リップルとは?

 リップルとは金融機関同士の送金ネットワークならびにトレーディング・プラットフォームを指します。仮想通貨「XRP」はリップル・ネットワークによる送金をいっそう簡単にするためのトークンです。

▼リップルの特徴は次の通りです。

低取引コスト YES
高速処理 YES
トークン保有者の集中 YES
オープンソース YES
マイニング(PoW) NO
ブロックチェーン技術の使用 YES
分散台帳の使用 YES
トラストレス(第三者の信用に頼らない) NO
ファンジビリティー(代用性) YES




 従来、世界の金融機関はスウィフト(SWIFT)と呼ばれる1970年代に開発された決済ネットワークを使用してきました。スウィフトは日本語では「国際銀行間金融通信協会」と訳されています。

 スウィフト・ネットワークは200カ国を超える国々で稼働しており、メンバーとなっている金融機関数は1万社を超えます。つまり、現在の国際銀行間資金決済のグローバル・スタンダードなのです。

 要するにリップルはスウィフトに代わる存在になろうとしているのです。銀行間決済は巨大なマーケットであり、挑戦し甲斐のあるニッチです。

リップルを使うメリット

 いま日本から世界のどこかの小国に送金する場合、それがマイナーな通貨であれば、まず円をドルに変え、さらにドルから送金先の国の現地通貨に交換するという作業が必要になります。すると為替手数料が二重にかかるわけです。

 XRPを利用すれば、トランザクションの重複がないので、より安く、より早く送金できます。早い話、これがリップルの価値提案です。

 XRP利用による1回当たりの節約効果は小さいです。しかし「チリも積もれば山となる」で、送金回数が増えると気がついたときには大きな節約になるというわけです。

 送金に要する時間もスウィフトよりリップルのほうがはるかに短いです。実際、リップルは毎秒1千トランザクションをこなせると言われており、ひとつのトランザクションが確認される時間も4秒以内です。

 すでに世界の多くの金融機関がリップルのネットワークに参加の意思表明をしています。ただ実際にXRPを利用したトランザクションが行われているか? といえば、いまのところ不活発だと伝えられています。

 その理由として銀行マンは保守的な人が多く、「いままで慣れ親しんだやり方で問題ないのに、なにも先陣を切ってみずから実験台になり、新しい事を試す必要はない」と様子見を決め込んでいることが考えられます。

XRPは供給がケタ違いに多い

 XRPは金融機関だけでなく我々個人投資家が投資することもできます。

 XRPは全部で1,000億ユニットの発行残高があり、他の仮想通貨より供給がケタ違いに多いです。XRPの単価が他の多くの主要仮想通貨より安いひとつの理由はここにあります。

 なお1,000億ユニットのうち610億ユニットはリップル社が保有しています。よく仮想通貨界では「中央集権は良くない」ということが議論されますが、リップルの場合、発行済みユニット数の過半数を1社が保有しているという意味で中央集権に近い保有構造になっていると言うべきでしょう。

 リップル社は610億ユニットのうち550億ユニットを、スマート・コントラクトを利用してロックアップしています。そしてひと月当たり10億ユニットのペースで徐々にロックアップが解除され、向こう4年半かけて徐々にそれらをリリースしてゆくことになっています。

ベンチャー・キャピタルの参加

 リップルはもともとカナダのデベロッパー、ライアン・ファッガーが2004年に考案した仮想通貨です。オープンソースのプロジェクトを進めるうちに幾度もリーダーシップが変わり、その過程でアンドリーセン・ホロウィッツ、グーグル・ベンチャーズなどのベンチャー・キャピタルからの支援を受けスタートアップ企業としての体裁を整えて行きました。

FRBとも協働

 リップル社は絶えずプロトコルの改良を重ねています。さらに世界の金融機関にリップルへの参加を呼びかけています。リップル社は連邦準備制度のファスター・ペイメント・タスクフォースの運営委員会に参画しています。これらの活動には費用がかかるわけですが、大体、ひと月あたり3億XRPがリップル社の営業費用として費消されているそうです。
 

マイニングはしない

 リップルにはビットコインのマイニングに相当する検証作業がありません。したがってマイニングがもたらす安心感を重視する投資家の間ではリップルは人気がありません。

 リップルはブロックチェーン技術や分散台帳システムを使用しています。ただリップルはお互いに信用されている参加者同士で取引の批准を行うので、ビットコインに代表される「トラストレス」には当てはまりません。

 リップルのプロトコルは色々なアセットとのファンジビリティー、すなわち代替可能性を保証しています。これは国際間の送金にとりわけ適しています。

FinCENとひと悶着

 リップルは2015年にFinCEN(金融犯罪取締執行ネットワーク)から銀行機密法違反で70万ドルの罰金を支払っています。この罰金を支払った経緯は、同社がXRPを著名仮想通貨投資家ロジャー・バーに販売した事実をFinCENに報告しなかったからです。ロジャー・バーは過去にイーベイで花火を販売したことで重罪の有罪判決を受けたことがあり、その「前科者」と取引をしたことはFinCENのルールに反するからです。

リップルのリスク

 リップルはお互いに信用されている参加者同士で取引の批准を行う関係で、悪意のある参加者が批准クラスター間での僅かな価格差を利用し、反倫理的なトレードを行うリスクがあります。

 リップルのファンジビリティーにつけ込むカタチで、高速アービトラージ取引、フロントランニング取引(=大きな金額の取引に先回りすること)が行われるリスクがあります。

まとめ

 リップルは金融機関同士の送金ネットワークとして、スウィフトに取って代わる存在になることを目指しています。速くて安いという価値提案はハッキリしています。金融機関はリップルに興味を示していますが、銀行間での利用状況は未だ活発とは言えません。マイニングという作業がないため、仮想通貨ファンの中には「アンチ・リップル派」も存在します。XRP保有者が集中していること、ロックアップのリリース・スケジュールが、ややアグレッシブなことを考えると、需給関係的には問題があると言えます。