300万円→800万円→250万円…暗号資産の醍醐味を味わった会社員
都内の企業に勤務する45歳のタカシさん(仮名)は、10年以上株式投資を続けていました。
タカシさんは会社員として働いているため、保有する株式は基本的にほったらかし。その結果、上昇相場の波に乗って保有銘柄の株価は大きく上昇していました。
こうした中、タカシさんは「いまはどの銘柄も高すぎて株には投資できないな……試しに株以外も少し持ってみるか」と考えたそうです。
早速SNSを使いさまざまな金融資産の情報を集めはじめたタカシさん。そして数カ月後の春、満を持して暗号資産Aを300万円分購入しました。
その後Aは値上がりし、12月には約800万円まで上昇。そこでタカシさんは「ここらが天井だろう」と考え、800万円分のAを、その当時「これから上がりそう」と一部で騒がれていた暗号資産Bに交換しました。
しかし翌年1月、暗号資産Bが急落。怖くなったタカシさんは、約250万円で売却し、日本円に戻したそうです。
最初に投資したのは300万円。ピークは800万円まで増えたものの、最終的に戻ってきたのは250万円でした。
「結局50万円の損か……チクショウ、欲をかきすぎたな」
落ち込むタカシさんを、さらなる悲劇が襲います。
タカシさんがハマった「コイン交換」の落とし穴
実は税務上、今回のタカシさんの取引は「単なる50万円の損失」ではありません。
国税庁は、保有する暗号資産Aを別の暗号資産Bと交換した場合、AでBを購入したものとして、Aの譲渡に伴う所得を計算する必要があるとしています。
今回でいえば、「300万円で購入した暗号資産A」を「800万円になったところで暗号資産Bに交換」した時点で、「Aについて約500万円の利益が実現したもの」として扱われます。
さらに問題は、その交換が12月だったことです。翌年1月にBを250万円で売却したため、Bについては550万円の損失が生じています。
しかし、現行制度では暗号資産取引による利益は原則として雑所得となり、損失を給与所得など他の所得と通算することはできません。さらに、暗号資産の損失を翌年以降へ自由に繰り越したり、翌年の損失を前年へ戻して相殺したりする制度もありません。
個人の確定申告は、1月から12月の1年で計算されるため、「前年:A→B交換で500万円の利益」「翌年:B売却で550万円の損失」と年が分かれます。
最終的には50万円損しているにもかかわらず、前年の500万円については課税対象となり得るのです(※)。
(※)同一年内に確定した暗号資産取引の利益と損失は、原則としてその年分の雑所得の金額の計算上、通算して計算します。ただし、給与所得など他の所得との損益通算や、翌年以後への損失繰越は原則としてできません。
株式投資に慣れている人ほど要注意
この違いについては、株式投資に慣れている人ほど注意する必要があるでしょう。
現在、個人の暗号資産取引による利益は原則として雑所得として総合課税の対象です。給与など他の所得と合算されるため、所得が大きい人ほど税率も高くなる可能性があります。
また、暗号資産から別の暗号資産に交換しただけでも課税関係が生じます。「日本円を受け取っていないのに税金が発生する」という点は、実際の資金繰りでも大きな問題でしょう。
最悪の場合、年末に大きな利益を確定させ、その後相場が急落すると、納税資金だけが残らないという事態も起こり得るのです。