今日のポイント
- 内外環境を巡る不透明要因が国内株の上値を抑える一方、米国ではダウ平均とダウ輸送株平均が最高値を更新。FRBは来週のFOMCで金融政策の正常化方針を確認へ。
- 6月下旬以降はバリューが回復しグロース株が調整入り。ただ、ゴルディロックス相場で長期金利が安定化なら、ナスダックを中心とするグロース株の回復が期待できよう。
- IT関連の4-6月期業績(EPS)は前年同期比14%の増益へ。ナスダック100指数の相対的な成長期待は根強く、市場平均(S&P500)を上回るパフォーマンスが見込めそうだ。
(1)「ダウ理論」はまだ生きているのか
国内市場では、日経平均で2万円を巡る攻防が続いています。朝鮮半島情勢の緊張、安倍政権の支持率下落、トランプ大統領のロシアゲート疑惑、ドル円相場の軟調などが上値を抑える要因です。一方、強気要因としては、米国市場でダウ平均が最高値を更新して堅調に推移していること。古くから「ダウ理論」の一つとして知られる事象も起きています。内需関連を中心に景気敏感性が強いとされるダウ輸送株20種平均(トラック運送、鉄道、航空関連株で構成される指数)とダウ工業株30種平均が、同時に史上最高値を更新しました(12日)。低インフレ・低金利が続くなか、米景気が緩やかに回復する「ゴルディロックス(適温経済)相場」を象徴する動きとして注目されます。米長期金利の上昇に歯止めがかかり、ドル円の堅調も一時停止した感がありますが、米国株式の高値更新は、リスクオン(選好)を介して国内株式の下支え要因となりそうです。
図表1:ダウ30種平均、ダウ輸送株平均、日経平均の推移(過去1年)
(2)グロース株は回復に向かうのか
イエレンFRB(米連邦制度準備理事会)議長は12日の議会証言で、景気の緩やかな回復を確認する一方、インフレには慎重な見方を示しました。金融市場は、政策金利が緩やかなペースでしか上昇せず、今後もゴルディロックス相場が暫く続くと受け止めたようです。FRB議長の発言で、金融当局が利上げや出口戦略に積極的でないことが示され、米長期金利は再び低下気味です。6月下旬以降、米長期金利が上昇した局面では、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)面でやや割高であったグロース株が劣勢に転じました。ただ、金利の安定が視野に入ってきたことで、グロース株にいったん底入れ感が広まっています。図表2は、世界のグロース株価指数(高PBR銘柄群)のバリュー株価指数(低PBR銘柄群)に対する勢いを示したものです。今秋は米景況感の改善、長期金利上昇、ドル円の上昇に一巡感も出ており、IT関連やナスダック指数に代表されるグロース株の見直し買いが目立ってきています。100日移動平均線と200日移動平均線の位置関係でみると、世界グロース株指数の株価調整も、いったん100日移動平均線付近まで進んだことで、株価下落が一巡しつつあるようにみえます。また、100日移動平均線が200日移動平均線を下から上へ抜ける「ゴールデンクロス」を示現しており、中期的な観点でグローバル株式が優勢を取り戻す兆候も示しています。
図表2:世界グロース株の相対推移
(3)ナスダック相場の立ち直りに注目
世界市場のグロース株が立ち直るプロセスのけん引役として期待されるのが米国のナスダック総合指数やナスダック100指数が象徴するIT(情報通信)関連業種の株価回復です。IOT、AI・ロボット、ビッグデータなど「第4次産業革命」がもたらす世界的な需要拡大で、収益成長期待が高いIT業種の株価は、徐々に立ち直りをみせています。そもそもIT関連業種の株価は、6月初旬までの上昇で高値警戒感が燻っていた経緯があり、米長期金利の上昇を契機に調整気味となっていました。ただ、7月以降は、ダウ平均が月初来+0.9%、S&P500指数が+0.8%であるのに対し、ナスダック総合指数は同+2.0%、ナスダック100指数は+2.3%と優勢を取り戻しています。長期金利の上昇ペースが和らげば、PERやPBRが比較的高いIT関連株は買い戻されやすい環境です。長期金利が当面安定化するなら、IT関連を含むグロース株に投資資金が戻る可能性がありそうです。来週以降発表される4-6月期の決算については、S&P500指数ベースのIT関連業種のEPS(1株当り利益)の前年同期比増益率は14.0%と二桁増益が見込まれています(Bloomberg集計による市場予想平均)。下記の図表3は、ナスダック100指数とS&P500総合指数ベースのEPSについて実績と予想(Bloomberg集計による市場予想平均)を示したものです。今後発表される決算で、業績やガイダンス(業績見通し)が市場予想を上回れば、米国市場だけでなく日本市場のIT関連株の支援材料となりそうです。
図表3:ナスダック100指数、S&P500指数、業績(EPS)動向
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