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『南アフリカ』では、このところ同国債と通貨ランドが軟調な動きとなっていました。この背景には、10月に発表された中期財政計画において財政見通しが下方修正されたことや、来月予定されている与党の党首選に向けて政治的な不透明感が高まっていることなどがあります。11月24日には、こうした動向を受けて大手格付け機関のS&Pグローバル・レーティング(以下、S&P)が『南アフリカ』の長期債務の格付けを引き下げました。

 

【ポイント1】S&Pが自国通貨建て長期債務を投機的水準に格下げ

今年4月にも格下げを実施

■11月24日、S&Pは『南アフリカ』の自国通貨建ての長期債務格付けを投資適格のうち最も低い「BBBー(トリプルBマイナス)」から「BB+(ダブルBプラス)」へ、外貨建ての長期債務格付けを「BB+」から「BB(ダブルB)」へ、それぞれ一段階引き下げました。一般に、「BB+」以下は投機的な格付けとされます。S&Pは、今年4月にも『南アフリカ』の自国通貨建て及び外貨建て長期債務の格付けを引き下げました。

 

【ポイント2】財政見通しの悪化が主因 

政治的不透明感も一因

 

■『南アフリカ』では10月に中期財政計画が発表されました。2016年に発表されたものでは、財政赤字(対GDP比)が2020年3月末に終わる財政年度に2.5%まで改善する見通しでしたが、2017年に発表されたものでは、同3.9%まで下方修正されました。これにより、政府債務(対GDP比)も約52%から約58%まで悪化する見通しとなり、今回の格下げの一因となりました。
■来月には与党・アフリカ民族会議(ANC)の党大会で党首選が予定されています。これに向け党内では、ズマ現大統領の後継者選びをめぐる権力争いが激化しています。こうした政治的な不透明感に伴い、財政健全化の遅れも懸念されます。

 

【今後の展開】財政見通しや政権の行方が同国債・通貨安の懸念材料

■同24日、大手格付け機関のMoody’s インベスターズ・サービシーズ(以下、Moody’s)は『南アフリカ』の長期債務格付け(自国通貨建ては現在「Baa3(トリプルBマイナス相当)」)を引き下げ方向で見直すと発表しました。市場では、S&PとMoody’sがともに格下げすると見込んでいました。このため、Moody’sが格付けを引き下げず見直しにとどまったことで、 『南アフリカ』国債はそれまでの売りが一服し、落ち着いた動きとなっています。今後Moody’sが同国債を格下げすれば、大手格付け機関において軒並み投機的水準となり、同国債及び通貨ランドへの売り圧力となることが懸念されます。その判断材料ともなる政権の行方や発表予定の予算の内容などに注目です。