執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 先週、イエレン米FRB議長がハト派姿勢を示し、米金利の先高感が低下したため、NYダウは最高値を更新。ただし、円高が進んだため、日経平均の上値は重いまま。
  • これから本格化する4-6月決算に注目。設備投資関連の回復に期待。自動車は不振の可能性も。

NYダウが最高値更新でも、日経平均は2万円前後で膠着

先週14日(金)、NYダウは84ドル高の21,637ドルとなり、3日連続で史上最高値を更新しました。週明けの17(月)は、8ドル安の21,629ドルと小反落しました。
NYダウが最高値を更新する原動力となったのは、先週、米利上げのペースが弱まるという見方が広がったことによります。最近、米景気好調→米金利上昇→金利上昇懸念を嫌気して米国株が下落という流れが出始めていて、米国株の上値を重くしていました。
ところが、先週12日(水)、イエレンFRB議長が議会証言で、利上げを急がないハト派姿勢を示したことから、NYダウは上昇力を取り戻しました。イエレン議長は、もともとハト派で知られていました。ところが、最近、利上げに積極的な発言が目立ち、いつの間にタカ派になったのかと、不思議がられていたところが、ありました。
先週の議会証言で、イエレン氏は、9月にもFRBの保有資産縮小を決める可能性を示唆しましたが、利上げについては、「さらに大幅な利上げが必要なわけではない」と、慎重姿勢を示しました。
NYダウは、最高値を更新しましたが、日経平均は2万円前後で膠着したままでした。米金利の先高感が後退したことにより、為替がやや円高(ドル安)に動いたことが、ネガティブ材料となりました。日経平均は、米金利上昇なら米国株調整懸念に、米金利下落ならば円高懸念に上値を抑えられる状況が継続しています。
先週は、利上げ懸念の後退で、NYダウが上昇したことが追い風になる中、円高が警戒材料となり、結局、2万円前後の膠着を脱することができませんでした。

<日経平均週足:2016年1月4日―2017年7月14日> 

(注:楽天証券マーケット・スピードより作成)

これから始まる4-6月決算に注目

7月後半から、4-6月決算(2018年3月期の第1四半期)決算の発表が本格化します。膠着感が出つつある日経平均が動くきっかけになる可能性があり、注目されます。6月日銀短観で示された大企業DI(業況判断指数)が、以下の通り、製造業・非製造業とも良かったので、4-6月決算は、良好な内容と期待されます。

<日銀短観、大企業DI(業況判断指数):2012年3月―2017年6月>

(出所:日本銀行)

ただし、不安材料を抱えた業種もあり、実際に出てくる決算が、市場にとって好感される内容になるか、慎重に見極める必要があります。

(1)自動車は要警戒

自動車は、決算内容が良くない可能性があり、注意を要します。米国で自動車販売が減少してきていることがマイナスに響きます。特に、日本メーカーが得意としてきた、燃費の良い乗用車が不振である影響が懸念されます。
自動車は、短期業績だけでなく、中期的にも懸念材料が増えています。まず、車載用電池の性能向上によって電気自動車が次世代エコカーとして主流になっていることが逆風です。日本が得意とするハイブリッド車が、次世代カーとして売れにくくなってきています。
日本の自動車産業は、ガソリン車に使う内燃機関を製造するためのラインを大量に保有します。したがって、内燃機関が不要になる電気自動車の普及は、長期的に日本の自動車産業にダメージとなる可能性があります。
日本メーカーは、内燃機関を使いながら電気でも走らせるハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車をメインに、次世代エコカーの開発をしてきました。世界が電気自動車を次世代車のメインに据え始めたことは、長期的な不安材料となります。
さらに、世界に広がる保護主義で自動車産業がターゲットとなりやすいこと、不具合があった場合の自動車産業にかかるリコール費用や課徴金が巨額化する傾向がることも、懸念材料となりつつあります。

(2)設備投資関連に期待

産業用ロボットや、FA(工場自動化)機器への投資が中国で増えてきていることから、ロボット・センサー・工作機械などの、設備投資関連に回復色が強まることが期待されます。