2026年は1月から6月までの半年間で10円も円安が進みました。この円安トレンドを追い風と捉え、下半期にキャリートレードを始めた個人投資家も多かったのではないでしょうか。
今回のレポートでは、7月1日から9月25日までの期間を対象に、以下の10種類のクロス円の通貨ペアについて、円キャリートレードの成績表を徹底分析したいと思います。
下半期は「キャリートレード大逆風相場」
改めて確認すると、円キャリートレードが好成績を上げるには、
- 円(調達通貨)が低金利で運用通貨が高金利
- 円安トレンドの継続
- FX相場が安定
という条件がそろっていることが理想です。
しかし今回の期間では、円買い為替介入による相場乱高下、日本銀行利上げによる円金利上昇、さらに米国からの円安懸念発言など、キャリートレードにとってはまさに最悪の条件が重なってしまったのです。
その結果、7月から9月の期間は、キャリートレードにとってかなり厳しい相場環境となりました。高金利通貨を保有していても、円高進行による為替差損がスワップ収入を上回り、全てのクロス円で総合損益がマイナスとなりました。
キャリートレードは、毎日スワップポイントが積み上がっていく堅実さが大きな魅力ですが、相場のトレンドや金利政策が転換した途端、少しずつ稼いできた利益を一瞬で吹き飛ばす「コツコツドカン」の典型であり、今回はそれが起きてしまったのです。
全通貨ペアがマイナスという厳しい結果
まずは各通貨ペアを5万通貨で統一して比較してみます。結果は、全てのクロス円がマイナスとなりました。
【検証条件 1】
取引枚数:5万通貨
検証期間:2026年7月1日(始値)~9月25日(終値)[86日間]
高金利通貨が上位を独占
キャリートレードでは、金利差よりも為替変動の方が収益への影響が大きいことが明らかです。ただ注目すべき点は、比較的損失が少なかった上位3位を、高金利通貨の新興国通貨が独占したことです。
特にトルコリラは、圧倒的なスワップ収入で、為替による損失の約80%をスワップ収入が補填(ほてん)した形となっています。金利収入で損失が軽減するという点で、金利差の要素は重要です。
このランキングは、取引枚数を5枚(5万通貨)とした場合です。しかし、通貨ペアによってレートが異なるため、必要となる投資金額(証拠金)も大きく変わります。
レバレッジなしの場合、ドル円を5万通貨で運用するためには、証拠金が約813万円必要ですが、トルコリラの5万通貨は18万円にとどまります。新興国通貨の損失額が少ないのは、そもそも円の投資金額が小さいこともあります。
そこで次は、証拠金に対する損益率からキャリートレードの成績を分析します。
証拠金効率で比較すると順位は変わる
【検証条件 2】
運用資金(証拠金):200万円
レバレッジ:5倍
検証期間:2026年7月1日(始値)~9月25日(終値)[86日間]
取引枚数:取引可能額1,000万円相当、通貨ペアによって取引枚数は異なる
豪ドル円が首位となった理由
証拠金200万円、レバレッジ5倍で固定して、証拠金に対するリターン(ROI)を分析すると、豪ドル円がトップという結果になりました。(もっとも総合収益はマイナスなので、正確には豪ドル円の「損失が最も少なかった」ということになります。)
豪ドル円キャリートレードが健闘した理由のひとつに、豪ドルが高金利通貨であるだけでなく、オーストラリア準備銀行(RBA)が追加利上げの可能性を示唆していることです。
日銀の利上げでも円と豪ドルの金利差は縮まらない、もしかするとさらに拡大する可能性もあります。またエネルギー価格が高騰するなかで、豪ドルが資源通貨としての強みを持っていることも、ユーロドルなど他の通貨と比べて下落が限定的な理由です。
トルコリラ円が2位に入った理由
興味深いのは、トルコリラ円がROIでも総合2位につけたことです。トルコリラ円のスワップ収入が、豪ドル円に比べても10倍と、群を抜いて大きいことが理由です。改めてキャリートレードにおける金利差の重要性を認識する結果となりました。
高金利通貨でも為替リスクは避けられない
ただFXの損失では、トルコリラ円は約76万円の為替損失となり、今回比較した10通貨ペアの中で最大となりました。新興国通貨は急激なショック時に下落率が大きくなりやすいのです。
この結果を、スワップ収入が円高のダメージを大幅に軽減したと積極的にとらえるか、あるいは圧倒的なスワップ収入でも為替リスクはカバーできないと慎重に見るかは意見が分かれると思います。
まとめ
キャリートレードで収益を出すには、スワップポイントという「確実なインカムゲイン」の強みを最大限に生かし、実質レバレッジを低く抑えたり、通貨の分散投資をしたりなどの工夫でリスクを適切にコントロールすることです。
今回の検証期間では、全てのクロス円で総合損益はマイナスとなりました。しかし結果を詳しく見ると、高金利通貨ほどスワップ収入による損失軽減効果が大きく、特にトルコリラ円や南アフリカランド円は健闘しています。
一方で、為替変動リスクはスワップ収入を上回ることも確認されました。キャリートレードでは金利差だけでなく、為替トレンドとリスク管理を含めた総合的な運用が重要と言えるでしょう。