上下の振れ)が抑えられたことで、当ファンドの狙い通りのリターンが取れなかったことに一因があると思われる。また、一部の通貨が人為的な政策に左右されたことで比較的大きな損失を被ったことも大きな要因となったようだ。
野村 グローバル・ロング・ショートのトータルリターンの推移
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2014年12月末基準))
①過去1年 リターン (年率) |
②過去3年 リターン (年率) |
③過去1年 標準偏差 (年率) |
④過去3年 標準偏差 (年率) |
過去1年 投資効率 (①÷③) |
過去3年 投資効率 (②÷④) |
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野村 グローバル・ロング・ショート | -2.88% | 2.79% | 4.96% | 6.48% | -0.58 | 0.43 |
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2015年1月末基準))
上述のように過去1年の成績で苦戦してきたのは否めない。しかしながら、当ファンドは狙い通りの運用が概ねできている、と筆者は考えている。たとえば、2013年5月のバーナンキショックの局面では、大半のリスク資産が大きく下落する一方で、当ファンドはプラスのリターンを獲得している。当運用の特徴は、ある資産が一方向に値上がり(または値下がり)していたものが反転するような局面、つまり価格変動リスクが急上昇するような局面で比較的大きなリターンを獲得することにある。言い換えれば、他のリスク資産が窮地に陥ったときに、それをカバーしてくれる役割を担うファンドといえる。
下表は当ファンドと各投資対象(インデックスファンド)の相関係数を示したものだ。相関係数とは、2つの資産間の値動きの関係性を示したもので、その数値が「1」であれば2つの資産の値動きは全く同じ動き、「-1」であれば全く逆の動き、「0(ゼロ)」であれば2つの資産の値動きは無関係にあることを意味している。
下表を見るかぎり、当ファンドの各資産クラスとの相関係数(黄色の網掛け部分)は、いずれの資産とも「0(ゼロ)」に近い数値となっている。要するに、どの資産とも全く異なる動きをしてきたということだ。言い換えれば、非常に分散効果の高いファンドといえる。こういった値動きのファンドは国内の投資信託を探してもそう見つけられるものではない。
こうしたファンドをポートフォリオの一部に組み入れることで、より安定した運用成果が期待できるといえるだろう。分散投資の一本として、検討の余地が大いにあるファンドといえる。
当ファンドの詳しい内容については、「ファンドマネジャーインタビュー」を参照してほしい。
表:当ファンド(野村グローバル・ロング・ショート)と各資産の相関係数
(出所:ISIDフェアネスのデータをもとに楽天証券が作成。(2015年1月末基準))
※相関係数は、当ファンドと各資産クラスを投資対象とするインデックスファンドの月次リターンをもとに算出。(算出期間2011年12月~2014年12月)
各資産クラスを投資対象とするインデックスファンドは以下の通り。
- 当ファンド:野村グローバル・ロング・ショート
- 国内株式:野村 インデックスファンド・TOPIX
- 先進国株式:野村 インデックスファンド・外国株式
- 新興国株式:野村 インデックスファンド・新興国株式
- 国内債券:野村 インデックスファンド・国内債券
- 先進国債券:野村 インデックスファンド・外国債券
- 新興国債券:野村 インデックスファンド・新興国債券
- 国内REIT:野村 インデックスファンド・J-REIT
- 先進国REIT:野村 インデックスファンド・外国REIT
以上のように、「ネット証券専用ファンドシリーズ」第二弾の3ファンドはそれぞれの特徴をいかした運用が行われている。3ファンドはいずれも国内の投資信託のなかでも他に類を見ない運用のファンドといえる。そして、主要ファンドと異なる値動きが期待できるのがメリットだ。 「ネット証券専用ファンドシリーズ」はネット証券ユーザーだけに開放されたノーロード(販売手数料無料)のファンドだ。是非この機会に、分散投資の一本として活用してみてはいかがだろうか。
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