日米首脳が円安を問題視。介入警戒感が高まる中でのドル円の行方
先週24日に米長期金利の上昇を受けて159円台の円安となりましたが、25日、片山さつき財務相が「日米首脳会談でトランプ米大統領から円安への懸念が示された」と発言したため、一時157円割れとなりました。
高市早苗首相も25日夜に記者団に、トランプ大統領から「円安によって米国の貿易が厳しいという話があった」と述べ、「一般論として円の過小評価は問題」と伝えたとのことです。
そして、25日夜に片山財務相はベッセント米財務長官とオンライン協議を行い、「日米首脳会談でも議論があった円の過小評価は問題であるという点を確認した」と語りました。その後ベッセント財務長官は、片山財務相とオンライン協議したと投稿し、「堅調な日本経済のファンダメンタルズを反映した強い円が望ましい」という見解を伝えたとのことです。
これら一連の発言によって、ドル円は159円台から約2円の円高となりましたが、堅調な米経済指標を受けて10月の米利上げ期待が高まり、米長期金利が一段と上昇したことや中東情勢の不透明感から原油価格が上昇しているため、週明け28日には157円台後半まで円安に戻しました。
しかし、三村淳財務官がロイター通信とのインタビューで「高市首相、片山財務相、米国からのメッセージは非常にクリア」と述べ、「足元の為替に満足も安心もしていないとした9月の発言、基本的には変わっていない」「今後とも為替の話は財務相や私のレベルでやっていくことに変わりない」と発言したため、介入警戒感が強まり156円台半ばへの円高となりました。
その後米金利の上昇や原油価格の上昇を受けて再び157円台の円安に戻していますが、上値は重たく推移しています。
日米首脳会談で為替について議論があり、日米首脳とも円安を問題視し、米国側からの後押しもありそのことを日本側から公表したことや、その議論を日米財務相が確認し、さらにベッセント財務長官の「強い円が望ましい」とのダメ押し的な発言。
そして三村財務官が一連の動きについて「非常にクリア」と述べ、ドル円が157円台の状況で「足元の為替に満足も安心もしていない」と述べたことは、今後の相場に重くのしかかる材料だと思われます。
市場は「高市首相は円安容認」と見ていたのですが、その高市首相が「円の過小評価は問題」と述べたことで方針転換した、と市場は捉えます。しかし、円安を容認しない方針は円安抑止圧力にはなりますが、円高を後押しする利上げを容認したことではないため、円高をどんどん進める材料としては力不足だと思われます。
やはり、現状の円を取り巻く環境では、日米の金融姿勢の強弱が大きな要因となりそうです。
日米の金融政策に「強弱」の違い。今週の重要指標で利上げ姿勢は変わる?
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では全会一致で米国の利上げが決定され、その後も米連邦準備制度理事会(FRB)高官から追加利上げのタカ派発言が相次いでいます。
これに対し、日本銀行は9月に利上げを決定しましたが、7対2の決定であり、2人は据え置きを主張しました。また、これまでの半年に1度の利上げから今回は3カ月後に利上げをしましたが、今後の利上げ時期やペースについて植田和男総裁は、「3カ月に1回とか特定のものを念頭に置いていることはない」として具体的に言及しませんでした。
それでも日銀の次の利上げは12月との期待が高まっています。一方、FRBの利上げは、9月の金利見通しでは年内1回の利上げ見通しとなっています。つまり、10月か12月の利上げということですが、直近の物価高止まりと原油上昇によって、市場の見方も10月利上げ確率が5割近くとなっています。
この日米の追加利上げ姿勢の強弱の違いが円安気味の相場につながっているようです。
日米首脳が円安を問題視し、米財務長官が「強い円が望ましい」とはっきり要請していることから、介入警戒感によって大きく円安に動くことはないと思われますが、円高に動くためには、FRBの利上げペースが遅くなるか、日銀の利上げペースが速まるかによると思われます。
今後発表される物価や雇用指標、イランとの和平協議の進展によって、FRBのタカ派姿勢も揺らぐ可能性があります。
FOMCで副議長も務めるNY連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は、今月2日には「インフレは緩やかな低下傾向にある。金利は適切な水準にある」とハト派的発言をしていましたが、9月のFOMCでは利上げに賛成し、24日には、金融市場が年内の追加利上げを予想していることに「妥当」との認識を示しました。
しかし、29日の講演では追加利上げは急ぐ必要はないとの見方を示しました。「インフレ率は明らかに高過ぎる」と指摘し、「さらなる情報を集める時間はある」として追加データを見極める姿勢を強調しました。
そして追加利上げについては年末にずれ込む可能性に言及しました。今後の指標やイラン情勢によって、10月利上げ期待が後退し、12月にずれ込む見方が増えれば、ドル高の勢いは弱まることが予想されます。
今週は30日(水)に米9月ADP雇用統計、FRBが注目する8月PCEコア・デフレーター(食品・エネルギー除く)、2日(金)に米9月雇用統計が発表されます。29日に発表された8月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は707.9万件と予想も前月比も下回りましたが、9月ADP雇用統計は前月3.8万人に対して予想は7.4万人とのことです。
9月雇用統計の非農業部門雇用者数は、前月は16.2万人と予想を大きく上回る増加でしたが、予想は10万人となっています。8月PCEコア・デフレーターは前月+3.3%(前年比)に対して予想は横ばいの3.3%となっています。
これらの指標が予想を上回るか下回るかによって相場は動き、利上げ姿勢にも影響を与える可能性があります。
物価や金融政策に影響を与える原油価格は、イランとの和平協議が進展すれば原油が下がる可能性があります。トランプ大統領も、イランとの紛争が終結すれば原油は急落するだろうと述べていますが、今のところイランの提案を拒否しています。返答するにしても効果が最大になることを狙い、米中間選挙ぎりぎりまで返答を引き伸ばすのかもしれません。
それにしても位置信号を切ってホルムズ海峡を通過する「闇タンカー」の急増によって原油供給は封鎖前の6割の水準まで回復しているとの報道には驚きました。
日本では10月2日(金)に9月東京都区部消費者物価指数(CPI)が発表されます。前月+1.8%に対して予想は2.4%となっています。予想を下回っても前月より上昇していれば、日銀の早期利上げ期待が高まる可能性もあり、注目です。
高市首相は「円の過小評価は問題」と方針転換しましたが、市場の財政拡大による財政悪化懸念は払拭されていません。規律ある財政政策を具体的に示さない限り、円安の見方は根強く残り続けることが予想されます。しかし、高市首相の円安容認方針転換発言に加えて重要な発言を大臣に語らせた点には留意する必要があります。
25日、城内実経済財政相は高市政権の経済財政運営について「リフレ政策ではない」との見方を示しました。「金融を緩和し、財政も機動的に取り組むアベノミクス的なリフレ政策の局面は終わっている」と財政懸念を打ち消すような発言がありました。
今後、高市首相本人からリフレ政策終了の発言が出てくるかどうかに注目です。