「仮想通貨法」の成立と施行

 2016年5月、世界に先駆けた仮想通貨に対する法律が日本で成立し、2017年4月1日に施行されました。「改正資金決済法」の中で、それまで曖昧な存在だった仮想通貨の法的位置付けや規制が盛り込まれたのです。そのため、通称「仮想通貨法」とも呼ばれています。

 

法律の2つの注目点

 この法律のポイントは2つあります。1つは、仮想通貨が決済通貨として正式に認定されたこと。それまでの仮想通貨は「物」「価値記録」の扱いでしたが、この法律によって「決済通貨のひとつ」「貨幣の機能を持つ」ものとして認められました。それに伴い、2017年7月より、購入時にかかっていた消費税は不要となりました。

 もう1つは、仮想通貨取引所の国への登録が義務付けられたこと。仮想通貨の売買を行う取引所は、金融庁へ「仮想通貨交換事業者」としての登録を行わなければならず、取引について利用者への説明や情報提供義務も負うこととなりました。

 万が一、取引所が不正等を行った場合、必要に応じて監督官庁である金融庁から業務改善命令や業務停止命令を出すことができるようになりました。この取り決めにより、取引所内部の不正を抑止し安全な取引を行える環境作りが整ったわけです。

 

登録事業者の公表

 2017年12月5日現在、審査基準をクリアした15の取引所が登録事業者として金融庁のウェブサイトで公開されています。登録番号・登録年月日・登録事業者名・事業所住所・連絡先・取り扱う仮想通貨の種類を確認することができますので、取引所選びの一助として活用してみてはいかがでしょうか。

 

ICOに対する対応

 ICO(Initial Coin Offering)とは、仮想通貨の技術を利用したクラウドファンディングの1種です。新たな事業・サービスを展開したい企業や個人が独自のコイン(トークン)を発行してビットコインなど市場での流通量の多い仮想通貨での出資を投資家に募り、その後集めた仮想通貨を売却し米ドルや日本円などに換金して事業資金とします。

 ICOはインターネット上で投資を募ることができ、低コストかつ少額から投資できることから世界で爆発的な広がりを見せました。しかし、出資の見返りでもらえるトークンの存在が虚偽であったり、資金だけが目的の詐欺まがいの案件の頻出や、マネーロンダリング、テロ資金供与の温床になる危険性を指摘され、現在では警告を発したり規制を行う国も少なくありません。

 日本でも規制を行う方向ではありますが、市場の成長を妨げない形で特定の仮想通貨取引の際に会計規定などを盛り込む等により、マネーロンダリングや詐欺をなくすための対策を取るとしています。今後、さらなる進展が見込まれます。

 

整う法整備

 仮想通貨法施行後、国税庁のタックスアンサーのページにビットコインに関する項目が加えられました。取引で得た利益は所得となり、所得税の課税対象であることなどが紹介されています。税制面での扱いも、少しずつ固まってきている状況です。

 このように、日本での仮想通貨への法整備は着々と進んでおり、仮想通貨市場における日本の対応は積極的です。仮想通貨関連法の成立もニューヨーク市に次ぐ制定となり、国としては世界初のことでした。中国などが仮想通貨取引を禁止する方向へ舵を切っている中、日本はルール作りを行いながら仮想通貨市場や技術のなどのイノベーションや可能性を妨げずに利用者の保護やマネーロンダリング対策などを行う方向へと進んでいます。