金相場は下落。ドル高や株高等を受けて10カ月ぶり安値に下落した。FOMCでの利上げ観測も重石となっていると見られ、週ベースで5週連続での下落となった。米国債利回りの上昇は金利のつかない金にとっての圧迫要因であり、現状では相場浮揚の材料が見当たらないと考えられる。

重要な節目の1,175ドルを割り込んでおり、短期的なトレンドは下向きになっている模様。下落余地は低下していると見られるが、現状で基調が上向きになるサインは見当たらないと考えられる。株価の調整とドル安がなければ、金相場は低迷する可能性があろう。

しかし、トランプ新政権の政策が続ければ、いずれ長期的にはドル安に転じる可能性が高いことから、金を押し目で買う行為は理にかなっているといえよう。経験則上、特に政権2年目以降は上昇しやすい傾向があるようであり、これからの下落局面は押し目買いのチャンスになると考えられよう。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、9日時点で857.45トンと、前日の860.71トンからさらに減少。大統領選後のピークからはすでに10%以上も減少している。

非鉄相場は値動きの荒い展開。これまでの動きが続くのか、株高やドル高の影響を見極める動きが続くだろう。ただし、原油高が下値を支える可能性があり、金融市場以上に原油相場の展開に注目しておきたい。

原油は小幅続伸。OPECの減産合意に協調し、OPEC非加盟国が10日のウィーンでの会合で、生産削減で合意するとの期待感が広がった。米国内の石油掘削リグ稼働数が前週比21基増の498基と、15年7月以来の大幅増となったことなどから、上値は重かった。ただし、前年同週の524基を下回っている。

原油価格は5月に一時50ドル前後となり、13年ぶりの安値から回復したが、その後の稼働数は28州中25州で増加し、合計182基増となった。今週は全米各地でリグ増加が見られたが、最も増えたのはテキサス州西部とニューメキシコ州東部にまたがるパーミアン盆地で11基増。

5月以降では109基増え、国内最大のシェール産地である同地域の稼働数は15年9月以来の高水準の246基に達している。今後は価格上昇に伴い、米国内の産油量が増加するかに注目することになろう。

一方、10日に開催された主要産油国の会合では、OPEC減産合意に続いて「歴史的合意」ともいえる合意がなされた。OPEC非加盟国が15年ぶりに協調減産で合意。先のOPEC減産合意に加え、ロシアなどの非OPEC加盟国も減産で強調することになった。

非加盟国全体で日量60万バレル弱の減産になり、これでOPECの減産を加えると、世界の産油量の2%が来年から半年間、消えてなくなることになる。今回の減産合意は2001年以来だが、当時は同時多発テロで需要が減少したため、やむなく減産を行った。しかし、今回は原油価格の引き上げが目的であり、産油国の腰の入り方、つまり真剣度合いが違うといえよう。

つまり、原油価格を上げなければ、やっていけない産油国がほとんどであると事実が浮かび上がってきたということである。今回の協調減産で、ロシアは30万バレルの減産を行う予定。さらにメキシコは10万バレル、オマーン、カザフスタン、アゼルバイジャンも減産する。

これらの国を合わせて、合計11カ国が協調減産に参加し、協調減産幅は日量55万8,000万バレルまで積み上がった。今回、協調減産に参加した非加盟国の産油量は合計で日量1,800万バレルにすることになる。つまり、OPECと合わせて世界の産油量の6割を占める産油国が、今回の減産に参加したことになる。

この意味を正しく理解することが、今後の原油市場動向を見極める上で、きわめて重要であると考えられる。さらに今回の大きなポイントは、監視体制の強化といえる。減産の実施状況を確認するため、OPECからはアルジェリア、クウェート、ベネスエラ、非加盟国からはロシア、オマーンが参加して、監視委員会を設置するという。これは非常に画期的であると評価できる。

ここまで産油国が決めたという事実を正しく評価することが、今後の原油市場を見極める上で、きわめて重要なポイントになるといえるだろう。つまり、現在の原油価格で長期的に生産を継続できる生産者は皆無であることが浮き彫りになったということである。

サウジでも厳しい状況であり、他の国については言うまでもないだろう。生産者は生産継続のために、高い原油価格を必要としていると考えられる。したがって、価格は上昇せざるを得ないということになろう。

この点において、原油価格の動きは様々な側面でこれから最も注目すべき材料になってくるだろう。原油価格が上がってくると、インフレがきつくなり、いずれ株式市場にも悪影響が出るだろう。これから原油市場は最大の注目市場になるといえよう。

トランプ政権の動きなどに目を向けすぎていると、重要なポイントを見逃す可能性がさえ出てくるだろう。インフレ対応など、いまの中央銀行はこの動きに全く対応できない状況にあると見られる。

日欧はいまだに緩和政策を続けており、米国も利上げができないでいる。しかし、これからのテーマはインフレになるだろう。その意味では、原油高は金融政策に大きな影響を与えることになるだろう。

一方、興味深い報道も飛び込んできた。トランプ政権の国務長官の候補に、エクソンモービルのCEOが挙がっているというのである。つまり、トランプ政権はエネルギー産業に有利になるようにするということになる。

これは、財務長官に元ゴールドマン・サックスのムニューチン氏が内定したことで、金融機関に有利に働くとのロジックと同じといえよう。エネルギー会社が潤うためには、販売量が増えるだけでなく、価格そのものが上昇する必要がある。つまり、トランプ政権は原油価格の上昇を促す政策を取る可能性があると考えられる。

もちろん、環境規制などを緩め、生産コストの削減も後押しすることになるだろう。しかし、最終的にはエネルギー価格が上昇しないと、エネルギー会社は収益が出ない構図にある。これは非常に大きなポイントになる可能性があるといえるだろう。

国務長官は外交担当であり、直接的に経済面での影響はないかもしれない。しかし、このような人事を行うこと自体は、当然その業界にメリットがあるように仕向けるのが常道であり、原油相場の上昇を促す可能性があるといえるだろう。

上述のように、OPECの減産がしっかりと実行される可能性が高いことや、ロシアなどのOPEC非加盟国が減産に参加することなどを考えると、石油需給が大きく好転し、原油価格が上昇すると考えるのが常識的であろう。

金融市場では、「原油価格は上がらない」との見方が大前提になっている。株価にも影響するため、原油価格が上がってほしくないと考えているのだろう。しかし、産油国は原油価格を引き上げることに完全にシフトしている。こうなると、米国のシェールオイル増産などもできなくなる。価格が下がって困るのは、米国も同じだからである。したがって、今回は価格を押し上げる産油方針を取るだろう。そうなると、金融市場関係者には想定外の事態になるだろう。

株式市場も混乱し、下落に転じる可能性があるだろう。まして、インフレ圧力がこれから強まることになる。これまでの「低金利レジーム」が大きく転換するという点においても、「原油相場の大転換」が様々な方面に大きな影響を与えることになろう。