毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:コヒレント(COHR、NYSE)、ルメンタム・ホールディングス(LITE、NASDAQ)
1.AIデータセンターの増加と推論増加で「接続系半導体」が成長中。
今回はAIデータセンターの中の配線高速化に重要な役割を果たしている「接続系半導体」を取り上げます。
AIデータセンターの重要な方向性に、単位面積当たりの計算能力増強があります。特に米国でデータセンターを建設する際に反対運動や規制が厳しくなっていること、電力不足の問題などから既存のAIデータセンターや建設中のデータセンターの運用効率化を図ろうという動きです。このため、AIサーバーや通信機器などの重要機器の内部配線高速化、AIデータセンター内とAIデータセンター間の配線高速化が注目されているのです。
また、データセンター内の配線が長大で複雑になっていることから、データ伝送の「遅延」の問題がシステム上無視できなくなっています。遅延が大きくなるとAI半導体の運転に空き時間が生じ、推論のためのデータを一時的に保存するためにDRAMとSSDが余分に必要になるのです。これも配線高速化が求められている理由です。
このため、銅配線→光ファイバー配線→NPO(CPOの一歩手前)→CPO(光電融合)という配線高速化が進行しているのです。
この配線高速化に使う半導体には様々な種類があるため、ここでは「接続系半導体」とします。
データセンターの計算能力向上には、3つの段階があります(図1)。この各段階で配線高速化が進み始めています。
スケールアップ:サーバー内のAI半導体、CPUの能力向上、メインメモリ、ストレージの増設、通信機器の性能向上などによってサーバーの能力を向上させることによって、データセンターの能力を向上させる。
スケールアウト:同じ性能のサーバーを複数台並列に並べて連携する。
スケールアクロス:複数拠点を連携して処理能力を拡張する。最大1,000km以上離れたデータセンター間でAIが連携して仕事ができるようにする。
この分野が注目されるようになったのは、エヌビディアの動きからです。エヌビディアは2025年後半に投入された「Blackwell Ultra」に対応したネットワークスイッチ「Spectrum-X」(ネットワークスイッチは複数のコンピュータ等をつなぎ中継、管理する通信機器)にCPOを搭載しています。2027年1月期3Qに投入する予定の次世代機「Rubin」では、最上位機種の「Vera Rubin NVL72」(72 基のRubin GPUと36基のVera CPUを搭載する)のGPU間通信に使う「NVIDIA NVLink 6」スイッチ(第6世代NVLink)にCPOが搭載されます。
さらに、2028年投入予定の「Feynman(ファインマン)」では、より広い範囲にCPOが使われると予想されます。
この動きに沿って、エヌビディアは複数の戦略的提携を結びました。2026年3月2日、エヌビディアは光関連、レーザー関連電子部品の大手であるコヒレント、ルメンタム・ホールディングスとの戦略的提携を発表しました。中身は、エヌビディアによる各々数十億ドル規模の購入契約、将来の先進レーザーおよび光ネットワーク製品へのアクセス権と生産能力の確保が含まれています。各々非独占的契約になります。さらにエヌビディアは、コヒレント、ルメンタムに各々20億ドルを出資し、コヒレント、ルメンタムの米国における生産能力拡大、研究開発、事業運営を支援します。
また、2026年3月31日、エヌビディアはマーベル・テクノロジーとの20億ドルの出資を含む提携を発表しました。シリコンフォトニクス(シリコンウェハの上に光送受信機能を持った光回路を構築するのがシリコンフォトニクス。そのチップをGPUなどのプロセッサに直接接続して高速化したものがCPO(光電融合)である)で協業するほか、マーベルのカスタムAI半導体がエヌビディアのネットワークの中で共存できるようになります。
エヌビディアのマーベル、コヒレント、ルメンタムに対する提携と出資は、CPOの適用範囲が今後急拡大することを見越して、この分野の先端技術と生産能力を確保する狙いと思われます。
図1 AIデータセンターの計算能力拡張の各段階
2.「接続系半導体」には様々な種類がある。
接続系半導体には様々な種類があります。以下は主要製品と主要メーカーです。
光トランシーバー:ネットワーク機器の電気信号と光信号を相互に変換する小型の送受信デバイス。手軽に配線高速化ができるため需要が急増している。コヒレント、ルメンタム・ホールディングス、アプライド・オプトエレクトロニクスなど。
OCS:Optical Circuit Switch(光回路スイッチ)。光信号を電気信号に変換することなく、光の経路の切り替えや分岐を直接行うデバイス。これも手軽に配線高速化ができるため需要が急増している。コヒレント、ルメンタム、アプライド・オプトエレクトロニクスなど。
光DSP:光トランシーバーや光ネットワークの中で、光信号の歪みやノイズをデジタル技術で補正する半導体。ブロードコム、マーベル・テクノロジー、クレド・テクノロジーなど。
NPO:Near-Packaged Optics。AI半導体のすぐ隣のボード上に光学エンジンを配置する。CPOの一歩手前。ブロードコム、マーベル、コヒレント、ルメンタム、アプライド・オプトエレクトロニクス、クレド・テクノロジーなど。
CPO:Co-Packaged Optics。シリコンフォトニクス(光送受信機能)を、これまでのように外付けの光トランシーバーではなく、GPUやネットワークスイッチのASICと同じ基板上に統合し、これまでよりも高速伝送を実現する。ブロードコム、マーベル、コヒレント、ルメンタム、クレド・テクノロジー、NTTなど。
EML:Electro-Absorption Modulated Laser(電界吸収型変調器付きレーザー)。半導体レーザー(光源)と光変調器を1つのチップに一体化した光デバイス。ルメンタム、コヒレント、ブロードコム、アプライド・オプトエレクトロニクス、三菱電機、住友電気工業など。
CWレーザー:Continuous Wave Laser(連続波レーザー)。レーザー光を途切れることなく連続的に照射し続けるレーザー。コヒレント、ルメンタムなど。
ポンプレーザー:励起レーザー。光ファイバーや結晶などの増幅媒体にエネルギーを送り込み、レーザー光を発生・増幅させるための光源。コヒレント、ルメンタムなど。
リタイマー:伝搬損失などで劣化した高速デジタル信号を、内蔵するクロック信号を用いて完全に再生成・再送信し、信号品質を整える半導体チップ。アステラ・ラブス、ブロードコム、マーベルなど。
AEC:Active Electrical Cable。銅線ケーブルの両端(コネクタ部)に「リタイマーIC」という半導体を内蔵し、電気信号のノイズやジッターを自動補正して増幅する。クレド・テクノロジーなど。
AIデータセンター内での各種半導体を示したものが図2です。AI半導体、CPU、DRAM、NANDに比べて接続系は会社の数が多いことがわかります。得意分野も異なります。中小型株もあるため、投資のしにくさはあると思われますが、高成長が期待できるため、中長期で投資妙味がある分野だと思われます。
今回は、コヒレント、ルメンタム・ホールディングスを取り上げます。この分野の重要企業であるマーベル・テクノロジーは2026年9月7日付けで楽天証券投資WEEKLYを出しております。業績予想と今後6~12カ月間の目標株価330ドルという意見は変えておりません。
図2 AIデータセンター用半導体の階層構造