執筆:窪田真之

今日のポイント

・先週発表の米ISM景況指数、米雇用統計はともに強い内容。日米とも、景気・企業業績は好調。

・日経平均に短期的な過熱感。上昇率の高い景気敏感株を売り、出遅れ好業績の小型株などに乗り換えを考えても良いと考える。

 

先週発表の米景気指標は強い内容

 先週の日経平均は、1週間で531円上昇し、2万2,539円となりました。米国株も高値更新が続いています。日米ともに、景気・企業業績が好調で、好業績株を買う「業績相場」が続いています。先週発表になった米国の景況指数は、強い内容でした。

10月の米ISM景況指数は強い内容

ISM製造業景況指数は、9月よりやや低下したものの、高水準です。ISM非製造業景況指数は上昇して60を超え、非常に好調といえる状況です。

米ISM景況指数の推移:2014年1月―2017年10月

出所:米ISM供給公社

10月の米雇用統計も、強いと言える内容

 一番注目が高い、非農業部門雇用者数が、前月比26.1万人の増加。事前予想(31万人増)より低かったものの好調といえる内容です。理由は8・9月の雇用の伸びが合わせて9万人、速報値よりも増額修正されているからです。それも勘案すると、今回、発表された10月の雇用者数は、強いといえます。

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比):2014年1月―2017年10月

出所:米労働省

 通常は非農業者雇用者数が前月比で20万人以上伸びていれば、米景気は好調とみなされます。ただし、9月と10月はハリケーンがあったため、統計の見方が異なります。8月末から9月にかけて米国を襲った大型ハリケーンの影響で、9月は雇用者の伸びが低くなり、10月は反動で大きくなると見られていました。

 9月は雇用者数の伸びが前月比1.8万人増と低くなりました。10月は予想より低いものの26万人増と大きく伸びています。

 米雇用情勢が強いことは、ハリケーンの影響が出ていない完全失業率でも、わかります。9・10月とも低下が続き、4.1%まで低下しました。米国は実質的に完全雇用状態にあると言えます。

米雇用統計:完全失業率:2014年1月―2017年10月

出所:米労働省

 雇用統計では、賃金上昇率も重要な指標です。10月は前年同月比2.4%増とやや上昇率が鈍りました。ただ、米雇用情勢は総じて強いといえます。

 

米景気好調を受け、12月の利上げはほぼ確実と見られている

 市場では、米国の金融政策を決めるFRB(米連邦準備制度理事会)が、12月に再び利上げするのがほぼ確実と、みなされています。それを受け、為替市場ではドルが強含んでいます。先週、1ドル114円台まで円安が進んだことが、日本企業の業績改善期待をさらに高め、日経平均が上昇する要因となりました。

 ただし、ドル円の上値はやや重くなってきています。来年以降、米利上げのペースが鈍くなるとの見方があるからです。

 トランプ大統領は、来年2月に任期満了となるイエレンFRB議長の後任に、ハト派(利上げに慎重)とみなされているパウエル氏を指名。パウエル氏が真にハト派か不透明ですが、市場ではハト派と受けとめています。トランプ大統領は、副議長も含め、FRB幹部にハト派を増やしていく方針と考えられます。

 そうしたFRBの人事方針もからみ、市場は、来年は利上げピッチが鈍るとみています。「米景気は好調だが、利上げは遅い」という、株式市場にとって都合が良い「適温相場」が続くとみなされています。

 

日経平均に短期的な過熱感があり、ポートフォリオの入れ替えも要検討

 足元は、強材料がそろい踏みです。世界景気は好調で、日本の景気・企業業績も好調。衆院選の自民大勝を受けて、日本の政権安定を海外に印象付けました。日米首脳会談を通じ、日米の連携も示せました。今しばらく外国人の日本株買いは続きそうです。

 最大の悪材料は、日経平均に、短期テクニカル指標でみて過熱感が出ていることです。好事魔多し。11月は、何かきっかけがあれば、日経平均が一時的に反落する局面もあると思います。

 値上がり率の高い大型の景気敏感株を利益確定売りし、出遅れで好業績の小型株や、割安な好配当利回り株に乗り換えることを考えたほうが良い局面に入ってきていると、考えています。