新規参入のEV用MCS事業が中期成長エンジンに、コスト・技術競争力に高評価

現地コード 銘柄名
03898 株洲中車時代電気
(チュージョウ・シーアールアールシー・タイムズ・エレクトリック)
株価 情報種類
 44.85HKD
(11/30現在)
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 株洲中車時代電気は電気自動車(EV)用のモーターコントロールシステム(MCS)製造事業に参入するとの戦略方針を決定した。EV用のMCSが、高速列車や機関車の牽引システムと似通っていることが理由。エネルギー消費量こそ大きく異なるものの(高速列車向けは4800-9600KWh、EVセダン車向けは80-160KWh)、いずれもMCS制御のモーターを通じた電動式であり、技術的な類似点が多いという。同社がすでに獲得したEV用MCSの受注は50万台。BOCIは新規事業が同社の利益成長を牽引し、向こう3-5年の再評価を後押しするとみて、株価の先行きに強気見通しを継続している。

 鉄道設備メーカーがEV用コンポーネント市場に参入するのは、これが初めてのケース。同社は高速列車および機関車用制御システムの国内最大手であり、BOCIによれば、技術レベルの点から、EV用MCSサプライヤーとしても十分通用する見通しという。同社が新たに生産を手掛けるのはモーターそのものではなく、モーター制御部分、電力コンポーネント、統合電力部品、自動車電気部品――の4品目。ターゲットとするのはEV乗用車で、すでに50万台分のMCS受注を確保した。1台当たり5000-1万元と想定した場合、受注総額は25億-50億元規模となる。また、これに伴い、自動車生産施設の近くに、新たなMCS工場を立ち上げる計画。中国では大気汚染対策を進める政府当局の強力な支援もあり、EV関連ビジネスの成長潜在力が極めて高い。

 MCSの主要コンポーネントは電力制御用のパワー半導体デバイス、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)だが、同社はすでにIGBTの国内最大手であり、コスト、技術の両面から非常に競争力が強い。電圧はEV用が650V、機関車用が3300V、高速列車用が6500Vと大きく異なるが、IGBT技術をEVに転用するために必要となるのは技術要件を引き下げること。輸入物ではなく、自前のIGBTを使用できるのが同社の強みであり、生産コストは輸入価格を30%ほど下回るという。世界的に見ると、IGBTの有力サプライヤーは独インフィニオン、三菱電機、東芝などだが、株洲中車時代電気も英IGBTメーカーの買収により、特に高圧IGBT部門で国産有力ブランドとなっている。

 同社の現在株価は2018年予想PERで13.9倍。BOCIは18年の鉄道設備事業の需要回復を見込み、依然として魅力的な水準にあるとしている。18年には国内の鉄道完工距離が前年比161.9%増の5500kmに達し、同社の受注増を支える見通しという。また、EV用MCS事業については向こう3年で事業規模が拡大すると予想し、中国EV市場そのものの成長が中期的な支援材料になるとの見方。3年タームで見た場合、同社株は有力な投資選択肢になり得るとした。現時点では目標株価を据え置き、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。