PRO Market開設、東証改革が追い風

福岡証券取引所・犬塚雅彦理事長

福岡証券取引所・犬塚雅彦理事長
写真:呉太淳

トウシル編集部(以下、トウシル):福岡証券取引所(福証)で近年、上場企業数が増加傾向にあります。その背景をどう捉えていますか?

福証・犬塚雅彦理事長(以下、犬塚氏):大きく分けて二つの理由があります。一つ目は、2024年12月に開設した「Fukuoka PRO Market」への上場が順調に推移していることです。開設初日に7社が上場したことからも分かる通り、需要は非常に旺盛でした。2025年には6社が上場し、2026年もすでに6社が加わりました。

 二つ目は、東証の市場改革による上場維持基準の厳格化です。これに伴い、企業側がリスク軽減の観点から「重複上場」を選択するケースが増えています。この数年で福証を含めた地方証券取引所の立ち位置が見直され、東証との住み分けが進んでいると感じています。

福証の新規上場数

福証の新規上場数
出所:福岡証券取引所
注:年ベース。2026年は9月15日時点で上場済みの12社と承認済み3社の合計

トウシル:Fukuoka PRO Marketへの上場が特に増えていますね。

犬塚氏:「一般市場への上場を目指す成長企業の受け皿」として機能しているからです。

 日頃から多くの未上場企業の経営者と面談する中で、「上場意欲はあるが、一般市場の基準にはあと一歩及ばない」という有望な企業が非常に多いことに気付きました。そうした企業が上場を諦めるのではなく、成長のステップの第一歩として活用できる場が必要だと考え、開設に至りました。

 PRO Marketへの上場であっても、「上場企業」として企業のブランド価値を高めることができますし、社内の士気が上がったり、採用面でのメリットがあったり、金融機関の融資条件が良くなったりといったメリットがあります。

 東証の維持基準が厳格化していることもあり、「まずはFukuoka PRO Marketで上場企業としての信用力を得て、組織体制を整えながら一般市場を目指す」というステップが、スタートアップ企業にとって非常に合理的かつ魅力的な選択肢となっているようです。

福証の上場会社数

福証の上場会社数
出所:福岡証券取引所「上場有価証券の状況」
注:年ベース。2026年は8月末時点

福証上場のメリットは?

トウシル:東証での上場が難しくなった場合の「保険」としてのニーズが高まっていますが、それ以外の部分で福証に上場する利点にはどういったものがありますか?

犬塚氏:企業側からは、九州地区での知名度向上による個人投資家層の拡大や、採用活動の強化、売上拡大といったメリットを挙げていただくことが多いです。特にアジア進出を目指す企業にとっては、「アジアのゲートウェイ」としての福岡に拠点を置くことを戦略的に重要視されています。

 PRO Marketは、将来的に一般市場(Q-Board市場や本則市場)を目指す若い成長企業の登竜門としてうまく機能してければと考えています。

トウシル:東証が国内の取引所として圧倒的なシェアを持つ中、福証はどのような企業や投資家をターゲットにしているのでしょうか。

犬塚氏:東証が「グローバルな高い成長を目指す企業」を対象とするのに対し、私たちは「着実な成長を目指し、地域に根ざしながらステップアップを図る企業」を支援しています。東証は機関投資家が中心ですが、福証は個人投資家が中心です。地域の方々に地元の企業を応援してもらう「推し活投資」のような関係性を築けるのが私たちの狙いです。

 また、東証から福証に重複上場した企業が、仮に将来的に福証単独になったとしても、福証での上場をきっかけに成長に向けて再点火するきっかけを作れればと思っています。

11社を上場させた「IPO挑戦隊」

トウシル:上場支援プロジェクト「九州IPO挑戦隊」の実績と、独自の支援体制について教えてください。

犬塚氏:「九州IPO挑戦隊」には延べ92社が参加し、これまでに11社が上場を果たしました。Fukuoka PRO Marketがもっと早く開設されていれば、さらに多くの企業が上場していたと思います。

 上場に向けた支援は、単なる手続きのサポートにとどまりません。弁護士、社労士、会計士といった専門家を派遣し、経営者と共に実務的な「上場までの事業計画書」を練り上げるプロセスを重視しています。また、上場を進める管理部長を育てるスクールや、採用プールの紹介など、企業が抱える「人」の課題にも親身に対応しています。

 私たちは証券会員制法人であり、収益を追い求めるのではなく、「地域経済の発展に寄与する」というパブリックなミッションを掲げています。企業が本来あるべき姿で成長できるよう、中長期的な視点で伴走できることが強みです。

トウシル:上場数は今後も増えそうですか?

犬塚氏:2025年度は17社が上場しましたが、2026年度も同程度の水準を見込んでおり、その感触はあります。ただ、2027年度以降もこのペースが続くかどうかについては、もう少し見極めが必要です。PRO Marketへのニーズがあるのは間違いありませんが、現在のようなスピードで次々と上場してくるかというと、まだ見えづらい部分もあります。

「福証に相談すれば、何かヒントが見つかる」。そんなふうに頼ってもらえる取引所でありたいですし、これからも地域企業の皆さんと一緒に、少しずつ成長していければと思っています。