She’s Leaving FED

 ジャネット・イエレン氏が初の女性トップとして第15代FRB(米連邦準備制度理事会)議長に就任したのは、2014年1月。当時のアメリカ経済は、100年に一度の経済危機といわれるリーマンショックの痛手から徐々に立ち直ろうとしているところでした。

 アメリカ経済を救ったのは、FRBの大規模なQE(量的緩和政策)のおかげだといわれています。しかしそのせいで、米金利はゼロまで下がり、FRBのお財布(バランスシート)は債券買い入れで大きく膨らんでしまったのです。

 イエレン議長の前任のバーナンキ議長は、任期終了ぎりぎりの2013年12月になって、なんとか債券買い入れ規模を初めて縮小するところまでこぎ着けました。バトンを渡されたイエレン氏のミッションは、FRBのバランスシートをリーマン危機前の水準に戻すことでした。そして、アメリカ経済が正常に戻ったことを世界に示すために利上げをすることでした。

 FRB議長となったイエレン氏は、米経済が上向いてきたことも助けとなって、2014年10月に資産買い入れ額をゼロまでに減らすことに成功。2015年12月には、9年半ぶりとなる利上げを決定しました。そして1年後の2016年12月には2度目を実施しました。

 2017年は3月と6月にも金利を引き上げ、12月も確実とされています。 

 今年になってからは、まるで駆け足のような利上げペースです。本当は、もう少しゆっくり時間をかけながら進めたかったのでしょうが、残念なことにイエレン議長には時間がなかった。トランプ大統領の登場によって、FRB議長としては4年という異例の短期で議長を辞すことになったからです。

 トランプ大統領は、政策の目玉として「過去に例のない」減税プランを掲げています。マーケットは期待で沸き立っていますが、財源がなければ、いずれ大幅な財政赤字に苦しむことになるのは目に見えています。トランプ大統領の政策が、アメリカ経済にとって吉と出るか凶と出るかはまだわかりません。しかし、将来何が起きようとも即座に対応できるように、今のうちにFRBの体力を回復させておこうと、イエレン議長は急いだのでしょう。

 11月20日。FRBのウェブサイトは、新議長の就任をもって、イエレン氏がFRBを退職することを正式に伝えました。

 ありがとう! さようなら、イエレン議長。(解説:楽天証券FXディーリング部 荒地 潤)

◆今回の作家(ma2さん)
コメント:お二人ともハト派だときいたのでほっこりと
プロフィール:サラリーマンとプロレスが大好きなイラストレーター
SNS:TwitterPixiv

 

もっと! もっと! イエレン氏 名言&迷言集

民間部門、銀行の安全性が高まったことを示唆
2017.8.25 ジャクソンホールで開催の年次経済シンポジウムでの講演で発言

危機以降に導入された改革に対する批判を認識、
改革により金融システムの安全性が高まったとも指摘

2017.8.25 ジャクソンホールで開催の年次経済シンポジウムでの講演で発言

性急に金融緩和をやめれば高くつく。
ゴールは完全雇用だ

2013.11.14 米上院銀行住宅都市委員会の公聴会で宣誓

雇用を守るのはFRBの仕事であり、
FRBにはそれが可能である

2013.11.14 米上院銀行住宅都市委員会の公聴会で宣誓

多くの国民が仕事に就けず、家族の養育に不安を抱いている。
我々はすべての人々が懸命に働く機会を獲得し、
より良い生活を送れるように援助することができる

2013.10.9 次期FRB(米連邦準備理事会)議長に指名された後の発言

イエレン氏の経歴・略歴

イエレン氏は、低金利と大規模な資産買い入れを通じて積極的な成長押し上げを提唱するハト派として知られ、FRB史上初の女性議長となる。主要7カ国(G7)でみても、女性が中銀トップを務めるのは初めてのこと。
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世界経済に影響をあたえたBIGネームの発言や迷言のまとめ特集です。「人」にフォーカスし経済を振り返ってみると、また違った視点でマーケットがみえてくるのではないか、というコンセプトで企画しました。