インデックス投資が成功したデフレ期

 株価の形成要因に金利が大きく影響を与えるということをご存じの方は少なくないと思います。

 株価の計算式として表されるうちの一つに以下のものがあります。

 株価=1株当たり利益(EPS)/(金利+株式リスクプレミアム)

 ここで金利とは通常無リスク資産(長期国債)の金利を意味します。株式リスクプレミアムとは、リスクのある株式に投資することにより投資家が求める追加的なリターンのことです。

 米国の長期国債(10年物国債)の利回りは、1981年10月には15.68%まで達していました。それが2020年8月には0.52%まで低下と、40年の間、長期間における低金利環境(ここではこれをデフレと呼びます)の局面が続いていました。

 この間、米国株は大きく上昇しましたが、この大きな原動力となったのが金利低下といわれています。

 金利が低下すれば、上記の数式の分母が小さくなりますから、株価は上昇圧力を受けることになります。

 もちろん個別銘柄ごとに業績が異なりますから、個別銘柄で見ればバラバラですが、S&P500種指数(S&P500)などの株価指数で見れば、実際この間大きな上昇となりました。

 まさに過去40年ほどの間は、デフレ期だったからこそインデックスファンドの長期保有が奏功したといえるでしょう。

インフレ期の株価はどうなるのか?

 米国の長期金利は2020年の0.5%をボトムに上昇を続け、足元では5%を超える水準になってきました。

 日本の10年物国債の利回りも、気づけばあっという間に3%にまで達しました。

 このように、金利の動きを見ても足元はデフレ期からインフレ期に移行していると実感できるわけですが、金利が上昇するインフレ期の株価は理論上どうなるのでしょうか?

 先ほどの計算式に当てはめれば、金利が上昇しますから分母が膨らみます。その結果、EPSと株式リスクプレミアムに変動がないとすれば、金利上昇によって株価には下落圧力がかかってしまうことが分かります。

 つまり、インフレ期すなわち金利上昇期には、株価は上がりにくいのです。

1970年代の米国株で起きていたことー「株式の死」

 高インフレに加え、オイルショックによる景気後退にも見舞われていた1970年代の米国株の動きからは、今後私たちがインフレ期に株式投資をする際に注意すべき点を学ぶことができます。

 1970年代は米国株がほとんど上昇せず、「株式の死」と呼ばれました。例えばS&P500は1969年末のおよそ92ポイントから1979年末のおよそ107ポイントまで、10年間でわずか17%しか値上がりしませんでした。この間ダウ工業株30種平均(NYダウ)は5%ほどしか上昇していませんから、まだS&P500の方がましな動きだったといえます。

 ではこの10年の間、S&P500に連動する投資信託を買ってバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold:株式や債券などの金融商品を購入したら、価格の変動に左右されず長期間保有し続ける投資手法)していたらどうなったでしょうか?

 10年で17%ということは、1年当たりで計算すれば1.7%しか上昇していないことになります。さらに恐ろしいのは、株価というものはインフレの影響を加味しない「名目値」だという点なのです。

 1970年代は年平均6~8%という高いインフレ率でしたから、この間に年間当たり1.7%しか上昇しないものを保有しても、年々実質的価値は目減りしていくことがお分かりいただけるでしょうか。

 つまり、高インフレが続く1970年代にインデックスファンドをバイ・アンド・ホールドしても、実質的には資産が大きく目減りしてしまった、ということなのです。

インフレ期は投資信託のバイ・アンド・ホールド以外の選択肢が有効に

 ただ、1970年代の株式市場を振り返ると、バイ・アンド・ホールド以外の選択肢というものも見えてきます。

 例えばS&P500は1970年代の10年間、年平均で1.7%しか上昇していませんが、実はこの間に株価は大きく上下に変動していました。

 1973年1月~1974年10月にかけてはS&P500は50%近くの暴落となっていますが、もしこの間に株を持たなかったとしたら、大きな損失が避けられたはずです。

 仮に筆者が日々採用している「移動平均線ルール」(移動平均線を上回ったら買い、下回ったら損切りする)にのっとり、移動平均線割れで保有株を売却していたならば、この大きな下落の初期段階で逃げることができたのです。

 そして底打ち後に株価が反発して移動平均線を超えたら買うようにすれば、その後の上昇を手にすることもできました。

 また、資源・エネルギー関連の銘柄や、インフレ率を上回る成長を見せる銘柄など、個別銘柄では株価が大きく上昇したものもありますから、インデックスファンドではなく、個別銘柄をしっかりと選定することがより重要になってきます。

 このように、インフレに強い銘柄や、インフレ率を上回る成長率の銘柄といったものを選定し、単にバイ・アンド・ホールドするのではなく、株価のトレンドに従って売買していくことが、今後本格化するインフレ相場で成功するカギではないかと筆者は思っています。

▼【動画で学ぶ】足立武志さんの株投資テクニック満載!

[動画]「高成長・高配当なのに割安」は罠か・お宝か?放置されるワケを正しく見抜こう

[動画]IPO、当選したらどうすればいい?はずれた場合も利益は狙える?

[動画]ストップ高銘柄、新たに買っても大丈夫?