みなさまこんにちは。家計の窓口でおなじみの、ファイナンシャルプランナーゆりもとひろみです。相続には、起きる前に知っておきたい話が多くあります。今回は、「お子さんがいないご夫妻の相続の注意点」について、お話させていただきます。

法廷相続分と遺留分

(出所)FPフローリスト作成

(※1)正確には父母祖父母等含む直系尊属。本文では分かりやすさを考慮して「父母」と表現。

  • 夫の財産は当然全部妻が相続できる?
    皆様がご存知のように、子どもがいる場合、相続人は配偶者と子になります。ところが子どもがいない夫婦の場合、夫死亡時に妻が全財産を受け取れないことがあります。このことが意外と知られていない理由は、相続の話が主に税法上の話題にクローズアップされがちで、民法上の相続の仕組みや権利への理解が十分ではないためと考えられます。
  • 法定相続分と遺留分
    子どもがいない夫婦の場合、配偶者以外に次の順で相続人が加わります。まず夫の父母(※1)であり、夫の父母が死亡していれば夫の兄弟姉妹、兄弟姉妹も死亡してれば、なんと兄弟姉妹の子どもにまで相続の権利が及びます(代襲相続)。さらに民法では「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があります。これは一定の相続人が最低限相続できる財産の割合のことです。遺留分を侵害するような財産分けが行われた場合、遺留分減殺請求をして取り戻すことができるのです。下記に主なケースでの法定相続分と遺留分をご紹介します。
  • 子どものいない夫婦の相続の盲点とは?
    では、子どものない夫婦の相続の盲点がどこにあるかを、分かりやすくご説明しましょう。「夫の父母は他界していて、夫には兄弟がいる」という場合で考えてみます。遺言書がない場合は、妻と夫の兄弟が相続人となり、遺産の分け方を話し合います。夫の兄弟とよい人間関係が築けていれば、「夫婦で築いた財産なんだから、奥さんが相続すればいいよ」と言ってくれるでしょう。しかし、兄弟が「ちゃんと財産を分けてくれないと」と言ってきたらどうなるか?その時は法定相続分の遺産を何らかの形で夫の兄弟に分割しなくてはなりません。
  • 遺言書の存在は妻を救う!?
    夫が死亡し、ただでさえショックな時に、疎遠だった親族から想定していなかった遺産分割の要求を受ける…このような事態を防ぐ方法はあるのでしょうか?
    一番効果的なのが、夫に「財産一切を妻に相続させる」という遺言書を作成しておいてもらうことです。相続人が兄弟姉妹の場合、遺留分はないため、事例のケースでは、妻が無事全財産を相続することができるのです。
    (夫の親がいる場合は遺留分の問題がでますが、遺言書がある方が法的にも故人の意思表示としても妻を守る効力を発揮します)
    遺言書は必要項目が揃っていれば手書き(自筆証書遺言)でも大丈夫ですが、自作では心配な方は、行政書士などに相談して公正証書遺言を作成しておくと万全です。お子さんのいないご夫婦は、年齢を問わず、遺言書を準備しておくべきか考えてみることをお勧めします。

なお、家計の窓口では、相続の基礎知識を確認するセミナーを定期的に開催しています。イザという時に困らないように、キホンの仕組みを押さえておきたいという方のご参加、お待ちしております。

家計の窓口 マネーセミナー詳細
http://kakeinomadoguchi.com/seminar/

次回掲載予定日は12月16日(水)です。