執筆:窪田真之

<今日のポイント>

  • 2月決算小売業大手の第1四半期決算がほぼ出揃った。小売業大手には最高益更新を見込む企業が多く、注目できる。
  • 小売業大手は、バリュー相場に弱い。足元、バリュー優位の流れが出ていて、小売大手は上値重いが、先行き、グロースの流れに戻れば、再びパフォーマンスが良くなる期待がある。

(1)    大手小売業には今期最高益更新を予想する企業が多い

いよいよ3月期決算企業の第1四半期(4-6月期)決算発表が本格化します。やや膠着色の出ている日経平均の先行きに影響するので、注目されます。
一足先に、2月期決算の小売業の第1四半期(3-5月期)業績が、ほぼ出揃っています。今日は、それをレビューします。
小売業というと、「少子高齢化が進む日本の内需産業で、成長性が期待できない」というイメージを持つ人が多いと思います。ところが、意外にも大手小売業には、最高益を更新中の銘柄がたくさんあります。
以下の表は、2月決算小売業大手7社の第1四半期業績を示しています。この7社のうち、5社(ABCマート、良品計画、ニトリHD、セブン&アイHD、しまむら)は、会社予想ベースで2018年2月期に営業最高益を更新する見込みです。

<2月決算小売大手7社の連結営業利益: 通期予想と第1四半期実績> 

(出所:各社決算資料より作成。進捗度は、第1四半期の営業利益が通期計画の何パーセントに当たるか示す)

専門分野でプライベートブランドを増やし、シェアを伸ばす専門店が多いほか、海外での利益拡大が軌道に乗ってきた会社もあります。小売業は、意外な成長産業となっています。

(2)進捗率の低い会社は、通期目標が未達になるリスクも

第1四半期(3-5月)の営業利益で、通期計画の何%まで達成したか示すのが、進捗率です。上の表は、進捗率の高い順に並んでいます。季節要因もあるので、一概には言えませんが、第1四半期で通期計画の25%達成できていれば、計画達成に妥当なペースと見ることができます。25%より低い企業は、通期計画が達成できるか、今後を注意深く見ていく必要があります。

(3)小売業大手は、バリュー相場に弱く、グロース相場に強い傾向がある

小売業は、30年前は、景気敏感セクターでした。時価総額大手に、景気の影響を受けやすい百貨店が入っていたからです。
ただし、今、百貨店の多くは、時価総額上位から姿を消しました。代わって、日用品(靴・カジュアル衣料品・住居製品)を扱う専門店や、食品・飲料の比率が高いコンビニが、上位を占めています。その結果、小売業は、ディフェンシブ(景気変動の影響を相対的に受けにくい)業種と見られるようになってきました。
小売業大手には、ディフェンシブで、最高益を更新中の銘柄が多数あります。結果として、小売業は、グロース(成長)株として動く傾向があります。グロース優位の相場に強く、バリュー(割安株)優位の相場に弱い傾向があります。
今年は、5月までグロース優位の相場が続いてきましたが、6月中旬以降、バリュー優位の流れが出始めています。その結果、小売業大手の株価は、足元、上値が重くなっています。
目先、小売業大手の株価は、上値の重い展開が続く見込みです。ただ、最高益を更新していく見通しの企業については、グロース優位の相場に戻ったときに、株価のパフォーマンスが良くなる期待もあります。中長期的に、最高益更新の続く小売株に、一定の投資を持つことは意味があると思います。

以上