札証、ラピダス進出で高まるGX投資を呼び込む
北海道で、グリーントランスフォーメーション(GX)を軸に、新たな産業集積が生まれている。
転機は2023年、最先端半導体の量産を目指すラピダスが北海道千歳市に工場建設を発表したことだ。北海道半導体人材育成等推進協議会によると、ラピダスが工場建設を発表した2023年2月以降、半導体関連企業62社が道内に進出した(2026年7月現在)。
半導体産業に加え、冷涼な気候を生かしたデータセンターの集積も進む。こうした大規模な電力需要を背景に、太陽光や風力など再生可能エネルギーの活用が広がっている。
GXマネーも動き出した。北海道と札幌は「GX/AI金融・資産運用特区」に指定され、GX推進に向けて資金や人材、情報を呼び込む構想が進む。長年公共投資に依存する経済構造が続いていた北海道にとって、民間投資を呼び込み新たな産業を育てることは大きな課題とされていた。
札幌証券取引所は、こうした産業構造の転換を資本市場から後押ししようとしている。今年6月には、スタートアップのプロ投資家向け市場「札幌プロフロンティアマーケット」を開設した。再生可能エネルギーなど指定の事業を展開する企業には、収益や投資額などの条件を満たせば、上場費用を優遇する。地域課題の解決に取り組む企業を育てるとともに、GX関連産業の推進にもつなたい考え。
長野実理事長は、「GXは中長期で取り組むべき課題で、札証とも親和性が高い。新たな産業集積を支えていきたい」と力を込める。
福証、「IPO挑戦隊」でスタートアップ育成
一方、福岡証券取引所が注力するのは、スタートアップ企業の上場支援だ。
福証が事務局を務めるプロジェクト「九州IPO挑戦隊」は、新規株式公開(IPO)を目指す企業に対し、事業計画書の作成や財務管理、組織力の向上などをサポートする。2009年の発足から現在までに92社が参加し、うち11社が新規上場を果たした(福証以外の市場を含む)。
担当者は、「上場への意欲はあるが、何から始めれば良いか分からない、という企業をサポートしたい」と狙いを語る。予備知識のない企業も参加できるよう敷居を下げ、証券会社やコンサルタントなどが取りこぼしている需要に応える。
プロジェクトをサポートする「応援団」には、地元の金融団体や産業振興財団などが名を連ね、九州一丸となってIPO機運を盛り上げている。
福証は2024年、スタートアップのプロ投資家向け市場「福岡プロマーケット」を開設している。同市場は一般市場のように株主数や時価総額などの数値基準を設けていない。企業にとっては上場のハードルが低く、プロジェクトとの相乗効果にも期待を寄せる。
名証、個人投資家との接点を強みに
取引所には、上場後の企業と投資家をつなぐ役割もある。
名古屋証券取引所が今年12月に名古屋市内で開催する「名証IRエキスポ」は、その象徴ともいえるイベントだ。上場企業など約150社が出展し、来場する個人投資家に事業内容や業績などをアピールする。
イベント関係者は、「名古屋の投資家の熱気は他と異なる」と口をそろえる。企業ブースでは、来場者から「赤字事業のテコ入れ策は」「競合との違いが分からない」と踏み込んだ意見が飛び交うのが恒例だ。
過去には、新規上場したばかりの企業が出展。社長がブースに立ち成長戦略を語ると、その場で株を購入する人が相次いだという。
こうした企業と個人投資家との距離の近さは、名証の市場構造にも表れている。名証の取引高に占める個人投資家比率は8割以上。一方、東京証券取引所は機関投資家による取引が中心のため、3割にとどまる(2023年実績)。
新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の開始で個人投資家のすそ野が広がったほか、持ち合い株解消の流れで、企業にも個人投資家を獲得したいという動きがある。「個人投資家を重視する」という名証の強みが、こうした企業側のニーズとも重なっている。
選ばれる理由をどうつくるか
GX推進、スタートアップの上場支援、個人投資家との対話。3市場はそれぞれの視点で地域に求められる役割を模索している。
企業や資本市場を取り巻く環境が変わる中、地方取引所はその変化を見据え、ニーズに応えることが求められている。